大阪・関西万博のシンガポールパビリオンは、「リトル・レッド・ドット(小さな赤い点)」をモチーフにしている。 大阪・関西万博 シンガポールパビリオン「ドリーム・スフィア」 ◇小さくても、光輝く赤い点 世界地図に点を打つと、国土全体が隠れてしまうことに由来したシンガポールのニックネームで、パビリオンそのものが、“小さくても光輝く国”の存在感を示している。 敷地は約900平方メートル。会場中心部のシンボル・大屋根リングのすぐ内側にある。シンガポールの最新のアートや文化、食などの魅力もアピールする。 パビリオンのテーマは「ゆめ・つなぐ・みらい」。 ◇夢の球体に未来社会が 建物は「ドリーム・スフィア(夢の球体)」と命名され、シンガポール出身のアーティストによる、五感を刺激する没入型の表現を通じて、シンガポールが夢を現実に変えていく様子を体験できる。 ◇ひときわ目立つ、うろこ模様 球体部分には、リサイクルされたアルミニウムの素材を2万枚以上使用する。直径18.6メートル、高さ17メートルの赤い巨大な球体。外観は「青海波(せいがいは)」と呼ばれる同心円の一部が扇状に重なり合う、鱗(うろこ)模様を描いている。 「青海波(せいがいは)」と呼ばれる同心円の一部が扇状に重なり合う、鱗(うろこ)模様に 大屋根リングに登る人々が映り、影絵のように ◇ミャクミャクカラーを融合、美しい紫のランがお目見え パビリオンでは4月末、開館セレモニーが開かれ、大阪・関西万博のために特別に品種改良した記念のランの花「デンドロビウム EXPO2025 大阪・関西・日本」など3つの品種がお披露目された(いずれも5月10日まで展示)。 シンガポールの国花・ランが両国を結ぶ。 デンドロビウムとは、園芸種の洋ランとして栽培されている品種を指す。 ■デンドロビウム EXPO2025 大阪・関西・日本 赤と青が調和した発色(紫色)のランは、大阪・関西万博の公式キャラクター「ミャクミャク」のカラーを表現。 デンドロビウム EXPO2025 大阪・関西・日本 ■デンドロビウム マサコ コウタイシ ヒデンカ 天皇皇后両陛下が1993(平成5)年6月にご成婚されたのを記念し、皇后陛下(当時は妃殿下として)のお名前を冠した品種。 国内では、宮内庁と兵庫県立フラワーセンター(兵庫県加西市)だけで栽培されている。 このランはシンガポール植物園が育成した品種。 同園内にある国立ラン園のVIP・オーキッド・ガーデンに展示されている。シンガポール植物園では、皇族や各国の首脳らの訪問時に、新たな品種にその名を冠して贈呈している。 花は純白で、直径約10センチ。温度管理に細心の注意を払いながらパビリオンへ運ばれた。 兵庫県立フラワーセンターは1980(昭和55)年、シンガポール植物園と姉妹提携を結び、今年で45年。 デンドロビウム マサコ コウタイシ ヒデンカ ■アランダ・リー・クアンユー シンガポール初代首相のリー・クアンユー氏にちなんで、2015年に命名された。 クワンユー氏は建国時、「標識のない道を、行き先もわからずに進む旅」と表現した。壊滅的な経済状況、民族や宗教をめぐる対立を解決に導き、シンガポールを緑豊かな熱帯のガーデンシティに変貌させた“シンガポール建国の父”と称される。 アランダ・リー・クアンユー シンガポールは1965年にマレーシアから独立し、その5年後の1970年、大阪万博に出展している。トロピカルな庭園都市をイメージし、熱帯植物や動物、鳥類を配したエキゾチックな空間が人気だった。来年(2026年)は、日本との国交樹立60年の節目に当たる。 ◇大阪・関西万博機にB to B促進 セレモニーでスピーチしたオン・エンチュアン駐日大使は、“ラン外交”をアピールし、「昨年(2024年)、シンガポールから日本を訪れたのは約70万人で、シンガポール居住人口の約20%。しかし、日本からシンガポールを訪れる人の数は、予想よりも緩やかだ。どうすれば両国の観光を促進できるかが課題」と語った。 スピーチするオン・エンチュアン駐日大使〈2025年4月26日 大阪市此花区・夢洲〉 そして、「シンガポールはアジア最大の対日投資国。パビリオンではイノベーションや持続可能性をテーマにB to B (Business to Business の略,企業間取引)を促進するイベントを開き、万博を機にさらなる関係強化を図りたい」と抱負を語った。