「『不仲だ』『いじめか』といろいろ言われて」アイドルグループで自分以外全員が卒業の異例事態…一人残されたメンバーの決意とファンの感動行動

「1人になっちゃいました。別になろうと思ってなったわけではなく、今もメンバーには『まだ引き返せるよ。まだ大丈夫だよ』って言ってます」  アイドルグループ「アップアップガールズ(仮)」の青柳佑芽(23)は笑いながら現状を明かした。 【写真】自身は“大学6年生”。家族からは「一緒に辞めなよ」と言われたが…「辞めるのも嫌だなって」と笑う青柳佑芽  3月24日、アップアップガールズ(仮)は5月6日に東京・飛行船シアターで開催されるライブをもって5人のメンバー中4人が卒業すると発表。グループアイドルが1人を残していなくなるのだから、ただ事ではないが、この唯一残るメンバーが青柳だ。 「ニュースを見た人から『これは明らかに不仲だ』『いじめか?』『卒業する4人も絶対円満退社じゃない』とかいろいろ言われました。ファンは知っていると思うんですが、メンバー仲はいいんですよ。あと4人とも円満卒業です」 「メンバー仲はいいんですよ。4人とも円満卒業です」と語る(撮影・徳重龍徳)  アップアップガールズ(仮)は2011年に結成された。メンバーの卒業、加入を経て、現在は5人組グループとして活動している。今回卒業する4人と青柳は2020年12月に新規メンバーとして加入した同期だ。 自分以外卒業の衝撃  きっかけは昨年10月、事務所の社長による発言だった。 「10月に社長から『自分のこれからの事を改めて考えるといいよ』という言葉が投げかけられたんです。その瞬間にアイドルとは違う道を目指すという子がいたり、アイドルを続けることを迷っているメンバーもいたんです」  そして卒業発表の日の約2週間前、青柳は自分以外のメンバーがグループ卒業を決めていたことを知る。 「私が『いや、絶対やめない方がいいって』とは言えないぐらい、みんな次の夢がちゃんとしっかりしていて。『そのためには今、卒業するしかない』と言われたら、そうだよねと」  青柳自身もまた、卒業するかどうか迷っていた。 「やっぱり一人になるのって嫌じゃないですか。ただ私はアップアップガールズ(仮)で武道館に行くという夢を叶えないまま辞めるのも嫌だなと思って」  家族からもアイドルを続けることを反対された。「私以外のメンバーが辞めるかも」と話したところ「じゃあ、一緒に辞めなよ」と言われた。もともと家族は青柳がアイドルに加入する際も反対していた。しかも青柳は現在、“大学6年生”。家族としては大学を卒業して普通に就職してほしかったのだろう。  実際、青柳は1年ほど前には出版社のインターンにも参加していた。ただ、そこでの出会いが、青柳の気持ちをアイドルへと向かわせた。 「インターンの時に、社員の方で辞書オタクの方がいて『私の家には500冊辞書があります。この仕事をするには、たとえば私が辞書を世界一好きなよう、あなたも本を世界一好きになってください』と話していて。それを聞いて『じゃあ、私が世界一好きなのはアイドルだから、出版は向いてない』と思って」  4人が卒業すると聞き、改めて別の可能性を自分の中に求めた。だが、探しても、探しても、青柳の頭の中にはアイドル以外にやりたいことが出てこなかった。一方、同期5人で卒業し、アップアップガールズ(仮)の看板は今後の新しいメンバーに託す。それがファンも納得し、自分たちにとっても美しい形だと思った。 「一人残る」と告げた時のメンバーの反応は…  残るか辞めるかの迷いの中で、青柳はすでにアップアップガールズ(仮)を辞めていた元メンバーや、他のアイドルグループを卒業したメンバーにも相談した。全員が「アイドルが向いてるから続けな」と背中を押した。  青柳はアイドルを続けることを決心した。一人でも残留すると告げた際、4人のメンバーはどんな反応だったのだろうか? 「『だと思った』って言われました(笑)。『なんとなく、そんな気がしてたよ』って」  決断のとき。青柳は事務所の社長と面談した際に、手書きの提案書を渡した。 