お笑いコンビ「とんねるず」の石橋貴明(63)が食道がんを公表した。患者の大半を男性が占め、年間2万人以上が罹患する一方で、「早期発見の難しいがん」としても知られる。そんな病に打ち勝ったサバイバーたちが明かす“リアル”を、医師の解説とともに伝える。 *** 【写真を見る】「そこまでしてビールを飲みたいの?」 食道がんを経験した鈴木宗男氏が開発した方法とは 4月3日、自身の YouTube チャンネルで「食道がん」であることを公表した石橋。相方の木梨憲武(63)が発した「体調をもどし、次のライブに向けてスタンバイしてください!」とのコンビ愛あふれるメッセージが話題となった裏で、各界の“がんサバイバー”による激励の言葉も注目を集めている。 2015年に前立腺がんと診断された脚本家の三谷幸喜氏(63)は「早期発見すればそんなに厳しい病気じゃない」とコメント。4年前にステージ1の膀胱がんが見つかったお笑いコンビ「サンドウィッチマン」の伊達みきお(50)も「早期発見であれば治る」と力強く語った。 石橋貴明 石橋自身、「早期に見つかったということで、すこし安心している」と明かし、「(母校の)帝京魂を出して、病気に必ず打ち勝って復帰します」と宣言した。 「初期の段階で兆候が現れるケースは少ない」 消化器病専門医であり、「近藤しんたろうクリニック」院長の近藤慎太郎氏によれば、 「食道がんの主な症状として“胸やけ”“胸の痛み”“食べ物をのみ込みづらい”“ゲップが頻繁に出る”などが挙げられますが、初期の段階でこういった兆候が現れるケースは非常に少ない」 エールを送った木梨憲武 という。石橋の場合、昨秋から体調が優れず、今年2月に病院で検査して「がん」と判明したが、 「食道がんは無症状の期間が長く、早期発見する上で重要になってくるのが定期的ながん検診です。初期の食道がんの85%が胃カメラで見つかったというデータも存在するなど、検診と早期発見は不可分の関係にあるといっていい」(同) 実際、胃カメラによる検査でステージ1の食道がんが偶然見つかったと話すのは、フォークグループ海援隊メンバーの中牟田俊男氏(75)だ。 「15年11月、定期健診で訪れた近所のクリニックで、胃カメラを飲んで調べてもらっていると、モニターを見ていた担当医が“変なのがある”と呟いたのです。その場で細胞を採取し、病理検査に回してから1週間後、食道がんとの結果を告げられました」 中牟田俊男氏 驚きはしたものの不思議と実感が湧いてこなかった一方で、仕事に支障が出ることだけは気がかりだったという。 「手術を受けたのは16年1月です。内視鏡手術も想定されましたが、最終的に開腹手術となって食道は全摘。リンパ節もごっそり取って、胃の一部も切除しました。食道の代用として、当初は大腸を使う予定でしたが、血流の確保が難しく、胃を引っ張り上げて喉とつなぐ11時間に及ぶ大手術となりました」(同) 食道全摘でもビールはうまい 前出の近藤医師が補足する。 「ステージ0など、ごく初期の食道がんであれば、99%が内視鏡手術で腫瘍部を切除するだけで済み、社会復帰も容易です。しかし進行していれば、外科手術や放射線治療で対処するのが一般的となります」 中牟田氏は手術後、ICU(集中治療室)で2日間過ごし、一般病棟へ移って2週間後に退院した。 「体重は10キロ以上減り、いまも47キロ程度と、往時の52〜53キロには戻っていません。食欲はあるのに、食べても腹に落ちていかない感じで、食事は1日5回に分けて取るようにしています。実は医師から“ビールが一番入りませんよ”とくぎを刺され、大動脈弁狭窄症で心臓の手術を受けた経験がある(同じ海援隊の)武田鉄矢さんからも“手術明けの酒はまずいぞ”と聞かされていた。だから退院後、初めてビールに口をつけた時は、恐るおそるといった感じでしたが、飲んでみると“うまいじゃん”って感動した。食道がんになって、そんな小さな幸せをより実感できるようになりました」(中牟田氏) クリニックへ足を運んだのは「最近、酒を飲んでもまずい」と感じたのがきっかけの一つだったといい、1日2箱喫っていたたばこの味にも違和感を覚えることがあったと打ち明ける。 「いまとなって後悔するのは……」 東京大学医学部附属病院放射線科特任教授を務める「がん専門医」の中川恵一氏が言う。 