韓国の次期大統領候補 差し戻し審の裁判日程を6月18日に延期

次期大統領候補、後から法律を変えて無罪 いま韓国の政治は、最悪の展開を迎えている。野党ながら最大勢力を誇る「共に民主党」による独裁体制が、どんどんと強化されているのだ。 日本の最高裁判所に相当する大法院は、イ・ジェミョンが前回の大統領候補として出馬した時に、公職選挙法に違反して嘘を語っていたことを認定した。この事件で無罪判決を下した高裁に、その認定に誤りがあるから判決をやり直せという差し戻しを行ったのだ。 この動きに共に民主党は、「だったら、選挙運動に際して嘘を言ったとしても、有罪にならないように公職選挙法を変えたらいいんじゃないの?」ってことで、公職選挙法の「改正」案を準備して、国会での絶対多数を利用して強行する動きに出ている。すでに委員会の採決は通過させた。 「今から法律変えても、過去の有罪はなくならないんじゃないの?」と思うかもしれない。確かに違法ではないとされていた行動が、行われた後に法律が変わって、後から違法だと変えて有罪にするというのであれば、とんでもないことだ。 だが、今回のケースはこの逆のパターンになる。人権を重視する立場からすれば、後から法が変わって刑が軽くなるとか無罪になる場合には、過去に遡ってそのルールを適応するのは問題ないという考えだ。こういう理屈でもって、イ・ジェミョンの罪を最初からなくそうというとんでもない話が平然と出ているのだ。 気に入らない司法関係者へのパージ宣言 「共に民主党」は、イ・ジェミョンの無罪判決を破棄した判決を導いたチョ・ヒデ大法院長(最高裁長官)の行動を「司法クーデター」だとして問題視する動きにも出ている。「共に民主党」のキム・ビョンギ議員は「今に見ていろ。あと1カ月待っていろ」と、大法院長を恫喝する投稿をFacebookで行った。1ヶ月後にはイ・ジェミョンが大統領に選出されているだろうから、その時には覚悟しろよということだ。 「共に民主党」は、通常の検察組織から独立した権限を持つ特別検察官を国会で選任してチョ・ヒデ大法院長を追及し、さらに弾劾にまで持ち込もうという動きにも出ている。「共に民主党」は自分たちの気に入らない判決を出す裁判官自体を許さない独裁的な動きに出ているのだ。 なお、シム・ウジョン検察総長に対しても「共に民主党」は弾劾案を国会に提出した。「共に民主党」に対して気に入らない動きを見せると、「共に民主党」はすぐさま弾劾に動く姿勢を見せる。チェ・サンモク副首相に対しても弾劾案を準備する動きになったため、チェ副首相は自ら辞任することで弾劾を免れる道を選んだ。 さらに「共に民主党」は、高裁での差し戻し審の裁判日程を大統領選挙後に延期することを求め、これを受け入れないのならチョ・ヒデ大法院長だけでなく、高裁の差し戻し審の担当判事らも弾劾することもありうると脅してきた。この結果、もともとは5月15日に予定されていた差し戻し審初公判が、6月3日の大統領選挙後の6月18日に即座に延期された。「共に民主党」の脅しに裁判官たちが屈したと見るべきだろう。 刑事訴訟法も改正する意味 「共に民主党」は刑事訴訟法の「改正」にも乗り出した。現行の刑事訴訟法では、軍事上の機密を要する場所での家宅捜索や強制押収は、責任者の承認が必要になると定めている。この規定が、今回のユン大統領の大統領官邸での家宅捜索や強制押収の邪魔になったことから、刑事訴訟法の改正をすべきだという動きに出ているのだ。 内乱罪や外患罪など重大犯罪の捜査の場合には、国会で6割の議席の賛成があれば、家宅捜索や強制押収には責任者の承認を不要とするとの刑事訴訟法改正案が提出された。国会での圧倒的な多数を占めている「共に民主党」の側の意向で、軍や国家情報院などの組織にも、いつでも家宅捜索や強制押収ができるという権限をちらつかせることで、こうした組織が「共に民主党」に逆らえなくなっていくことを狙ったものだろう。 