3月11日の午前10時前、JR高田馬場駅からほど近い路上で女性が殺害された。22歳の若さで凶刃に倒れたのは、動画配信の世界では「最上あい」の名で配信者として知られた人物だった。 事件から2カ月が過ぎようとしているが、被害者の女性が配信者として活動していたプラットフォーム「ふわっち」には、いまだに「最上あい」のプロフィールページが残されている。彼女が残したコメントを読むと、事件当日に行われていた「3.11山手線徒歩1周」の予告もある。 SNS上では、事件発生時まさに配信中だったと見られる映像が拡散されており、警察官らしき人物が「被害者は一見して死んでいる」と無線で報告する音声を聞くことができる。さらには、「最上あいの婚約者」を名乗る人物まで現れ、「最上あいと容疑者の時系列」などとして独自の情報を発信していたが、これについても真偽のほどは定かではない。 事件前日の配信(まさやん氏のX[maa_masayan]より) ここでは、取材によって明らかになった事件の一部始終と、知人が明かす被害者女性の素顔を報じる(以下、「週刊新潮」2025年3月27日号をもとに加筆・修正しました。日付や年齢、肩書などは当時のままです)。 *** 【写真を見る】「最上あいの婚約者」を名乗る人物が公開した“ラブラブ2ショット” 「まさか犯人だとは思わなかった」 事件が起きたのは、語学学校や学習塾の立ち並ぶ、学生街らしい場所。普段は静かな路地裏で、一体何が起きたのか。一部始終を見ていた男性に話を聞くことができた。 現場から100mほど離れた建設会社で働く男性が女性の叫び声を聞いたのは9時55分ごろのことだった。 「“ギャー! 助けてー!”と女性のつんざくような悲鳴が聞こえたんです。声のあった方を見ると、女性がうつ伏せで倒れているのが見えました。すぐそばには介抱している様子の男性が1人と、電話をしたり、スマホを触っている男性が2人、合わせて3人ぐらいの人影がありました。われわれが出ていく必要はなさそうだね、と。そんな話を従業員としていたのですが……」 10分ほどして到着したパトカーから降りた警察官が取った行動は、男性にとって予想外のものだった。 「制服を着た警察官2人が、介抱をしていた男性と話をした後、その男性を地面にねじ伏せ取り押さえたのです。その時はどうしてだろう、と驚きました」(同) 実はその介抱をしていたように見えた40代の男こそ、現行犯逮捕された高野健一容疑者(42)だったのだ。 「取り乱した様子などは一切なく、ものすごく落ち着いた様子だったんです。女性のことをそっと見守っているような様子だったので、まさか犯人だったとは思いませんでした」 2カ月で250万円の借金 高野容疑者が「ふわっち」で被害者の女性を知ったのは2021年の12月。やがて連絡を取り合う間柄となり、翌年8月、初対面を果たす。場所は、被害者の女性が勤める山形市内のクラブだった。 「数回やって来た高野さんのことは、“私にガチ恋の人”と言っていました。私も何度か見かけたことがありますが、高野さんはすごくおとなしくて真面目そうな人、という印象。借金の話なんて聞いたことありませんでした」(店の関係者) しかし、このクラブでの対面が、二人の人生を決定的に狂わせていく。 高野容疑者が被害者の女性に対して提起した貸金等返還請求訴訟の資料によると、クラブ初訪問の約2週間後、被害者の女性から高野容疑者にこんなLINEが届いた。 〈申し訳ないんだけどさ、昨日日雇いバイト行った先に財布忘れちゃってまじ手持ちない状態だからちょいお金貸してほしいんよね〉 高野容疑者は〈4万でいいかな〉と応じ、すぐに指定された口座に送金した。 数日後、またもや窮状を訴えられた高野容疑者は5万円を送金……と、被害者の女性はさまざまな口実を設けて、9月だけで10回も借金を申し込んでいた。被害者の女性の要求はエスカレートしていき、11月に入ると、〈一括でやり直したいから50以上は絶対借りたいの〉などと懇願。結局、高野容疑者は消費者金融2社から借り入れ、95万円を送金したのである。 こうして被害者の女性は、わずか2カ月の間に250万円ほどの借金を作ってしまったのである。 「よくお金が続くな、と」 彼女の金の使い方は、かなり無軌道なものだったという。 「山形駅前の夜の店のキャッチやボーイの間では、彼女は金遣いが荒いと有名でした。ボーイズバーでお気に入りの男性スタッフのためにシャンパンを入れる、といった“貢ぎ癖”があったようです。それも、一人だけではなく複数人のお気に入りがいた。よくお金が続くなと思っていました」(前出のクラブ関係者) 奔放な夜遊びを繰り返す彼女は当時、母子支援施設に身を寄せるシングルマザーだった。勤務の際には、託児所に子どもを預けていたという。 ところが、 「バックヤードで、“子どもを児童相談所に連れて行かれた”と、数日にわたって泣いていることがありました。それは、子どもを託児所に預けたまま彼女が飲みに行ってしまい、託児所から店に連絡が入るということが度々あったからだと思います。子持ちの女性がそれなりにいる店なので、彼女の飲み歩きを母親としてよくないことだと眉をひそめる従業員も少なくありませんでした」(同) お金を借りては夜遊びに使い、返済をしようとしなかったのはよいことではない。しかし、どのような背景があるにせよ、命を奪われる理由にはならないだろう。 デイリー新潮編集部