水俣病慰霊式 公式確認から69年 環境大臣が2日滞在するも患者・被害者との溝は埋まらず 熊本

水俣病が公式に確認されてから今日5月1日で69年です。熊本県水俣市で営まれた慰霊式で鎮魂の祈りが捧げられました。 【写真を見る】水俣病慰霊式 公式確認から69年 環境大臣が2日滞在するも患者・被害者との溝は埋まらず 熊本 慰霊式には患者や遺族、浅尾慶一郎(あさお・けいいちろう)環境大臣たち660人が参列しました。 鎮魂の鐘 黙とう 患者・遺族を代表して祈りの言葉を述べたのは、祖父母と両親が水俣病の認定患者で、自身も被害者である杉本実(すぎもと・みのる)さん(58)でした。 患者・遺族代表 杉本実さん「漁に行って網をひき、魚を捕って私たちを育ててくれた、じいちゃんが亡くなって五十六年、母ちゃんが亡くなって十七年、ばあちゃんが亡くなって十三年、父ちゃんが亡くなって十年になります。俺もじいちゃんになりました。その孫たちが大きくなって、魚釣りや海で遊んで楽しい思い出が生きる豊かな海であってほしいと願います」 また、水俣病の原因企業、チッソの山田敬三(やまだ・けいぞう)社長は、課された責任をしっかりと果たすと述べました。 チッソ 山田敬三社長「まずは現在の計画をしっかりと達成していくことに努めると同時に、患者の皆様が安心して暮らすことができる環境を維持し、地域社会の発展にも貢献していく」 一方、同じころ、不知火海を望む乙女塚では、行政主催の慰霊式とは別に、水俣病互助会が法要を営みました。 今年で44回目を迎えるこの法要は、人だけでなく魚介類や動物など、公害で失われた全ての生き物に祈りを捧げる場として開かれています。法要では、参列した患者や支援者たち約60人が鎮魂の祈りを捧げました。 胎児性患者 坂本しのぶさん(68)「今後も水俣病と付き合っていかなければ いけないのかと思うと悔しい」 水俣病をめぐっては、熊本・鹿児島両県で合わせて約2300人が患者として認定されています。 しかし、認定から漏れているとの訴えは多く、1500人以上が認定を求めて集団訴訟を続けていて、熊本県と鹿児島県では合わせて約1300人が認定を申請しています。 慰霊式の前、浅尾環境大臣は被害者団体との2日目の懇談に臨んでいました。 水俣病患者連合 松粼重光さん「今年は時間はあるので、私たちの話を聞いていただいて、お互いが納得できれば」 柔らかな表情で挨拶したのは、去年2004年にマイクの音量を絞られたひとり、松粼重光さんです。 1年前のきょう、当時の伊藤信太郎環境大臣が患者・被害者団体と懇談した際、環境省の職員が、団体側の発言中にマイクを切り、話を遮りました。 当時の伊藤大臣が謝罪 この反省から、2024年7月に改めて懇談の場が設けられました。 団体側は物価高に応じた離島手当の増額など、福祉の拡充を求めました。その要望を聞いた当時の伊藤環境大臣は 伊藤信太郎環境大臣(当時)「基本的に私はみなさんがご要望したことはできるように、環境省が動くようにと指示している」 しかし、実現したのは離島手当の月1000円の増額などにとどまり、団体側が求めていたものとは大きくかけ離れていました。 そして今回、「十分な時間を確保し関係者の声をじっくり聞く」として、浅尾大臣は2日間の懇談を決めました。 松粼さんは、大臣へ、亡くなった 妻の苦しみを語り、認定制度に疑問を投げかけました。 水俣病患者連合 松粼重光さん「家内は毎日、毎日、イタイ イタイと言いながら死んでいきました。水俣病と本人が言っているのであれば水俣病ではないのかと考えてくれるのが、行政の仕事だと思う」 そして、団体側が要望したのは、再懇談の時と同じ、物価高に応じた療養手当の拡充などでした。しかし、浅尾大臣は・・・ 浅尾環境大臣「元々の和解所見を基本に考えたという経緯があるので、ここについてはなかなか難しいというのが実態」 改めて、療養手当の拡充は難しいという見解を示しました。 <熊本県水俣市の慰霊式会場から中継>1日午後6時20分ごろ 記者「2日間の懇談を終えた浅尾環境大臣は、記者会見に応じています。患者・被害者たちの受け止めは非常に厳しいものになりました」 水俣病被害者互助会 佐藤英樹会長「きょうの懇談も、前と同じかな。こちらの要望に対しても同じことを繰り返し、今までと変わらない回答」 水俣病患者連合 松粼重光さん「あんたたち嘘ばっかりだと今日も言いたいですよ。でも、人間対人間だからどっちかが下がりながらお願いをしないといけない」 記者「患者・被害者団体が一貫して求めているのは、認定制度と健康調査の手法の見直し、そして医療・福祉の拡充です。しかし、環境省の回答は、団体側が納得するものではありませんでした。 話し合いを重ねても思うように進展しない状況を、関係者はどのように捉えているのか?―― 記者「関係者からは、残された時間が少ないという声があがっています。2024年5月のマイクオフ問題を受け、2か月後に行われた再懇談に出席した浜付重俊(はまつきしげとし)さんは、さらにその4か月後の2024年11月に亡くなりました。被害の過酷さと人生を奪われた悔しさを訴えるため、余命宣告を受けた直後にも関わらず、再懇談に参加することを決めたといいます。支援者の1人は『浜付さんのように亡くなる人がいるという現実を大臣にはしっかり分かって欲しい』と話していました。 来年は水俣病の公式確認から70年です。残された時間が限られる中で、国はどのように問題解決を図るのか?患者・被害者が納得する答えが求められています」

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