およそ14億のカトリック信者を束ねるローマ教皇を決める選挙「コンクラーベ」の1回目の投票が行われます。徹底した秘密保持の中、133人の枢機卿がコンクラーベに参加します。日本人2人も含まれていますが、どのような教皇が選ばれるのでしょうか。 【写真を見る】新教皇が入る「涙の部屋」 秘密選挙「コンクラーベ」開始 133人の枢機卿が参加 この日のために、バチカンには世界各地から枢機卿たちが集まりました。新しい教皇はこの中から選ばれます。 ローマ・カトリック教会 バッティスタ・レ 首席枢機卿 「カトリック教会と全人類が必要とする教皇を迎え入れることができるよう、私たちの魂の中におられる神に揺るぎない信仰のもと祈ります」 ローマ・カトリック教会のトップを選ぶ選挙「コンクラーベ」が始まります。 フランス人 「教皇フランシスコのように、人々に寄り添う教皇がいいです」 アメリカ人 「カトリック教会の信条を重視する、より伝統的な教皇がいいです」 新たな教皇に選ばれた枢機卿が入る「涙の部屋」には、3つのサイズの衣服が用意されていました。 コンクラーベが行われるのは、ミケランジェロの「最後の審判」で知られるシスティーナ礼拝堂。新たな教皇が決まるまで、枢機卿たちは外部との一切の接触を禁じられ、秘密選挙が行われます。 今回は133人の枢機卿が参加し、3分の2以上の票を獲得する人物が出るまで投票が繰り返されます。その結果は、外部には煙で知らされます。決まらない場合は黒い煙。新しい教皇が決まると白い煙があがり、鐘が鳴らされます。 5月7日、コンクラーベの舞台裏を描いた公開中の映画「教皇選挙」を見た人は… 映画を見た人 「唖然。今実際に執り行われているのだなとリアルタイムで見ていて、別の意味で面白かった」 「自分が分からない世界のことを詳細に描かれるのは新鮮。それだけで見ている価値がある」 選挙を前に、熾烈な情報戦も繰り広げられています。 弱者に寄り添ったフランシスコ、新教皇は誰に?すでに熾烈な情報戦も 有力候補の一人、フィリピン出身のタグレ枢機卿は、選ばれればアジア初の教皇となりますが、ジョン・レノンの名曲「イマジン」を歌う動画がSNS上で拡散。 「天国や宗教がないことを想像してみよう」という歌を口ずさむのは、「カトリックの教えへの裏切り」だと保守派から攻撃を受けました。 教皇フランシスコの側近・パロリン枢機卿をめぐっても、「高血圧で倒れた」との報道が流れ、バチカンの報道官が虚偽だと否定する事態に。 注目されるのは、世界に影響を与えた教皇フランシスコの改革路線が引き継がれるかどうかです。貫いたのは融和や平和を願う姿勢。 イスラエルとパレスチナを訪れた際には、双方を隔てる壁で祈りを捧げ、貧しい人、弱い人に寄り添い続け、難民や移民の保護を呼びかけました。 教皇フランシスコ 「私たちは多様で、異なる文化や宗教を持っています。しかし、私たちは兄弟なのです。そして平和の中で共に生きたいと願っているのです」 さらに、トランプ大統領が進める移民の強制送還にも度々批判の声をあげました。 教皇フランシスコ(2016年) 「壁を作ることばかり考え、橋を架けることを考えない人はキリスト教徒ではない」 新たな教皇に選ばれるのは、どんな人物なのでしょうか? 日本人も候補「コンクラーベ」開始 礼拝堂周辺のみ電波が遮断 藤森祥平キャスター: 今回コンクラーベに参加する133人の枢機卿のうち、日本人の前田万葉さん(76)と菊地功さん(66)も含まれています。 キリスト教学がご専門の東京大学・山本芳久教授にお話を伺うと、「保守か改革か」や「出身地域」、「バチカンの内か外か」など複数の軸が絡み合っているため予想がつかず、思いがけない人が選ばれる可能性もあるということです。 小川彩佳キャスター: 現地で取材を続ける記者と結びます。どういった状況でしょうか? パリ支局長 仁熊邦貴記者: サンピエトロ大聖堂の右奥にあるのが、コンクラーベが行われるシスティーナ礼拝堂です。外部との接触が禁じられているため、周辺では既に電波が遮断される措置がとられており、まさに秘密選挙が徹底されています。私の場所は300mほど離れていますが、こちらは電波があるので、礼拝堂の周辺だけが遮断されているものと見られます。 小川キャスター: 周辺の賑わいはどうでしょうか? 仁熊記者: 最大25万人が訪れると予測されていて、まさに盛り上がっている状況です。周辺にはグッズショップなどもたくさんあり、コンクラーベにあやかった商品などもあるのではないかと思い探してみましたが、神聖なイベントということで関連商品はありませんでした。 ただ今も売れ続けているのが、教皇フランシスコのグッズです。Tシャツやカレンダーも売られていまして、来年のカレンダーは多くの人が買っていくそうです。教皇フランシスコは、平和を訴え続け、弱い人たちの声に耳を傾けました。こうした教皇フランシスコの路線が継承されるのかが注目されています。 「多様性重視」は 教皇フランシスコの路線を引き継ぐのか 小川キャスター: トラウデン直美さんは今話題の映画「教皇選挙」ご覧になりましたか? トラウデン直美さん: 見ました。ニュース映像を見て、映画は結構リアルだったのだと感じました。ネット全盛期の時代に徹底して隔離して、決まるまで何度も何度も繰り返すという伝統的な選挙のやり方はとても面白いと思います。極端な意見が目立ってしまう今の世の中で、折り合ってきた人がどういった形でどんなメッセージを世界中にいる信者たちに伝えるのかを注目したい。 小川キャスター: まずバチカンの中を束ねていくことから始まりますが、教皇フランシスコの路線を引き継ぐのかどうかが最大のポイントです。 藤森キャスター: 教皇フランシスコは、▼バチカンの養殖に女性登用、▼異なる宗教間対話の推進、▼核兵器廃絶の呼びかけ、▼同性カップルの「祝福」容認、▼難民 移民の擁護など、今まで世界では常識的ではないことにチャレンジした、いわば改革の流れに乗っていくのかどうかですよね。 教育経済学者 中室牧子さん: 教皇フランシスコが着任された後の2015年頃から、カトリック教会の聖職者による信者や信者の子どもに対する性犯罪が問題になりました。そのとき、教皇フランシスコは犯罪について機密扱いにせず、調査に協力していました。 もちろん、選挙は機密であって良いのですが、組織内部の問題についてはきちんと正面から向き合い、積極的に解決を図ることができるリーダーであるか否かは重要だと思います。 小川キャスター: カトリック信者のみならず影響を受ける存在でもあります。 中室牧子さん: 信者だけでも14億人いて、そうした巨大な組織が変わるのは並大抵のことではないが、やはり時代に合わせて変わっていかなければならない部分もあるのではないでしょうか。 小川キャスター: 前回は2日目に5回目の投票が行われ決まりましたが、今回はどうなるか注目です。 ======== <プロフィール> 中室牧子さん 教育経済学者 教育をデータで分析 著書「科学的根拠で子育て」 トラウデン直美さん Forbes JAPAN「世界を変える30歳未満」受賞 趣味は乗馬・園芸・旅行