サニブラウン「今度は僕が下の世代に繋げていきたい」日本伝統のバトンパスで“メダル獲得”なるか【世界リレー前日レポート】

中国・広州市を舞台に10日から2日間に渡り開催される、東京2025世界陸上の出場権を懸けた世界リレー。大会前日の9日、ウォーミングアップエリアは各国のテントから様々な音楽が聞こえ、血行や筋肉をほぐすために使われる塗り薬の独特な匂いが漂う、国際大会ならではの活気を帯びていた。 【一覧】9月13日開幕『東京2025世界陸上』日程&出場選手 現地時間午後1時に行われたプレスカンファレンスには、世界のトップ選手を代表してサニブラウン・アブデル ハキーム(26、東レ)が、パリオリンピック™100m4位のアカニ・シンビネ(31、南アフリカ)らとともに出席。日本チームの強さについて「リレーはチームスポーツ。個人では世界と差があっても、技術や先輩方が繋いできた経験で世界に追いつくことができた。そこがリレーの魅力」と英語で答えた。また、今大会から新設されるロサンゼルス五輪新種目、男女混合4×100mリレーについて理想のオーダーを聞かれると「めちゃくちゃ難しい質問だな…」と頭を抱える場面もあった。 バトンと日本の伝統を繋ぐ「今度は僕が下の世代に繋げていきたい」 会見後、サニブラウンに本格的に始まったシーズンについて聞くと「まだ何も始まってないですよ。まだ5月なんで、先は長いかなと」と先を見据えた答えが返ってきた。今年、東京で開催される世界陸上は例年よりも2か月遅い9月の開催。その関係で、代表選考となる日本選手権も7月開催と遅い。サニブラウンにとってはまだまだ助走の途中だ。その中で行われる世界リレーについては「まあまあまあまあ、悪くはないかなと思います」と話した。 今大会、日本は平均年齢22歳と非常に若いチームで臨む。サニブラウンは初めて日の丸を背負った世界陸上北京大会から10年、今やチーム最年長となった。「もうあれから10年経ったのかって感じですね。先輩たちに30歳は早いぞって言われていて、まだ20歳半ばですけど、確かに一瞬だったなって感じがしますね」と振り返った。チームの雰囲気については「まだ合流して1日なんで、まだ皆は僕に緊張しているのかなと思うので、話しかけていければなって思います。リレーで日本の団結する力は物凄いものがある。バトンを繋ぐ技術もそうですし、繊細な部分でチームワークがすごい生きてきて、先輩方がオリンピックや世界陸上でメダルを獲ってきた。そういう部分で先輩方が繋いできた伝統を僕が下の世代に繋げていけたら」と語る。バトンとともに繋ぐのは、先人たちの想いと日本の伝統だ。 午後4時頃、練習をスタートさせた日本チーム。サニブラウン以外は、日本代表として初めてのリレー出場となる。まずはトラックを1周、ジョグをしながら4人でバトンパス。言葉を交わしコミュニケーションを取った。それぞれがウォーミングアップをした後、いよいよバトン練習へ。日本は、1走にサニブラウン、2走に今季10秒14の自己ベストを出している愛宕頼(21、東海大)、3走は今季200mで自己ベストを20秒13に更新した鵜澤飛羽(22、JAL)、4走はこちらも今季自己ベスト10秒12を出した井上直紀(21、早稲田大)、メンバーこそ若いが、今の日本が組めるベストのオーダーだ。 初めてバトンを繋ぐサニブラウンと愛宕の区間、サニブラウンがカーブを勢いよく加速すると愛宕もそれに合わせて走り出す。初めてのバトンはサニブラウンが目一杯手を伸ばす形で繋がった。「スピード緩めた?渡せなくはないけど攻めすぎかなと思う」とサニブラウンが話すと、愛宕は「緩めてはないですけど、少し体を捻る感じでもらいました」と会話を交わした。コーチからは「初バトンとしては上出来。ハキームも試合になったらスピードが上がると思うし、明日もう一本合わせよう。今日は風もないので、これをベースにしてあまりに会場の風が向かっていたらマークを縮めて。今日はこれで終わりにしよう」と、天候やレーン状況を考慮する、日本の伝統が詰まったやり取りが交わされた。その後に行われた鵜澤、井上の区間はピタリとバトンが渡った。2人が「これまでにないくらい」と話すほどの一番の仕上がりを見せていた。 東京で6年ぶりメダルへ「日本の皆さんにいい結果をお見せできれば」 予選のレーンが発表され、日本はパリ五輪金メダルのカナダがいる厳しい組に入った。開催国枠として東京世界陸上の出場権をすでに持っている日本だが、開催国枠では不利とされる端のレーンを割り当てられることが多い。本番で有利なレーンを勝ち取るためにも世界リレーで決勝に残り、自ら出場権を勝ち取ることが今大会の目標。東京世界陸上で予選をいい順位で通過すれば、決勝でも有利なレーンが割り当てられ“6年ぶりのメダル獲得”に大きく繋がってくる。決戦に向けてサニブラウンは「東京に繋がる大事な大会だと思っている。同じ組にカナダもいるが、一着で決勝を決めて出場権を獲得したい。世界大会では何年もメダルを獲れていないので、東京で日本の皆さんにいい結果をお見せできれば」と意気込んだ。 東京世界陸上の出場権は、決勝に進出する8チームと、決勝に進めなかった24チームで争う敗者復活戦の各組上位2チーム(全3組)の計14チームに与えられる。国の威信と出場権を懸けた熱き2日間がいよいよ始まる。 写真は左から、サニブラウン・アブデル ハキーム選手、愛宕頼選手、井上直紀選手、西岡尚輝選手、大上直起選手、鵜澤飛羽選手

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