井上尚弥のラスベガスチケットの売れ行きが「爆死」していた…米ファンも騒然の事態に

チケットが「早期完売」ならず 5月4日、ラスベガスのT−モバイル・アリーナ(2万人収容)で開催される、プロボクシングの世界4団体スーパーバンタム級タイトルマッチ、王者・井上尚弥(大橋)とWBA1位・ラモン・カルデナス(米国)の試合。どうもその観戦チケットが「壊滅的に売れていない」という。 話題に上がったのは4月上旬。米マッチメイカー、リック・グレイザー氏が4月5日、「複数の情報筋によると、井上の試合のチケットは『壊滅的に売れていない』とのことだ。これじゃ葬式になってしまうって! 井上陣営もこの失敗に不満を抱いている。プロモーターは他でもないトップランク。これがいまのトップランクのボクシングというわけだ」とSNS上で投稿し、波紋を呼んだ。 一部ではこれを裏付けるように、チケット価格の下落も見られた。アメリカではスポーツやコンサートのチケット価格は、日本のような「定価制」ではなく、需要と供給に応じて価格が日々変動する「ダイナミック・プライシング(変動価格制)」が一般的だ。プロモーターが設定する「基準価格」はあっても、売れ行きが悪ければ値下がりし、逆に需要が高ければ跳ね上がる。転売サイトも許容されており、こちらも二次流通価格が変動、実勢価格としてメディアにも引用されることがあるほど。 今回、筆者はある販売サイトでチケット価格の変動を長く見ていたが、当初160〜8000ドルだったものが、グレイザー氏の投稿前日、4月4日時点では693〜16638ドルで上昇していた。その時点で見たら「チケット爆死」には見えなかったが、ここに罠があった。関係者によると「アメリカでは、転売業者が自動購入ツールでチケットを大量買い占め、価格を吊り上げた上で転売するから、売れているように見えるだけという場合もある」という。 事実、その後は急速に価格が下落。240万円を超えていた最高額の席は売り出し直後の8000ドルより(約110万円)値崩れし、4月末には3600ドル(約52万円)になっていた。主力ゾーンの500〜900ドルの席も250〜450ドルぐらいに落ち込んでおり、外側の安い席は「ソールドアウト」になっていても、会場の中核を占める中〜高額席が売れ残っていた。 最終的に、試合当日の客入りがどうなるかは未知数だ。直前購入の層もいるだろうが、少なくとも他の人気興行のように早期完売になってはいなかった。 プロモーター痛恨の戦略ミス なぜ、井上ほどのスター選手の試合が興行的に大ヒットとならなかったのか。最大の要因として、プロモーターであるトップランク社の戦略ミスが指摘されている。 70年代からアメリカのボクシングを牽引してきた同社だが、最近は興行苦戦が続いている。17年に大手ケーブル局のHBOがボクシング中継から撤退し、翌年からはESPNと組んで再スタートしたが、視聴率は低迷。現在はネット配信のESPN+が中心となり、ついにこの夏でESPNとの契約が終了する見込みなのだ。グレイザー氏が、「これがいまのトップランクのボクシング」と書いていたのも、同社の低迷を示唆したものだ。 そのせいか、近年はスター選手との契約更新にも失敗。テレンス・クロフォード、シャクール・スティーブンソンらが離脱し、トップランクの主力ラインナップは大幅に弱体化している。 こうした背景の中で、今回、井上が「救済策」として利用された節もある。本人が特にアメリカでの試合を熱望していたわけでもないのに、トップランクのボブ・アラム代表は「次はラスベガス」と早くから公言し、前回の試合後にはリングにまで上がって発言を繰り返していた。しかも相手は、アメリカでも無名に近いラモン・カルデナス。明らかにコストを抑えたマッチメイクである。 さらに不運だったのは、同週にビッグイベントが重なったこと。5月2日にはニューヨークのタイムズスクエアで招待客限定によるライアン・ガルシアの試合があり、その翌日にはサウジアラビアでカネロ・アルバレスでトップスターのサウル・カネロ・アルバレスが試合、米国内の関心はそちらに集中した。 井上がいくらトップスターとはいえ、ここでラスベガスに2万人を集めようというのは厳しすぎる。そのため「チケット爆死」情報に対しては、アメリカのファンからも、こんな意見が出ていた。 「ロサンゼルスならまだしも、最近はラスベガスに行ってまで見るファンはなかなかいない」 「なんでもっと小さな会場にしなかったのか」 「井上の知名度はアメリカでは、まだ高くないから、もっと何度も来て人気を上げるべき」 中でも興味深かったのは、元世界王者でコメンテーターのショーン・ポーター氏への批判だ。ポーター氏は昨年、井上について、「なぜアメリカで戦わないのか」と批判して物議を醸したことがあった。 「井上の目標が何なのかマジで分からないね。ボクシング界の次のスターになりたけりゃアメリカに来るべき。アメリカの選手たちを倒して、アメリカのファンに注目されなきゃダメ。アウェーでどれだけ力を発揮できるのか見たい人だっているんだ」 これを覚えているファンは、「あのときポーターに同調していた連中はラスベガスのチケットを買ったんだろうな?」と問いかけた。 多くのファンは、チケットセールス苦戦でも、それが井上自身の力不足によるものとは思っておらず、プロモーターの判断ミスか、アメリカのボクシング低迷などを理由と見ている。 トップランクのアラム氏は試合前日の3日、「日本からもっとたくさんのファンが来ると思っていたけど、思ったほどじゃなかった。理由は分からない」と落胆のコメントをしていたが、たとえ動員が理想とは言えなかったとしても、今回、井上の試合が全米で大きな時差なく放送されることのメリットはあり、井上の世界スーパースターとしての市場拡大に向けた布石になった。T−モバイル・アリーナでメインを張れるスターなど、世界中でも数えるほどしかいないのだから。 ついにボクシングバンタム級「統一戦」が決定…日本ボクシング界の歴史を塗り替える二人の王者の名前

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