全治3ヵ月の重傷で「岡本和真」前半戦絶望…悪夢の交錯プレーに巨人OBが「ベンチの責任」を指摘する理由

 巨人は5月7日、内野手・岡本和真のケガについて発表した。横浜市内の病院で検査を受けた結果、「左肘のじん帯損傷」との診断が下されたという。5月8日現在、巨人は阪神と共に18勝14敗でセ・リーグの首位を走る。チームが好調だからこそ、頼りになる主砲が全治3カ月のケガを負って戦線離脱するのはあまりに痛い。6日の阪神戦で何が起きたのか、改めて振り返ってみよう。  *** 【写真】負傷した岡本和真に代わって「4番」に入った注目選手とは…中田翔内野手との衝撃的な“丸刈りツーショット”写真も  アクシデントは試合開始早々、1回表に起きた。巨人先発の井上温大から、阪神1番の近本光司がヒット。ノーアウト一塁で2番の中野拓夢がバントすると、ボールは三塁に転がった。 「巨人の主砲」を襲った突然の悲劇  三塁を守る浦田俊輔がダッシュして難なく捕球し、鋭く一塁に投げた──ように見えた。  だがボールは浦田から見て右側へ、大げさに言えば1塁スタンド側のファウルグラウンドに向かって逸れてしまった。  右投右打の岡本は、左手にファーストミットを付ける。浦田が投げた悪送球は、岡本から見ると左へ逸れていく。  そこで岡本は左手のミットを伸ばし、悪送球を取ろうとした。  ところが、バントを決めた中野が全力疾走で急接近。そのまま中野は1塁ベースを駆け抜けようとしたため、中野の左腕と岡本が伸ばした左手が正面衝突してしまう。  中野が岡本の左手を強打した格好になり──きっと左肘に激痛が走ったのだろう──岡本が顔を歪めた。  岡本は左肘を押さえながらグラウンドに倒れ込んだ。トレーナーが駆け付けてベンチに下がることになったが、その際も左肘を庇っていた。  今季の岡本は絶好調を維持してきた。打率3割8厘、ホームラン8本、出塁率は3割8分1厘で、長打率に到っては5割9分8厘を記録していた。 浦田の責任はゼロ  打撃好調の主砲が離脱するのだから、巨人にとっては緊急事態だ。担当記者が言う。 「もし悪送球した浦田選手がベテランの三塁手だったら、野球ファンの批判が集中したかもしれません。ところが浦田選手は昨年のドラフトで2位指名されたルーキーで、おまけに本職はショートなのです。浦田選手は責められないということもあり、相当数の野球解説者が『なかなか防げないプレー』と指摘、不可抗力だったと総括しました。さらに三塁手だった巨人OBの中畑清さんは自分の悪送球で一塁手の王貞治さんが骨折してしまったとのエピソードを披露し、これも話題になりました」(同・記者)  ところが、である。プロの世界なら「不可抗力」かもしれないが、社会人や大学、高校など、アマチュア野球の関係者や経験者からは「岡本選手の守備は、一塁手の基本という点から見ると違和感を覚える」という指摘が散見されるのだ。  そこでヤクルト、巨人、阪神で4番を打ち、三塁と一塁の守備経験を持つ野球評論家の広澤克実氏に、あのプレーをどう振り返るべきなのか話を聞いた。 「確かに三塁の浦田選手が悪送球をしたのは事実でしょう。とはいえ、どれほどの名手であっても、ごくたまなら、あの程度の送球ミスはしてしまうものです。捕球の時にタイミングが合わず、一塁への送球が逸れてしまうことは決して珍しくありません。つまり浦田選手に責任はないのです」 基本とは異なるプレー  ならば岡本はどうだったのだろうか。 「私は長年、アマチュア野球の指導にも関わってきました。その経験に基づいてアマの指導現場で教えている“一塁手の守備における基本中の基本”を考えると、確かに関係者の指摘は正しいと言わざるを得ません」(同・広澤氏)  一塁手の守備における基本とはどんなものか。それは一塁ベースを、打者が走っていくラインを中心として左側と右側に分割することだという。 「バッターが一塁に向かって走っていく視線で見るとベースの左側、つまり二塁を向いている側で守備を行います。一方、ベースの右側、つまりファウルグラウンドを向いている側は一塁を走り抜ける打者のために空けておくのが基本です。そうしないと走塁妨害を宣告される危険性があります。この基本から考えると、あの時に岡本選手は逸れたボールを捕ろうとミットを右側のスペースに伸ばしてしまいました。これでは左手が中野選手と衝突するのは当然だと言えます。もちろん岡本選手が一生懸命にボールを追った結果ではあるのですが、あれは三塁手の送球ミスと割り切って捕球せず、ボールがファールグラウンドを転々とすることを前提にプレーすべきだったと思います」(同・広澤氏) ハインリヒの法則  と言うことは、岡本の戦線離脱は彼の“自業自得”なのか──広澤氏は、それも事実とは異なると指摘する。 「現在のプロ野球では複数のポジションを守るユーティリティプレイヤーが注目を集めています。岡本選手も三塁と一塁、さらに外野も守らされてきました。複数のポジションを守ること自体は何の問題もありません。問題なのは守備コーチがことある毎に、それぞれのポジションにおける基本を徹底して教えているかどうかです。巨人に限らず、丁寧な指導を心がけている守備コーチが12球団にどれだけいるのかという観点は重要ではないでしょうか」(同・広澤氏)  アメリカの損害保険会社の安全技師であったハインリッヒが発表した「ハインリヒの法則」は、労働災害の分野では基本中の基本として知られている。  1件の重大事故の背後には、“ヒヤッとした”や“ハッとした”という事故未遂が300件あるという経験則だ。 「岡本選手が一塁を守っていた時、必ず似たような状況が起きていたはずです。その際、守備コーチはファーストの基本を再確認させることで、岡本選手が安全にプレーできるよう注意喚起する必要がありました。しかし、実際はどうだったのでしょうか。いずれにしても今回のアクシデントで『岡本選手が1塁守備の基本を教えられていない』ことが明らかになりました。つまり岡本選手が負傷した責任を負うべきは、一義的には守備コーチだと思います」(同・広澤氏) 注目株は秋広優人  その上で広澤氏は「やはりコーチのミスは、最終的には阿部慎之助監督が全責任を負うべきだと考えます。いずれにして阪神の中野拓夢選手は当然として、岡本選手にも浦田選手にも責任はないのです」と指摘する。  ピンチはチャンスという言葉がある。野球解説者の間では「岡本選手の穴を埋める選手」に期待が集まっているが、広澤氏は「穴を埋める」という言葉を安易に使うべきではないと注意を促す。 「岡本選手の穴が埋められるような優れた選手なら、開幕時からスタメンで出場しているに決まっています。岡本選手ほどの選手が離脱するのはチームにとって痛手なのは当然で、よほどの大選手でなければ彼の穴は埋まりません。ただし、穴は決して埋まらないという前提で見れば、私は秋広優人選手に注目したいと思います。6日の試合で岡本選手の代わりに出場しましたが、彼が打席に立った際、選球眼の良さを感じる場面がありました。昨年までの秋広選手とは異なる成長を感じ、かなり気になっています」(同・広澤氏) デイリー新潮編集部

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