「食道がんは圧倒的に男性に多く、年間約2万人以上が罹患しています。60代をピークに高齢者に多く見られるがんで、最大の原因がお酒とたばこです」 石橋について言えば、「20年前に禁煙したが、酒は最近まで嗜んでいた」(民放キー局関係者)というから、60代・男性・飲酒という三大リスク要因がピタリと当てはまる。 「お酒を飲むと、アルコールは体内でアセトアルデヒドという発がん性のある毒性物質に分解されますが、日本人はこのアセトアルデヒドを解毒する2型アセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH2)の働きが弱い人が多い。特にお酒を飲んで顔の赤くなる人が毎日3合飲むと、食道がんリスクは50倍に跳ね上がるというデータがあります」(中川氏) 22年8月に食道がんと診断された作家の神津カンナさん(66)も、タバコは喫わないが、お酒をよく飲んでいた一人だ。 「前日に亡くなった事務所社長の葬儀の準備に追われていた最中、すこし休憩して春雨サラダを食べようとしたのですが、喉に引っかかってどうにも嚥下(えんげ)できなかったのです。それで“おかしいな”と思って病院に行って検査したところ、翌日に食道がんだと判明しました。思い当たる節としては、量は多くありませんが、それまでビールやワインをほぼ休肝日なく飲んでいたことでしょうか。いまとなって後悔するのは、自由業の気楽さや忙しさにかまけ、がん検診などを全く受けていなかったことでした」(神津さん) 食べると“胸がいっぱい” 嚥下障害に関しては、以前にも何度か経験していたという神津さんだが、そのたびに「疲れてるから」や「昨日、飲み過ぎたかも」などと深く気に留めることはなかったと話す。 「手術を受けたのは診断から3カ月後の11月でした。その間、放射線治療を3回受けて腫瘍を小さくしました。担当医から“がんステージは3相当”と教えられましたが、さいわい転移もなく、胸部と腹部を開いて食道をほぼ全摘しました。その後、胃を引っ張り上げて食道に代用する処置を施し、手術に要した時間は7時間ほどでした」(神津さん) 2週間程度の入院生活を終えた後、大きく変化したのは食生活だった。 「食の好みは変わっていませんが、食事は1日10食に分けるなど、こまめに取るようになりました。胃をせり上げて食道にしているため、食べてもすぐ“胸がいっぱい”になるんです。心臓の拍動がダイレクトに“胃”へと伝わる感覚に最初は戸惑いました。外食することもなくなり、お酒はがんと宣告されてからピタリとやめた。不思議と“飲みたい”と思わなくなったんです。食習慣の変化と体力が落ちたことを除けば、手術前とさほど変わらない生活を送っています。石橋さんも術後は、自分が主治医になったつもりで自身の体と向き合って、心地いい生活スタイルを築いてほしい」(同) 原因の9割は酒やたばこなどの生活習慣 食道がんになる原因の約9割は酒やたばこをはじめとした生活習慣とされるが、残り1割を占めるのが逆流性食道炎だと、前出の近藤医師は話す。 「胃酸の逆流によって食道での炎症が長期間続くと、がんのリスクが高まることが分かっています。逆流性食道炎の罹患率は一般に人口の20%程度とされますが、実際に診療現場に身を置いていると、受診者の3〜4割が罹患していると感じます。私は新たな国民病だとの認識を持っています」 胃酸が逆流する理由は、肥満などで内臓脂肪が増え腹圧が上昇するケースのほか、加齢による筋力の低下で、食道と胃のつなぎ目に当たる筋肉が弱まることなどが挙げられる。 前出の中牟田氏も健診時、胃酸がこみ上げてくるような感覚があり、「逆流性食道炎を疑った」ことで胃カメラ検査をする流れになったという。 逆流性食道炎の患者の増加とともに、胃酸の分泌を抑える胃腸薬の販売・処方数も急増し、食道がんの予防効果への期待は高まるばかり。そんな中、過度の胃酸抑制剤の使用が胃がんの発症リスクを高めるとの研究データが登場し、注目されている。 胃酸分泌を抑える薬を服用すると…… 昨年2月、東京大学と朝日生命成人病研究所の研究グループが、胃酸分泌を抑える薬の一種を長期服用すると胃がんリスクが上昇するとの研究成果を発表したのだ。 