3月、浜松市で小学生4人が車にはねられ死傷した事故。遺族がカメラの前で心境を語りました。また、事故をおこした運転手の男性も取材に応じ謝罪を述べました。 好きなキャラクターのぬいぐるみやおもちゃ、ジュースやお菓子に囲まれた遺影。はじけるような笑顔を見せるのはわずか8歳で亡くなった石川琴陽(こはる)さんです。4日、琴陽さんの祖母と伯母がカメラの前で今の心境を語りました。 (琴陽さんの祖母) 「(事故)前日に、遊びに来て、買い物してお菓子を買ってあげたんですが、お菓子を忘れちゃったんです。お菓子忘れたよ、と言ったら『取りに行くからいいよ』と言った次の日にはいなくなってしまった。走馬灯のようにまわって、もう何とも言えないというか…言葉になりません」 (琴陽さんの伯母) 「(事故)前日に遊びに来てくれたので何でだろう。今もフラッシュバックがすごいですね。かわいそうしか(言葉が)出てこないですね」 事故が起きたのは3月24日。浜松市中央区舘山寺町で軽トラックが小学生の自転車の列に突っ込みました。この事故で琴陽さんが亡くなり、姉(10)ら3人が重軽傷を負いました。琴陽さんは姉と2人の友達と動物園から歩いて自宅に戻り、その後、自転車に乗って友達を送る途中、事故に遭ったといいます。 (琴陽さんの祖母) 「病院に行ったんですね。そしたら琴陽は寝ている状態で。目開けて起きてと言ったら、起きてきそうな感じだったんですけど。(医師から)うそを言われているような気持ちで現実だと思えなかったですね」 明るく活発な性格だった琴陽さん。誕生日にはお母さんに手紙を書くなど、優しくて思いやりのある女の子でした。絵を描いたり工作したりするのも大好きだったといいます。 (琴陽さんの祖母) 「人懐っこい、優しい子で。ニコニコした顔。本当に顔がくちゃっとなるぐらいの笑顔が(頭の中で)くるくるまわっている。その子がもうこの世にいない。もう毎日毎日たまりません」 琴陽さんの姉(10)は事故の4日後に意識が回復しました。数日後、家族が琴陽さんが亡くなったことを伝えると涙を流しながら「妹の分まで生きる」と話したそうです。 (琴陽さんの祖母) 「病院にいたときに『琴陽死んじゃった』と涙をぼろぼろ流したときが、姉が話した言葉で、それから聞きません。何も言いません。でも姉もすごく深く傷ついています。(家族は)3人だけになるので、すごく静かになってしまって、休みになると泊まりに来てほしいとみんなに言っているんです。だから姉も本当に寂しいんですよね」 姉は退院して自宅で生活できるようになった今も、脳挫傷と頭がい骨骨折、くも膜下出血の後遺症で、頭部への衝撃を避けるため運動が制限されているといいます。 事故から1か月あまり。検察は過失運転致死傷の疑いで送検された78歳の男性を処分保留で釈放し在宅で捜査を続けています。ただ、釈放された後も謝罪がないことに遺族は怒りを募らせています。 (琴陽さんの祖母) 「ぶつけた本人は何ともなかったような感じで謝罪もなく顔も出してきませんし、腹立たしいし怒りと恨みが交互にきている」 (琴陽さんの伯母) 「人を憎みながら生きる、苦しいことなのに。もう帰ってこないのはわかっているけど、琴陽かわいそうだなとそれしかないですね。現実のことだとわかっているけど、心がついていかないです」 カメラの前で取材に応じたのも、男性への怒りが理由だと明かした琴陽さんの遺族。こうした中、昨夜、事故を起こした男性(78)が初めて遺族の自宅を訪れ謝罪したことがわかりました。男性は「一生をかけて償っていきます」などと語ったということです。 遺族に謝罪した軽トラックの運転手の男性は5日朝、取材に応じカメラの前で何度も頭を下げました。 (事故を起こした男性) 「このたびは大変なことをしてしまい、大変申し訳なく思っている。今後 いかなることでも自分のことと深く反省しながら、一生をかけて償っていきたい」 遺族らに対し謝罪する男性。事故当時の状況については… (事故を起こした男性) 「事故現場の2,30メートル手前から前を走っていた小学生の自転車は全然思い出せません。衝突する2、3秒前から気を失ったと思う。胸を片手で抑え、もう一方の手でハンドルを持った状態で目を覚ましたと思う」 また事故を起こす前の3月初旬にも男性は同じような症状がきっかけで物損事故を起こしていましたが、家族には相談していませんでした。今回、取材に応じた理由を訪ねると… (事故を起こした男性) 「公の場に出て、自分のしたことをしっかりかみしめて、こういうことをしてしまったと皆さんに知ってもらった上で、一生をかけて償うことの方が大事だと(思った)」 男性の謝罪をうけ、遺族は取材に対し「謝罪の言葉はあったが反省の気持ちや誠意は見えなかった」と話 しています。