大統領に当選した場合、進行中の刑事裁判を停止させることができるとする「改正」も進めている。これまた、多くの疑惑を抱えているイ・ジェミョン無罪化への流れだ。 また、最高裁判所裁判官の定員を、現在の14名から100名に増やす法案も提出された。100名への増員はさすがに認められないとは思うが、30名への増員方針はもともと示されていたところなので、ここに着地させようとしているのではないか。そしてイ・ジェミョン体制で最高裁判所裁判官の大幅増員が行われれば、イ・ジェミョン派が最高裁判所でも圧倒的多数になるのは避けられない。 進歩党のイ・ジェミョン支持とは何とも さて、韓国の大統領選挙に、独自候補としてキム・ジェヨンを擁立しようとしていた進歩党が、同候補の出馬を取りやめて、最大野党の「共に民主党」から出馬しているイ・ジェミョン候補を支持する方針に転換した。祖国革新党・基本所得党・社会民主党なども独自候補者を立てない方針を示しており、これにより韓国の左派は、民主労働党以外はイ・ジェミョンに候補を一本化したことになる。 この進歩党の動きを「共に民主党」はそのまま素直に受け入れたことになるが、この動きは韓国民が舐められていると見るべきではないか。 というのは、2023年には昌原(チャンウォン)スパイ団事件、済州(チェジュ)スパイ団事件、民主労総(日本の「連合」に相当する韓国の労働組合の全国組織)のスパイ団事件などが相次いで摘発されたが、これらに進歩党の幹部や党員が多数関与していたことも発覚しているからだ。進歩党は事実上従北政党だ。 そもそも進歩党は北朝鮮系の統合進歩党の残党が作った政党だ。統合進歩党は、北朝鮮が韓国に攻め込んでくる事態が起こった場合には、これに呼応して国家の基幹施設攻撃を行うことを謀議していたことが発覚して解散に追い込まれた政党だ。 こんな勢力とも平然と手を結んでも特に問題にされないで済むような言論空間が韓国では広がっているのだが、そこまでメディアの側は左派勢力の手に落ちている。 保守陣営の醜悪 これに対抗する点で、保守系の側は一致団結しなければならないのに、与党「国民の力」は実に醜悪な動きを見せてしまった。「国民の力」の非常対策委員会(執行部)は、党内選挙で大統領候補として選出されたキム・ムンスの意思を無視して、勝手にその大統領候補資格を取り消す一方、無所属のハン・ドクス前首相の入党手続きを進めて、新たな大統領候補に据えるという強引な動きを見せた。 この強引な動きは党内民主主義を無視するものだとして「国民の力」の党員から大反発を食らった。結局執行部の公認候補変更方針は挫折し、「国民の力」の大統領選挙候補はキム・ムンスに決まり、ハン・ドクス前首相は候補から降ろされることになった。イ・ジェミョンの反民主主義路線に対抗しようとしているのに、党内民主主義を大切にしない動きに執行部が出て混乱を増幅させたのは、大統領選挙前に手痛い大失敗だと言えよう。 だが、ここには実は執行部の側を単純に責めるわけにはいかない事情も絡んでいる。 キム・ムンスは右派の人たちの支持は強いものの、選挙でキャスティングボードを握る無党派層や中間派の人気は正直言ってあまりない。逆にハン・ドクスはユン政権で首相を務めただけでなく、左派のノ・ムヒョン政権でも首相を務めた経験もあり、無党派層や中間派の支持も見込めるのだ。 ユン大統領が昨年12月に出した非常戒厳についてハン・ドクスは、「あれは正しくなかった」との主張をしているので、ユン大統領の非常戒厳を高く評価している右派の人たちがこれに感情的に反発する気持ちを持つのは理解できる。 だが、今の韓国の民主主義を守り抜くためには、イ・ジェミョンを勝たせないことこそがすべてに優先されるべき課題ではないのか。ハン・ドクスが非常戒厳に反対だったという主張をすることで、無党派層や中間派の支持を集めやすくなるという政治力学も、本来は考えるべきではないのか。 