「胃がんの主な原因はピロリ菌の慢性感染ですが、これまでは胃酸抑制剤を服用することで胃が除菌され、がんリスクも低下すると考えられてきた。ところが新たな研究データによれば、抑制剤の一種を長期にわたって服用すると、胃がんリスクが約2倍になる可能性があると指摘されたのです」(医療ジャーナリスト) 約20年で3度がんと診断 研究グループは国内患者1100万人分の診療データから、約5万4000人のピロリ菌除菌患者を抽出。他の抑制剤服用患者と胃がんの発症リスクを比較した。 「グループが調べたのは『カリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)』と呼ばれる抑制剤の一種です。このタイプの薬を長期間服用すると、胃に生息する細菌の種類が変化し、胃がんリスクを増大させるという。別の抑制剤『プロトンポンプ阻害薬(PPI)』の長期服用でも、胃がんリスクが上昇するとの先行研究が存在します。食道がんと胃がんのリスクをどうはかりにかけるべきか、専門家の間でも意見が分かれていると聞きます」(前出の医療ジャーナリスト) その食道・胃がんのどちらも経験しているのが、参院議員の鈴木宗男氏(77)だ。鈴木氏が“がん闘病”をこう振り返る。 「私はこれまで3回、がんと診断されました。最初は03年の胃がんで、この時は胃の3分の2を切除し、体重も72キロから62キロへと落ちました。その7年後、定期検診で今度は食道がんが見つかったのですが、ごく初期だったため、内視鏡手術でがん細胞を取り除くだけで済みました」 その約2カ月後、10年12月に鈴木氏は収監されるが、刑務所でも月1回、特別に一般病院での検査が許されていたという。 仮釈放を迎えたのは1年後の11年12月。そして19年に再び、食道内に腫瘍が確認されたが、この時も早期発見だったことから、内視鏡手術で事なきを得たそうだ。 「食道がんに関しては2回とも自覚症状はなく、医師からは胃を切除したことで食道に負担がかかった可能性を示唆されました。胃がんの時と違って、食道がんでは術後に大きな体調の変化もありませんでしたが、困ったのは“炭酸とアルコールが食道によくない。お酒もコーラもダメだ”と医師から言われたことでした。私はビールが大好きなものですから」 独自に考案したビールの飲み方 そこで鈴木氏は“体に優しい”ビールの飲み方を独自に考案。どうしてもビールが飲みたくなった時は、広げた新聞紙の上にコップを置き、1メートルほど上から缶を傾けてチョロチョロとコップにビールを注ぐのだ。 「こうすると炭酸が飛んで、口当たりがマイルドになり、ビールが非常に飲みやすくなるんです。女房は“そんなことまでしても飲みたいのか”とあきれていますが、むしろ食道がんになって気を付けるようになったのは、食べ物の方です。とにかく消化に良いものをゆっくりと時間をかけて食べるよう心がけています」 ただし「特に消化が良くない」として、医師から“厳禁”に指定されたものがあると明かす。 「生のイカとタコです。煮たり焼いたりすれば問題はないそうですが、刺身など生で食するのは危険だということでした。それもあって最近は野菜も生でなく、ゆでたブロッコリーやアスパラガスなどをよく食べるようになりました。3度のがん闘病を経て、食生活は昔よりずっと健康的になったと感じています」 「歌がうまくなった」 そんな先人としての経験を踏まえ、鈴木氏は石橋をこう鼓舞する。 「手術から2〜3年もすれば体も慣れてくるし、60歳を過ぎれば、がんの進行も遅くなります。私のように工夫次第でお酒を飲めるようにもなるし、芸能活動への復帰も十分可能。悲観や弱気こそが、一番の大敵です」 さらに前出・中牟田氏も、 「食道がんになって体力が落ち、呼吸法も変わりましたが、逆にそのおかげでうまく息を使って歌えるようになりました。がんと診断されたのを機にたばこもやめたので、声のトーンも上がった。石橋さんも術後に気付く“けがの功名”がきっとあるはずです」 と不安を払拭する言葉を送る。食道がんになっても変わらず活躍を続けるサバイバーたち。さて、石橋の復帰はいつになるか。 「週刊新潮」2025年4月17日号 掲載
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