世界中の選挙で《反トランプ政党》が圧勝中…!日米首脳会談前、石破首相が本当に学ぶべきトランプとの「正しい距離の置き方」

世界中で選挙が行われているが、トランプ政権の諸政策が大きく影響している。とくに関税政策は世界経済を混乱に陥れており、家計を圧迫された人々が、自分の政府がどのような対トランプ姿勢を打ち出すかを投票の際の判断基準としている。 イギリスでは保守党離れが加速 イギリスでは、5月1日に地方選や下院の補欠選が行われたが、右派のポピュリスト政党「リフォームUK(改革党)」が大躍進を遂げた。労働党、保守党の二大政党は後退した。イギリス政治の大きな転換点になる可能性がある。 選挙結果は衝撃的であった。地方選では23自治体で約1600の議席が争われたが、前回は議席ゼロだった改革党が677議席を獲得した。その多くが保守党の地盤である。 国政では第3党の自由民主党が、370議席と躍進した。保守党は317議席、労働党は99議席と大幅に議席を減らし、両党を合計しても4分の1の議席しか得ることができなかった。 市長選でも、改革党は、6つの市のうち2つで勝利した。さらに、イングランド西部の下院補選では、改革党の候補が労働党候補に勝っている。 スターマー首相率いる労働党は、10ヶ月前に政権に就いたばかりであるが、その緊縮財政政策が国民の反発を買っている。財政健全化のために、スターマー政権は、年金受給者に対する冬期暖房費補助の打ち切りや障害者手当の削減を実施したが、労働党らしくないとして不評を買った。 NHS(国民保健サービス)の機能不全で、何ヵ月も診療を待たされる状態が続いており、これに対する不満も大きい。 しかし、14年間続いた保守党政権は、昨年の総選挙で大敗しており、党の再建の道を模索中である。そこで、多くの保守党支持者が改革党に乗り換えたようである。 改革党のナイジェル・ファラージは、EUからの離脱を訴える「BREXIT党」の党首であったが、不法移民対策など欧米諸国の右派を代表する人物である。その扇動主義的言動は、トランプに似ている。トランプのアメリカ第一主義と同様に、ファラージのイギリス第一主義が有権者の心をつかんだのである。 トランプ流に猛反発のオーストラリア国民 5月3日に行われたオーストラリア総選挙で、アルバニージー首相が率いる与党労働党が勝利した。改選前は77議席だった労働党は、下院(定数150)の過半数を上回る86議席を獲得した。これに対して、野党の保守連合は41議席にとどまった。 アルバニージー政権は物価高に対して有効な手立てを講じることができず、支持率が低迷していた。そこにきて、トランプの関税攻勢である。米豪貿易で赤字なのはオーストラリアのほうであり、それにもかかわらず、同盟国のオーストラリアに関税を課すトランプ流に国民の反発は強まった。 しかも、保守連合はトランプのような公務員削減、公務員の在宅勤務禁止、DEI(多様性、公平性、包摂性)関連職の廃止などを公約にしたため、国民の反発を買ってしまった。とくに、イーロン・マスクの政府効率化省(DOGE)を模倣しようとしたことが致命的になった。その意味で、労働党の勝利は、敵失による。 野党の自由党のダットン党首は、トランプ流の選挙戦を展開したため、「安物のトランプ」と揶揄された、落選した。トランプの真似をしたのが敗因である。 オーストラリアで、2期目を目指す政党が大勝するのは珍しく、現職首相が連続して勝つのは21年ぶりである。 今後、アルバニージー首相はトランプ政権との関税交渉を行うことになる。安全保障面では、AUKUS(英米豪安全保障協力)やQUAD(日米豪印戦略対話)を重視する姿勢を堅持する。 オーストラリアの総選挙を見ていると、トランプ政権との距離の取り方が極めて重要だということがよく分かる。近いうちに日米首脳会談が行われるであろうが、トランプは、参院選前の石破の焦りをうまく利用するであろう。トランプとの距離感の保ち方に失敗すれば、与党が参議院選で大敗することにつながってしまう。 