6月22日に投開票が行われる東京都議会議員選挙に向け、各党がYouTubeなどの動画戦略に打って出ている。中でも注目されているのが、広島県安芸高田市の前市長・石丸伸二氏(42)が立ち上げた地域政党「再生の道」だ。石丸氏は昨年夏の都知事選に出馬し、165万票を勝ち取って2位につけた。 *** 【写真を見る】「どこかの県知事と同じ匂いが…」 亡くなった市議を踏みにじる“衝撃発言”をする「石丸伸二氏」 石丸氏自身は都議選に出馬しないが、公認候補選考の様子はYouTubeで生配信された。社会部記者は言う。 「都知事選は現職の小池百合子氏と立憲民主党の前参議院議員・蓮舫氏の一騎打ちになると思われましたが、そこに割って入ったのが広島県安芸高田市の前市長・石丸氏でした。東京に地盤がない中、テレビなど既存のメディアに対して厳しい批判を繰り返す一方、YouTubeやSNSのネット戦術で躍進しました。ですから、今回はどんな手を打つのか注目されていました。それがアイドルのオーディション番組さながらの公認候補の選考動画ですからビックリしました」 石丸伸二氏 公認候補の公募には1128人がエントリーしたという。4月25日には結果報告の記者会見が行われた。東京都には42の選挙区(定数は127議席)があるが、そのうちの36選挙区に45人の候補を立てた。さらに、7月の参院選には10人(比例9人、東京選挙区1人)を擁立したと発表し、こう自画自賛した。 石丸氏:動画の本数は全部で50本。42の選挙区……人の多いところは前後半に分けています。あとは合格発表、4週にわたって行っていますので4回。合わせて全50本の動画の総再生回数は585万回です。平均で取ってみると11万7000回。政治のコンテンツとしてアベレージ10万再生を超えた。これは快挙と言っていい結果だと感じています。他のネットメディアも出ていますが、政治を扱ってこれだけ回数が出る。まずなかったと思います。 ところが、動画の視聴者を地域別で見ると、東京都民は22%しかいないというのだ。 視聴者層の3割は65歳以上 石丸氏:東京都だけに絞ると2割しかない。10万の2割なので2万です。2万再生をざっくり42選挙区で割ると、1選挙区あたり500弱です。ならすと500しか見られていないんです。これが今の実情、ネットメディアの限界だとも感じます。 その上でこう述べた。 石丸氏:ゆえにマスメディアの皆さんに大変期待しております。この社会を動かせるのはマスメディアしかないと改めて感じた、感じざるを得なかったという結果です。 前出の記者は言う。 「今度はマスメディアに期待しているそうです。ちなみに、動画視聴者の年齢構成は45歳以上が55%を占め、そのうち3割は65歳以上だそうです。石丸氏もこれではマズいと少し焦りが出てきたのかもしれません」 この会見から1週間が経つと、5人の公認候補者が辞退することに。再生の道の候補者は40人に減ったのだ。都政関係者が見る目は冷ややかだ。 「40人でもまだ多すぎます。そもそも大田区や杉並区に3人ずつ候補者を立てたりすれば票を食い合うだけです。再生の道は党としての政策を設けていないので、候補者が政策を打ち出すことになる。ポッと出の候補者にそれができると思いますか?」 なぜ今回は石丸ブランドに勢いがないのだろう。 旬は過ぎた 「都知事選挙後、石丸氏はメディアに出続け、インタビュアーへの冷徹な切り返しが話題になりましたが、結局それが“上から目線の物言い”と批判されることにもなりました。同時に、昨年10月に行われた衆院選には出馬を匂わせながら立候補しなかった。また、今年4月27日に投開票が行われた滋賀県彦根市長選では石丸氏が現職の和田裕行氏の応援に駆けつけました。しかし、現職という強みに加え“石丸伸二”ブランドがついたにもかかわらず、和田氏は敗れてしまったのです。都知事選であれほど注目されたにもかかわらず、ちょっと間が空いた隙に彼の旬は過ぎてしまったのかもしれません。いまや都民ファーストの会や自民党も石丸氏をそこまでの脅威とは考えていないようです」 しかも、市長時代の石丸に「嘘の発言によって名誉を傷つけられた」として安芸高田市議が損害賠償を求めた裁判は、地裁・高裁ともに石丸の発言の真実性・真実相当性を否定し、安芸高田市に損害賠償の支払いを命じた。石丸氏は最高裁判所に上告受理の申し立てをしたが、4月23日にそれを退ける決定が下された。 さらに、デイリー新潮は5月4日に配信した記事で、市長時代の石丸氏に「恥を知れ」と罵倒され亡くなった市議の妻が今年1月に自ら命を絶っていたとを報じた(「死ぬ前日に“たすけて”とメッセージが」 石丸伸二氏に「恥を知れ!」と批判された市議の妻が自殺していた… 息子に言い残した「絶対投票しないで」)。前出記者は言う。 「裁判で負けたことについて質問されてもはぐらかすような答えをし、市議の奥さんが自殺したことについては回答もない。何やらどこかの県知事と同じ匂いを感じるんですよね」 デイリー新潮編集部