麒麟・川島の相方「田村裕」の現在が意外すぎた…17年前のベストセラー『ホームレス中学生』教科書に

2007年8月に発売されるやいなや225万部の大ベストセラーとなった小説『ホームレス中学生』。昨年には『新装版 ホームレス中学生』(ともにワニブックス刊)が発売され、早くも「令和7年度版 中学校 技術・家庭『家庭分野』教科書」 (開隆堂出版)への掲載が決定。 それを記念して著者の麒麟・田村裕が学校図書館の司書(*1)向けセミナーに参加し、およそ90分の講演を行った。特別授業「もし、帰って家がなくなっていたら、どうする?」をテーマに話した内容をお届けする。 芸人を目指した3つの理由 当日、会場となった日販図書館選書センター(*2)には多くの司書が集結。学校のような真剣な空気が会場を包むが、田村が鉄板ネタを交えたあいさつで参加者の心を掴む。 僕は麒麟っていうコンビ(の一人)なんですけども、もうコンビであることを忘れそうでして。というのも相方の川島さんがですね、おひとりですごく忙しくなられましてですね……すごく暇です(笑)。 収入だけで言いますと、サバンナの八木(真澄)さんがファイナンシャルプランナー(1級)の資格を取りまして、僕と川島さんの今の年収の差を計算していただきましたところですね、なんと60倍も差がついています。60倍です。そんなことを考えるとね、ついつい気持ちが下に下にと沈むのを防ぐことから一日が始まります(笑)。 そして話は田村が芸人を目指すこととなったきっかけに移る。そこには小学5年生の時に亡くした母親への想いがあった。 僕がこの世界入ったのにはいくつか夢がありまして。まずは「人気者になりたい」というシンプルな理由と、すごく貧乏だったので「お金持ちになりたいな」と。あとは父親が蒸発していたので、(自分が)有名になったら見つけられるのかなっていう浅はかな考えもあって。最後に「(亡くなった)お母さんの話を本にしたいな」というのがありました。 自分が子どもの時は自分の母親がこの世界の中でも特別で、美しい母親だったと勘違いしておりまして。『野口英雄物語』という漫画の冒頭部分にお母さんのくだりが出てくるんですが、「野口英世さんぐらい有名になったら、お母さんのことも漫画に書いてもらえんねや」と。そんなら僕もそれぐらい有名ならなあかんな。そんな理由で芸人を目指しました。 生き別れた父親と15年ぶりの再会 「お金持ちになりたい」「お父さんを見つける」「お母さんの話を本にしたい」という3つの夢は、奇しくも2007年8月に『ホームレス中学生』を上梓したことでそのすべてが叶う。 お笑いも好きだったし、「ワンチャンあれば!」ということでこの世界入りまして、お金持ちになるという夢も、本が売れた一時期だけですけれども叶いました。今はもうありませんけれど(笑)。お父さんもですね、テレビ番組の中で探していただきまして、15年ぶりに再会することができました。 あと『ホームレス中学生』はお母さんの本と思って書いていまして、本のタイトルも最初は「『マザーコンプレックス』はどうですか?」って言ったんですよ。そしたら編集担当さんが却下ですと(笑)。そしたら『ホームレス中学生』という本当にインパクトのある素晴らしいタイトルを出してくれまして。 内容はただの僕の思い出日記なので、このインパクトのあるタイトルがなければ売れてなかったと思います。結果、印税でお父さんに家をプレゼントして、その家に住んでもらって。まあ10年弱ぐらいで病気になって他界してしまいましたけれど、今はその家に自分の家族が暮らしています。 お父さんが欲しいと言って、お父さんが見つけてきた場所に買った家なんですけど、(僕の)奥さんの実家からたまたま近くで、奥さんからすると子育てするのに実家が近いほうがいいし、地元の友達にも近いし……親父の引き寄せのおかげです。 家賃もかからないですし。今やホームをレスする可能性が限りなく小さくて、皮肉にも『ホームレス中学生』で上手く転がっていったなというような生活を送っています。 たった一通の手紙で人生が変わった 著書は売上225万部を突破し、日本のベストセラーTOP30に名を遺す名作だが、その存在を知らない世代が増えてきたという。 『ホームレス中学生』という本を(17年前に)出したんですけど、もう誰も覚えてないんです。若い子とかもう知りもしないんですよ。だからX(旧Twitter)でね、エゴサーチを毎日のようにするんですよ。誰か僕のことをつぶやいてへんかなあって(笑)。 なのに、なぜかそんなタイミングで、この『ホームレス中学生』という本をですね、「新装版で出しませんか?」というオファーをいただきまして。再出版ということで、いろんな方に「内容は何か変わったんですか?」と聞かれるんですが、一言一句、変えていません。 ただ、最後に新作エピソードがおまけのような形であります(【お兄ちゃんの痕跡】、【うちの子に迎えよう】、【兄・研一との「思い出、答え合わせ対談」】)。この本(『ホームレス中学生 新装版』)を(2024年7月)出版してから、世の中の反応があったらいいなと思ってたんですけども、今のところゼロです(笑)。ぜひ読んでいただいて、何か反応してください。 明るく話す田村だが、高校時代には生きることへの興味を失ってしまい、亡くなった母親に会いたいと願うようになる。そんな田村の消失的な考え方を大きく変えたのはある先生からの手紙だった。 高校の時、工藤先生という方からもらった手紙が、僕の人生に大きな影響がありまして、すごく救われたんですね。あの手紙がなかったら、今も下を向いて生きていると思います。芸人になんてなってないと思いますし、もしかしたらお父さんのことを恨んで生きていたかもしれません。 でもたった1通の手紙ですべてが180度変わりました。そのおかげで今がありますし、川島君とこんだけ差をつけられても、下を向かずに正直満足しています(笑)。実際、この人生で良かったなって日々思いますし、昨日もインスタライブ、10人しか見てませんでしたけど(笑)、今日も昨日も仕事があって、無事に一日を過ごせて、僕は本当に幸せやという配信をしたんですけど、それもあの手紙のおかげなんです。 やっぱり僕も「お母さんに届かないけど、届けたい」ということで、本のラストは手紙(【母に今伝えたいこと】)で締めさせていただきました。 …後編『麒麟・田村裕『ホームレス中学生』2億円の印税、「最後の300万円」の使い道に妻から言われた「意外な一言」』に続きます。 (*1)司書:学校司書は、学校図書館の職務のうち、主に学校図書館の整備及び奉仕的職務を担当します。メディアの専門家として、学校図書館メディアの発注・受入から分類・配架等の組織化、学校図書館メディアの提供、情報サービス、読書案内、広報活動など、学校図書館メディアと児童生徒・教職員をつなぎます。また、学校図書館を活用する学習活動が円滑に行われるように、教諭や司書教諭と協力のうえ学習の支援も行います(公益財団法人 全国学校図書館協議会HP〜学校司書の任務と職務〜より) (*2)一年を通じて利用できる図書館のための選書施設。一般書店ではあまり展示されていない学校図書館向けの約3万冊の図書を展開している。 麒麟・田村裕『ホームレス中学生』2億円の印税、「最後の300万円」の使い道に妻から言われた「意外な一言」

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