トランプに対抗するリーダー像 シンガポールでも、5月3日に総選挙が行われた。与党の人民行動党(PAP)が定数97議席(一院制)の9割に当たる87議席を獲得した。得票率は65.6%で、前回の61.2%を上回った。最大野党の労働者党(WP)は10議席にとどまった。 PAPは、1965年の独立以来、政権を維持してきており、昨年に首相に就任したローレンス・ウォン党首(52歳)にとっては輝かしい勝利となった。 トランプ関税に対応しなければならない貿易立国のシンガポールにとっては、政権の安定が必要であり、今回のPAPの大勝はトランプがもたらしたとも言えよう。 政治の安定という観点からは、与党が有利になる。それは、政権交代が引き起こす混乱を有権者が嫌うからである。オーストラリアの総選挙もそうである。 4月28日に行われたカナダの総選挙でも、トランプ批判を強めるカーニー首相が率いる与党・自由党が勝利した。 オーストラリアの労働党もカナダの自由党も、支持率の低迷に悩んでいた。カナダでは、今年の1月の政党支持率では、自由党は保守党に25%も引き離されていた。オーストラリアでも、2月時点では保守連合のほうが労働党よりも支持率が高かった。 それが大逆転となったのは、トランプの関税攻勢が理由である。トランプは、関税攻勢のみならず、カナダに対して「アメリカの51番目の州になるべきだ」と主張したが、これがカナダ人の反発を買った。 カーニー首相は、トランプを「カナダを裏切り、世界経済を破壊した」と批判し、トランプに対抗するリーダーというイメージを作ることに成功して、選挙に勝ったのである。 ルーマニアのやり直し大統領選、その行方は ルーマニアでは、5月4日、やり直し大統領選挙の投票が行われた。 昨年11月に大統領選挙が行われたが、泡沫候補とみなされていた極右のジョルジェンスク候補が首位となった。ジョルジェンスクは、親ロシア・反NATO派で、TikTokなどのSNSを活用して大躍進したのである。ウクライナ支援に反対し、物価高を批判する姿勢が広範な支持を得た。 しかし、憲法裁判所は、選挙にロシアの介入があったとして、大統領選を無効としてやり直しを命じた。 そこで、やり直し選挙が行われたのであるが、ジョルジェンスクは立候補が認められなかった。選挙の結果は、極右で欧州懐疑派のルーマニア人統一同盟のシミオン候補が40.6%でトップ、中道派で無所属のブカレスト市長のダン候補が21%で2位となった。ジョルジェンスクはシミオンを支持している。 5月18日には、この二人の間で決選投票が行われる。 今の連立政権のアントネスク候補は第3位となり、決選投票に進めなかった。現政権は、中道左派の社会民主党と中道リベラルのハンガリー系民族政党の連立政権であり、 NATOやEUの加盟国として親西側路線をとってきた。 チョラク首相は、第1回目の投票結果を見て、「連立政権はもはや正統性を失った」として辞任を表明した。新大統領が首相を交代させることは確実だからである。 38歳のシミオン候補はEUに懐疑的であり、またウクライナ支援にも反対している。SNSを活用し、今の政治を変えようとする若者の支持を集めている。 2位につけたダン市長は、新欧州派である。 ウクライナ戦争については、停戦交渉が進捗していない。トランプは、大統領に就任したらすぐに戦争を終わらせると豪語したが、100日が経過してもまだ和平は実現していない。 そのような中で、ウクライナ支援に反対する勢力が西欧で拡大している。たとえば、ハンガリーのオルバン首相やスロバキアのフィツォ首相がそうである。停戦への道が遠ざかれば、親ロシア派が力を増してくる。トランプの責任は重い。 トランプ関税「じつは違法」だった?…「数十億ドルの損害」怒り心頭のカリフォルニア知事が連邦裁判所に提訴!

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