静岡の特産品「シラス」の不漁が続いています。 県内では、漁を中断する港も出ていますがシラス漁の現状は?漁船に密着しました。 ふっくらとした釜揚げシラスときらきらと透き通るように輝く生シラス。 (福井からの客) 「おいしいですね、なかなか生のシラスを食べられないので、とてもおいしいです」 ( 神奈川からの客) 「2024年も来て食べられなくて、2025年リベンジしたんですけど、2025年は食べられて幸せです。」 多くの人を魅了する静岡の特産品「シラス」 3月から漁が始まっていますがいま、県内のほとんどの港で全くとれない状況が続いています。 (漁師) 「まだ、始まって2か月弱だから、ここであきらめるわけにはいかないよね。」 なぜ、シラスがいなくなってしまったのか、漁に同行させてもらいました。 県内有数のしらす漁の拠点、富士市「田子の浦港」。 4月は2024年よりも1トン多い、10トンのシラスがとれ順調な走りだしだったといいますが…。 (船長) 「いまイワシがいるから、シラスは無理かもしれない。」 こう話すのは「日の出丸」の船長 芹澤豊さん。 漁師歴50年のベテランです。 (出漁の合図の音) 合図とともに走りだす18隻の漁船。 船を沼津方面に走らせ、水深が浅い場所を中心にシラスを探します。 田子の浦のシラス漁は、網を一艘の船で引く「一艘曳き」漁法。 漁を短時間で行い、とれたシラスは素早く氷でしめるため、鮮度は抜群です。 そのシラスを求めて、船長は魚群探知機をにらみながら、長年の経験を頼りに探します。 すると早速、魚群探知機に反応が! (記者) 「いまのは違った?」 (船長) 「あれはイワシ。」 魚群探知機に反応する魚は、ほとんどが「カタクチイワシ」というシラスよりも大きな魚。 地元の漁師は、このイワシの群れが原因でシラスが、逃げてしまっていると推測します。 (船長) 「イワシだと両方写っちゃう、シラスはこっちだけ(左)周波数が違う。」 船を走らせることおよそ30分。 漁場の一番端のエリアまで来ましたが…。 (記者) 「どうですか?」 (船長) 「イワシしかいない。」 「ここが田子の終わりのところだ もんで、最後まで来ちゃった。」 その後、少し深いところを探しても…。 (船長) 「全部イワシ。」 (無線) 「だめだなこれじゃあ」 「2日間とも休む?」 「いいよ」 「今度は、金曜日に出てみましょう。」 (記者) 「みんな厳しそうですね。」 (船長) 「2日間休み。」 シラスの姿がないことから2日間、漁を休むことが決まりました。 終盤、ようやくシラスの反応がありましたが…。 (船長) 「たぶんこれはシラス。」 「これだけやったって、、、。」 「商売にならないじゃん。」 (船員) 「この後いつ来るかね、来てくれればいいけれど。」 「取れないと、お金にならないもんね。」 「ダメだきょうは、帰ろう。」 結局、網を一度もおろすことはなく、13日の漁は1時間ほどで終了。 13日の水揚げはほかの船を合わせてもゼロ。 3月に賑わいを見せていた港にシラスの姿はなく、準備された計量器も使われることはありませんでした。 シラスを求めてきた仲買人は…。 (仲買人) 「期待はしたいけれど厳しいのが本音。」 「とれなければ売るものがないので商売にならないので…。」 こうした中、シラス丼を食べることができる田子の浦港の食堂では、冷凍していた貴重な生シラスを「ハーフ丼」として提供しています。 (田子の浦漁協 伊澤安弘さん) 「冷凍生シラスを使って、ハーフ丼を提供しているので、よろしければご来店ください。」 県内のシラスの水揚げ量は、2015年の8549トンをピークに減少が続き、2024年シーズンは2096トンと過去最低に。 県内の主要7港の水揚げは4月末現在で2024年の漁獲量からおよそ4割減少しています。 県水産・海洋技術研究所によりますと、不漁の原因は不明ということですが、黒潮の大蛇行などが要因の1つと考えられています。 ゴールデンウィークの恒例、焼津市の大井川港の朝市では、不漁のため、人気の生シラスの販売が中止となる事態に。 (記者) 「ことし生シラスがないんですけど?」 (来場者) 「すごい残念、食べたかった、、こどもが大好きなので。」 静岡市の用宗魚港では7日を最後に漁を見合わせ…。 12日には、シラスを確認するための調査船が出ましたが、漁の再開は見送りとなりました。 (清水漁協 用宗支所 増田新 支所長) 「自分も勤めて20年たちますけれど、ここまで悪いかったのは見たことがない」 「通年で、とれないということはないと思いますので、/それまでもう少しお待ちいただければ。」 用宗魚港では、19日にも再び調査を実施し、漁の再開を検討するということです。 不漁が続くシラスですが、今後、水揚げ量が増えるかもしれないという朗報もー。 県水産・海洋技術研究所によりますと、4月と5月の調査でシラスとなる、カタクチイワシの卵が駿河湾や伊豆半島沖で確認されました この卵は、30日程度でシラスの大きさとなることから、今後、海の状況次第で水揚量の増加に繋がる可能性があると考えられています。 さらに、気象庁によりますと8年前から続いていた黒潮大蛇行が、8日にみられなくなり、大蛇行が終息する兆しがあると発表しました。 シラス漁は、2026年1月まで行われますが、新鮮な県内産のシラスを気軽に楽しむことはできるのでしょうか。