10・11日に小山町の富士スピードウェイである注目のカーレースが開催されました。 「KYOJOカップ」実はこのカーレース、なんと、ドライバーはすべて女性。F1のように、タイヤとドライバーがむき出しの、「フォーミュラカー」と呼ばれるマシンで競う、国内最高峰の女性限定カーレースなのです。このレースに、県内からも御殿場市の細川由衣花さんが参戦しました。「フォーミュラカー」に乗るのは今回が初めての由衣花さん、3人の子育て真っ最中のママさんドライバーなのです。 子育てを行いながら初めて乗る戦闘機のような車で結果を出すことはできたのでしょうか。国内最高峰のカーレースに挑む、御殿場在住のママさんドライバー細川由衣花さんに密着しました。 レースを目前に控えた日、細川さんの自宅を訪ねると、由衣花さんと長男の瑛斗くん、次女の瑛心ちゃんが出迎えてくれました。夕飯の前だったため、瑛斗くんはご飯を炊くお手伝い。 (由衣花さん) 「炊き方を教えておけば、ちょっと遅くなっても炊いておいてくれるので…」 しばらくすると、夫の慎弥さんと長女の瑛愛ちゃんも帰宅。慎弥さんが、子どもたちの宿題を見ている間、由衣花さんは夕飯の準備を行います。その足首に目をやると、なにやら巻きつけられたものが!実はこれ、片足で2キロもあるウエイトなのです。 (由衣花さん) 「KYOJOフォーミュラに乗ることになってから、さすがにちょっとヤバいと…そこから本気で筋トレしなきゃって感じ」 「そこに重りがあるんですけど、これ2.5キロ。これをバランスボールに乗りながら…」 フォーミュラカーは、ジェットコースター並みの重力加速度がかかり、ハンドル操作にもかなりのパワーが必要で、体幹など全身の筋力を鍛える必要があるのです。それを細川さんは、家事をこなしながら行っているのです。 (由衣花さん) 「家事を犠牲にしてまでやろうとは思ってない、両立を理解してくれる家族がいるからこそ、できる仕事だとは思ってる」 この日、細川夫妻の姿は、小山町にあるレーシングカート場にありました。実は、夫の慎弥さんもかつては、プロのレーシングドライバーとして活躍。今は、小学生を対象としたレーシングカートのチームを運営していて、長男の瑛斗くんもこのチームに所属して腕を磨いています。レースの世界を知り尽くした夫の存在が由衣花さんのレース活動の大きな支えです。 (夫・慎弥さん) 「正直えらいものに手を出したなと思っている、恥じない成績を出さなきゃという、プレッシャーは本人も感じているので、その辺も手綱を持つ感じでやっている」 家族に支えられながら、未知のレースに挑む思いは…。 (由衣花さん) 「モータースポーツが、男性だけの世界じゃないのが、一番見せられると思っている子どもも、見たら楽しいんだと伝えられればいいと私は思っていて、それがモータースポーツを知るきっかけになってくれればいいと思う」 そして迎えたレース当日。会場の富士スピードウェイには、リラックスした様子の由衣花さんの姿がありました。 (由衣花さん) 「10日、ちょっと他車にぶつけられちゃって、1コーナーでクラッシュして止まっちゃったんですよ」 実は前日に行われたレースでアクシデントが発生していたのです。 2日間に渡って行われるこの大会は、初日に行われるレースの順位で、2日目に行われる決勝レースのスタート順が決まります。由衣花さんは、このアクシデントで完走できず、決勝レースは後方からのスタートになってしまったのです。 (由衣花さん) 「メカさんが、10時過ぎまで修理してくれて、ばっちり直ってると思うので、最後尾からだけど追い上げ頑張ります」 由衣花さんは、2025年1月にできたばかりの新チーム、「富士山静岡レーシング」の仲間たちと今回のレースを戦います。会場には、子どもたちの姿も! (長男・瑛斗くん) 「頑張ってほしい、気持ち入れて…」 (長女・瑛愛ちゃん) 「順位は真ん中には、いてほしい」 緊迫の決勝レースを前にしても、由衣花さんはファンの求めに気軽に応じます。 (お客さん) 「静岡代表ですからね、見せ場作らないと…」 (由衣花さん) 「追い上げます!」「静岡がんばれーみたいな感じ、うれしいですよね」 レース開始まであとわずか。緊張感が高まるなか、由衣花さんの表情が、ママからレーシングドライバーに変わります。 そしてコースイン。12周で行われる、決勝レースのスタートです。 17番手でスタートした由衣花さん。実力のあるドライバーに臆することなく、序盤から落ち着いた走りで着実に周回を重ねます。そしてレース半ばには16番手に浮上。最後は、前を走るマシンの直後に迫る力強い走りを見せて、16位でレースを終えました。 ピットに戻ってきた由衣花さんは、疲労困ぱいの様子。レースの厳しさを物語っています。 (由衣花さん) 「だいぶきつい5キロくらい痩せた気が…」 レースを見守った夫の慎弥さんは… (夫・慎弥さん) 「やっぱり思っていた通り、レベルが高いレースだと改めて感じたし、もう少し上位でからめれば、なおすごい所を見せられる、そこをサポートしたいと思う」 一方で、長男の瑛斗くんは… (長男・瑛斗くん) 「スタートが、全然へたくそすぎてダメダメ、だからスタートで離されて全然ダメになった」 (ディレクター) 「ママに言えるの?」 (長男・瑛斗くん) 「怒られるから言ってない」 (由衣花さん) 「疲れたんですけど、最後までプッシュできたから良かったなと思っていて、私的にまだまだ成長過程があるので、それを楽しみに見てほしいし、もっと前で走れる技術を磨いて、皆さんと一緒に成長していけたらと思いました」 年間を通して5戦が行われるKYOJOカップ。由衣花さんが挑戦する姿は、子どもたちや同じ子育て中のママたちの希望となりそうです。