皇統の安定 現実策を…皇族減 典範改正が急務[読売新聞社提言]

 皇族数の減少が深刻だ。  皇位継承権を持つ皇族は3人となり、皇統の存続が不安視される状態が続いている。安定的な皇位継承の確保は先送りできない政治課題となっており、与野党は衆参両院議長の下で行われている協議で今国会中に結論を得なければならない。読売新聞社は4項目の対策を提言する。  30年前に26人だった皇室の方々は現在、天皇陛下(65)を含めて16人となっている。皇位継承権を持つのは、秋篠宮さま(59)と長男の悠仁さま(18)、上皇さまの弟の常陸宮さま(89)の3人しかいない。  悠仁さま以外の未婚の皇族は、天皇、皇后両陛下の長女愛子さま(23)や秋篠宮家の次女佳子さま(30)ら5人で、全員女性だ。  与野党の協議では主に、〈1〉女性皇族の身分を結婚後も保持する〈2〉旧宮家の男系男子を養子として皇室に迎える——の2案が議論され、夏の参院選前の取りまとめを目指している。  このうち、〈1〉については各党・各会派がおおむね賛同しているが、女性皇族の夫と子に皇族の身分を付与するかどうかで意見が対立し、議論は現段階で行き詰まっている。  特に自民党は、夫や子に皇族の身分を与えると、将来的に母方のみが天皇の血を引く女系天皇につながり、父方が天皇の血を引く男系で126代継承してきた皇室の伝統を覆しかねないと懸念している。夫や子への皇族身分の付与は、女性皇族が旧宮家の男系男子と結婚した場合に限るべきだとの立場だ。  ただ、皇統の存続を最優先に考えれば、女性皇族が当主となる「女性宮家」の創設を可能にし、夫や子にも皇族の身分を付与することで、皇族数の安定を図ることが妥当だろう。皇室のあり方を定めた法律である皇室典範は女性皇族が結婚した場合、皇族の身分を離れるとしているが、早急に改正する必要がある。  象徴天皇制は戦後、国民に定着し、太平洋戦争の戦地を訪れて慰霊したり、災害現場で被災者に寄り添ったりする皇室の活動は深く敬愛されている。皇室典範は、天皇の地位は「男系の男子である皇族」が継承すると定めているが、男系男子にこだわった結果、皇室を危うくさせてはならない。  日本の歴史上には8人の女性天皇が存在している。皇統を安定的に存続させるため、女性天皇に加え、将来的には女系天皇の可能性も排除することなく、現実的な方策を検討すべきではないか。憲法には、象徴天皇制と天皇の地位の世襲制が規定されているだけだ。  〈2〉の旧宮家の男系男子を皇室に迎える案については、これまで一般人として生活してきた人が皇族になることへの国民の理解が得られるかどうかなど、不安視する声も少なくない。慎重に検討する必要がある。 責任を持って結論を…社会部長・竹原興  皇位継承の安定維持を巡っては、皇太子妃だった皇后雅子さまのご懐妊のタイミングで議論が始まった。しかし、この20年間、政府・国会の検討は先送りされ、成案は得られていない。  皇位継承の資格は3人がお持ちだが、最も若い秋篠宮家の長男悠仁さま(18)も成人になられた。現行制度のままでは、悠仁さまに男児が生まれなければ、皇統が途絶えてしまうのは明らかだ。  また、結婚に伴って女性皇族が皇室を離れたり、逝去される方がいたりと、天皇陛下を支える皇室の方々も15人にまで減少した。  上皇さまはかつて、「女性皇族の存在は、その場の空気に優しさと温かさを与え、人々の善意や勇気に働きかけてくれる」と述べられた。女性皇族の離脱を食い止めなければ、国民の幸せを祈る祭祀(さいし)や海外訪問を通じた国際親善などを担う方もいなくなってしまう。  相次ぐ自然災害や感染症拡大などの危機において、天皇を中心とした皇室は常に国民を思い、国民に寄り添って社会の安寧を祈ってこられた。  こうしたお姿は国民に支持されている。読売新聞社が3〜4月に実施した全国世論調査で、将来、皇位継承が難しくなることに不安を「感じる」と回答した人が71%に上ったのも、皇室を将来にわたって維持してもらいたいという国民の願いの裏返しだ。  国会では、皇位継承のあり方に関する与野党の協議が進んでいる。国家と国民統合の象徴を巡る危機に際し、今こそ責任を持って結論を出さなければならない。

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