一本化を巡るゴタゴタ それはともかく、執行部はハン・ドクスとキム・ムンスのどちらのほうが大統領選挙で高い支持を得られるかについて調査を行い、ハン・ドクスの方がキム・ムンスよりも上回っていたために、ハン・ドクスを大統領候補にすることを優先させたと説明している。実際にはそんなことをやらずとも、ハン・ドクスの方が支持率が上回っているのは明らかだった。ハン・ドクスが出馬する姿勢を見せていなかった段階でも、すでにハン・ドクスに期待する声は高まっていた。 「国民の力」の支持者の中でもハン・ドクスに期待する声が、「国民の力」の大統領予備選挙を戦っていたどの候補よりも強かったのだ。 そもそもキム・ムンスも、ハン・ドクスが有力候補として立ってくることを理解しながら、イ・ジェミョンに対決する候補の一本化に動く姿勢を示していた。勝てる確率を高めるために一本化を支持するということは、ハン・ドクスへの一本化を認めることと、事実上は同じ意味だったのではないか。 だがキム・ムンスは、いざ自分が「国民の力」の大統領候補として選出されると、一本化交渉を事実上拒否する姿勢に転じ、ハン・ドクスが大統領候補になることを頑なに拒否する姿勢を示した。5月11日の出馬期限が迫る中で、これに焦った「国民の力」の執行部はキム・ムンスを排除する強引な動きに出たのだ。 執行部によるキム・ムンスに対する説得の仕方がうまくなく、その結果としてキム・ムンスの側に感情的なしこりが生じたのかもしれないが、仮にそうだとしても、そういうところは飲み込んで、自分が身を引く動きを上手に演出すべきでなかったのか。 今回の騒動のゴタゴタぶりに嫌気が差して、「国民の力」の元代表のイ・ジュンソク率いる改革新党の方に、一部の「国民の力」の党員が離れていったのも、実に残念だ。 「さらなる爆弾」を期待してしまう こうした中で期待したいのは、元「共に民主党」の党員で、党から除名されたペク・クァンヒョンの動きだ。ペク・クァンヒョンは「共に民主党」の党員だった時にイ・ジェミョンの犯罪に気が付き、勇敢にも告発する側に回った。 彼は記者会見の場で、イ・ジェミョン側の証拠隠滅の証拠を呈示した。そのうちの1つは、イ・ジェミョンの最側近のキム・ヒョンジとペ・ソヒョン前秘書官の通話の録音で、コンピューターに残っているファイルなどを全部消さないといけないことを話し合っているものだ。この録音は、イ・ジェミョンが京畿道(キョンギド)の知事だった時のものだ。 実際にイ・ジェミョン側の命令により、京畿道にあった全ての政務職公務員のハードディスクが破棄されていたことを、ペク・クァンヒョンは明かした。 ペク・クァンヒョンは2年前にこうした証拠を付けて検察に告発したが、その後2年間捜査が全然進んでいないと話している。 ペク・クァンヒョンはさらに、イ・ジェミョンが城南(ソンナム)市長だった時に行った不正に関する重大な証拠も示した。それは、城南市長時代に、イ・ジェミョンの直轄の立場で仕事をしていた政務職員のパソコンのハードディスクだ。イ・ジェミョンの最側近が、知人に預けたまま、引き取りに来なかったものだそうだ。イ・ジェミョンの最側近が知人にこのハードディスクを預けた時に、城南市庁舎にまもなく検察の捜索が入るから、預かってほしいと話していたことも暴露した。 ペク・クァンヒョンは、イ・ジェミョン側が検察の押収が行われることや、その日時の情報を事前に掴んでいたことを問題提起した。さらにペク・クァンヒョンは、今回で証拠提供が終わるわけではない、今後も別の証拠を呈示していくと語っていた。 大統領選挙期間中に爆弾となる証拠が出てくることを期待したい。 トランプとの関税交渉で一躍脚光、韓悳洙大統領代行は来たる韓国大統領選で保守派の希望の星となるか

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