【追憶のヴィクトリアマイル】07年コイウタ 22歳・松岡正海が大仕事 前川清は“芸能人馬主の壁”突破

 4月19日に中山でJRA通算900勝をマークした松岡正海騎手。その壇上でのあいさつは心に響いた。  「騎手は全員が競馬を盛り上げ、皆さんを楽しませようと全力を尽くしています。毎週やる気満々で競馬場に来ています。あなたの好きな競馬、馬、騎手。その一部になれたらと思いながら乗っています」  これぞ松岡、という言葉である。ケガに悩まされた騎手人生だが「全てがいい思い出です」。これにもグッときた。  そんな松岡が“世に出た”のが、このコイウタでのヴィクトリアマイルだった。  好位5番手を確保。直線では今の東京では珍しい、内を空けた競馬となったが、松岡はコイウタを勝負どころで内へと誘導。逃げるアサヒライジングをかわしてVをもぎ取った。12番人気馬の馬上で立ち上がり、右腕を高々と上げた。  「最高です」と頬を紅潮させた松岡。勝負の進路取りはアイデアの1つだった。「馬場のいいぎりぎりのところを走らせた」。午前中から芝の具合を何度も確認していた。当時22歳。周到な準備がG1初制覇をたぐり寄せた。  馬名からも察しがつくかもしれない。オーナーは歌手の前川清だ。所有馬の出るレースは基本、競馬場へと足を運ぶが、勝てない日が続いた。この時はゲンを担いで東京競馬場行きを見送り、北海道の牧場でテレビ観戦していた。  それが何と愛馬の快勝だ。「初めて目の前がクラクラしたよ」。前川は慌てて帰京し、午後8時から、西麻布のレストランで祝勝会をセッティングした。  覚えている人はいるだろうか。06年9月、前川はディナーショーのチケット代金を主催者に持ち逃げされ、このヴィクトリアマイルの直前に本人と事務所が約700万円を“自腹負担”し、代替公演を行ったばかりだった。そこに“現ナマ”の後押し。競馬の神様も粋なことをするものだ。  ちなみに前川はヴィクトリアマイルの馬券に9万円を投じたが、1円も取れなかった。このすがすがしさ(?)も競馬の神様が後押しした要因かもしれない。  当時の弊紙によれば、芸能人によるG1制覇は高峰三枝子のスウヰイスー(53年安田賞=現安田記念)以来、54年ぶりとのこと。確かに「芸能人の所有馬は大舞台では勝てない」という空気が当時の競馬場にはあった。  だが、このコイウタがブレークスルーとなった。15年には北島三郎(名義は大野商事)の持ち馬からキタサンブラックが登場。G1を何と7勝する歴史的名馬となった。

もっと
Recommendations

NHKマイルCをパンジャタワーで勝った橋口調教師が喜びを語る 「ここまでの馬になるとは正直、思いませんでした」

5月11日のNHKマイルCを制した、パンジャタワー(牡3歳、父…

【古馬・注目馬動向】ベガリスはパラダイスSでリステッド連勝めざす 先週の谷川岳Sを制覇

谷川岳Sを制したベガリス(牝5歳、栗東・高橋義忠厩舎、父モーリ…

【3歳・注目馬動向】橘S2着のドゥアムールは葵Sへ ビアンフェとのきょうだいV目指す

橘S2着のドゥアムール(牝3歳、栗東・中竹和也厩舎、父ロードカ…

毎日杯覇者ファンダム 北村宏とのコンビで日本ダービーへ 無敗3連勝中

新馬、ジュニアカップ、毎日杯と無敗3連勝中のファンダム(牡3=辻…

【オークス1週前】ブラウンラチェットが新コンビのレーン騎手と初コンタクト 「ポテンシャルを感じました」

◆第86回オークス・G1(5月25日、東京競馬場・芝2400メー…

キラーアビリティが競走馬登録抹消 今後はインドで父ディープインパクトの血を伝える

JRAは5月14日、2021年のホープフルSなどを勝ったキラー…

【戸田ボート マスターズリーグ第1戦】前節Vの仲口博崇が好リズムで参戦「乗りづらさはなかった」

ボートレース戸田のG3「マスターズリーグ第1戦」は、14日に前検日作…

豪QES6着ローシャムパーク 6・15宝塚記念へ 昨年5着に続く参戦 

4月12日にオーストラリアのクイーンエリザベスSで6着のローシャムパ…

【日本ダービー・2週前】クロワデュノールが巻き返しへ好気配 北村友一騎手「皐月賞の2週前より雰囲気はよかった」

◆第92回日本ダービー・G1(6月1日、東京競馬場・芝2400メ…

【追憶のヴィクトリアマイル】07年コイウタ 22歳・松岡正海が大仕事 前川清は“芸能人馬主の壁”突破

コイウタでのヴィクトリアマイルでG1初制覇をたぐり寄せた

loading...