処方された薬を遠くに取りにいかなければならない。医療不足の山間地ではそんな現状がありますが、浜松市では全国初の「ドローン専用の航路」が開通し、空から薬を届けるサービスに期待が集まっています。 4月22日浜松市天竜区を流れる気田川。 ことし3月、この川を含む“天竜川水系”の上に開通したのが全国初!ドローンのための‟空の道路”です。 4月、この‟空の道路”を使った「物流ビジネス」の実験が行われました。場所は、浜松駅から車でおよそ1時間半。中山間地の天竜区春野町です。 (西尾 拓哉 記者) 「こちらの飛行機のようなかたち をしたドローン。両翼2mと大きな機体ですが、今、このドローンを使った全国初の取り組みが行われています。」 ドローンに積み込まれたのは“薬”!実証実験を行っているのは、物流会社やドローンを管理する5つの会社ですが、一体なぜ、ドローンで薬を届けるのでしょうか? 過疎化が進む、天竜区…。医療不足も深刻な問題で大きな病院はありません。診療所はありますが、処方された薬がない場合も多くあるといい、その際はわざわざ離れた市街地まで取りにいく必要があるのです。 この日の実験は、およそ5キロ離れた診療所を目指します。そして…診療所の裏にある着陸場所にドローンが到着、 (光久会・加藤征也 事務課長) 「高齢者が多いので、移動の不便さも考えれば今後期待できると考えます。」 実は、天竜区の別の診療所では「処方された薬」をドローンで配送するサービスがすでに始まっています。配送は月2回、1回の利用は430円です。このサービスを運営するのも、今回実証実験を行ったグループで、過疎化が進むエリアにもこのサービスを広げるのが目的です。 実証実験を行った天竜区の春野町。人口はおよそ3800人で、半数以上が65歳以上の高齢者です。市街地にある薬局までは車で40分ほどかかりますが、ドローンでの配送が実現すればわざわざ出向く必要もなくなります。 (80代女性)「薬を取りに行くのは不便だから、 ドローンを使ってうまくいけばいいと思います」 (70代女性)「(遠方の)薬局に行ったら(薬が)ありません。後日届いたときに連絡するので来てくださいと。」「すぐドローンが来てくれればそれだけ早く内服できますしね。」 今回、開通した全国初の「ドローン航路」。天竜川水系の上空に設定され、およそ180キロが整備されました。川の上空は、建物や電線がなく安全に飛行できるのが最大のメリット!さらに、‟航路を整備”したことにより、飛行させる度、一回一回、行政などに申請していた煩雑な手続きも無くなりました。 しかし、‟川の上空”とはいえ、航路の設計にも1年ほどかかり「苦労した」といいます。 (トラジェクトリー 小関賢次CEO) 「送電線や鉄塔がたくさんありま す。どこに構造物があるのか。 どこに誰が住んでいるのか、情報として調べて、周辺住民にしっかり説明してご理解いただいた上で飛行させ るので、天竜川の長い航路の周辺の皆様に説明することも非常に時間のかかる作業だったと思います。」 そして、一緒に事業を行う物流会社は、このドローンビジネスには‟大きな課題”もあると話します。 (HMKネクサス 内田貴啓社長) 「残念ながら、この機体は1キロしか物を積めませんので、どこまでいっても、やはり“採算性”ということがあるかと思います。」 参入する事業者の採算がとれなければ、このビジネスを続けていくことも難しくなるのです。 そこで、この状況に国も動き始めています。国は、荷物を運んだ帰り道、ドローンに河川上空の撮影を依頼、それを河川の点検に利用し、事業者に資金を提供する計画です。 (HMKネクサス 内田社長) 「ドローンでも新たな機能を搭載したかたちで重量物が運べるようになったときに、初めてドローンを活用して、天竜川水系に物資の輸送も始めたいと思っています。ネットスーパーや日用品、雑貨品など、そういうものも含めて、中山間地域にお届けするサービスができるのではと考えています。」 全国初の「ドローン航路」。空の新たなインフラとして、配送サービスの拡大が期待されています。