シーズン開幕前、ドジャースのキャンプ地に突如として巨大な建造物が現れた。大谷の能力を飛躍的に向上させた最新施設をレポートする。 トップクラスの環境整備 「まるでオールスターのようなチーム」「勝って当たり前」「優勝確率99％」……。 他チームのファンからSNSでそう妬まれるほど、今季のロサンゼルス・ドジャースの戦力は充実している。 昨季は大谷翔平（30歳）、ムーキー・ベッツ、フレディ・フリーマンという3人のMVPプレーヤーを揃えワールドシリーズを制覇したが、今季はそこに2度のサイ・ヤング賞投手ブレイク・スネルや佐々木朗希のほか、実績あるリリーフ陣も補強。攻守ともに隙のない、まさに「銀河系軍団」のような布陣となった。 だが、単に「良い選手」をかき集めるだけが、ドジャースの強さの秘密ではない。彼らに最高のパフォーマンスを発揮させる環境整備もまた、メジャー30球団のなかでトップクラスだ。 20年以上にわたりドジャースの番記者を務めるビル・プランケット氏が言う。 「ドジャースはメジャーのなかでもいち早く、データ活用に取り組んできたチームです。多くのアナリストを雇用するだけでなく、傘下の投資会社『エリシアン・パーク・ベンチャーズ』を通じ、データ分析やスポーツテクノロジーのベンチャー企業にも積極的に投資を行ってきました。 かつては戦力が整っていない時期もありましたが、それでも'13年から12シーズン連続でポストシーズンに進出している。早い段階から投資してきたデータ分析会社が、育成分野で貢献したことが大きな要因です」 そして、'24年のシーズン前には、ドジャースのデータ至上主義を象徴する施設も完成した。 「ロサンゼルス・ベースボール・アナリティクス・ビューロー」。チーム関係者の間で、「実験室（ザ・ラボ）」と呼ばれる施設だ。 ラボはアリゾナ州キャメルバック・ランチのドジャースのキャンプ地内にあり、1万2000平方フィート（約1100平米）の広さを誇る。茶色の外壁で囲われた3階建ての建物で、外から見ると無機質な印象を受けるが、内部にはありとあらゆる最新機器が備えられているという。 140億円の建設費用を投じた 前出のビル氏が明かす。 「'16年から構想が始まり、'23年4月に着工、昨年1月に完成しました。建設費用は1億ドル（約140億円）に及びます。 ラボのセキュリティは厳重で、チーム関係者以外は一切立ち入り禁止です。内部の写真すら出回っていない、まさに『秘密練習場』。当然、施設内で何が行われているかについても企業秘密になっていますが、フロント陣や選手への取材を通じてある程度のことはわかっています」 ビル氏によると、ラボの1階部分にあるバッティングケージに入った打者は、スイング軌道や打ち出し角度、打球速度などが瞬時に把握できるという。もちろん、施設内にはブルペンもあり、投手についてもスピン量など各種データが分析されている。 「ラボには、センサーで人体の動きを計測・分析する『モーショントラッキングシステム』も備えられている。これによって、バッティングフォームにおける体重配分や肘の使い方、投手のリリースポイントなど、選手のパフォーマンスを詳細に分析できます。 また、ドジャースはバイオメカニクス（生物力学）や工学、数学の博士号を持つスタッフも大量にラボに投入している。白衣を着て上階から練習を見つめる彼らは、選手から『骸骨』と呼ばれています。選手たちのデータがすぐさま骸骨の手元にあるパソコンに送られ、科学的に適切な身体の使い方ができているかが分析されるわけです」（ビル氏） 【つづきを読む】『チームの極秘施設にこもり、ｉＰａｄを見ながら…！ドジャース打撃コーチが驚愕した「大谷翔平の練習法」』へ続く。 「週刊現代」2025年5月12日号より 【つづきを読む】チームの極秘施設にこもり、ｉＰａｄを見ながら…！ドジャース打撃コーチが驚愕した「大谷翔平の練習法」