「今後こうしていくって約束してくれるなら残ります」  より気持ちが伝わるようにとルーズリーフに手書きで書いた提案書には、これまで事務所側から制限されていた「入場特典」の実施や、セットリスト・演出会議への参加、SNS運用の改善などが記されていた。  社長は提案書を1つずつ確認し、「これはできる」「これは今は無理だけど将来的に頑張る」と約束してくれた。青柳はその言葉に安心し「じゃあ一緒に頑張らせてください」とグループに残ると決意した。 「今、グループのTikTokで『メンバー全員いなくなりました』という動画を載せているんですけど結構反響があります。アイドルの友達からも『TikTok見たんだけど、大丈夫?』って連絡が来ます」 「本音を言えばリーダーは…」  一人でグループに残留することになった青柳だが、次のメンバーはまだ見えていない。  事務所は、新たな研修生プロジェクト「ネオアゲ(UP UP NEW AGE)」を発表した。この中のメンバーから新グループ結成、さらに他のグループへの配属が行われる。アップアップガールズ(仮)の新メンバーはここからも入る予定だ。  仮に新メンバーが入ると、先輩である青柳は必然的にリーダーとならざるを得ない。しかし「本音をいえばリーダーにはなりたくないんです。人生であんまり先輩になったことがなくて。先輩になっても頼りない、なんかヘラヘラしてるだけの人なんで」と苦笑いする。  ただアップアップガールズ(仮)の元メンバーで、現在はダンスやステージングの指導をしている古川小夏からは「面白くなると思うよ。想像できるよ。佑芽が1人で先輩やってるところ」と太鼓判を押された。  新メンバーの希望を聞くと、青柳は「経験者はほしい」と言いつつ、「年齢とかビジュアルとかスキルとかよりも、私は一緒に夢見てくれる方がいいですね。無謀な夢見れるタイプの子が入ってきてほしい」と話す。 ファン離れの心配…過去には誹謗中傷も  メンバーのほとんどが卒業するとなると気になるのがファン離れだ。  青柳はもともとは重度のアイドルオタク。かつてフジテレビ系「アウト×デラックス」に、アイドルをやりながら、稼いだお金をすべてアイドルのために使ってしまう“究極のアイドルオタク”と紹介されたこともある。ファン視点も持つ青柳だからこそ、新旧メンバーの交代に対する厳しい視線も、痛いほど理解している。  実は青柳が加入した2020年もアップアップガールズ(仮)は現在とよく似た状況だった。5人中4人が卒業し、オリジナルメンバーである関根梓だけが残留。メンバーはほぼ総入れ替えとなったが、そこにファンからの批判が集中した。 「加入して最初の2年ぐらいは批判、誹謗中傷が本当にひどかったんです。『アップアップって解散したんでしょう』とか『今のメンバーを見たけど、誰も知らないわ』と言われたり。以前のファンの方から『俺たちの青春の曲をお前らが勝手に歌うなよ』とか言われたりして」  そうした声から守ってくれたのがオリジナルメンバーの関根だった。 「今のメンバーも応援してね」「元は誰押し? じゃあこの子がおすすめだよ」と、ファンに呼びかけ新メンバーをつなぐ架け橋になってくれたという。 「私はアイドルオタクだから、ファンの気持ちもわかるんですよ。『推しのセンター曲を違うやつがセンターで歌うな』とかたぶん思っちゃうので。その気持ちはわかるんですけど、でも私たちと同じ思いを後輩にしてほしくなくて。私は関根さんの背中を見て育ったので、同じことしてあげようって思ってます」 卒業発表で涙の中…「私のファンはケロッと(笑)」  青柳によれば卒業発表後のファンの反応も印象的だった。 「発表の後にインストアイベントがあったんですが、公開リハーサルで出た時点でファンがもう泣いているんですよ。本番になって『卒業発表させていただきました。これからも頑張ります』と言った後に、去年出したこの5人で頑張ろうねみたいな決意表明の曲をやったら、ファンが泣いて、つられてメンバーも泣いてました。ただ私や私のファンはケロッとしていて(笑)」 「卒業発表したから他のメンバーのファンがイベントに来る頻度が高くなるのはわかるじゃないですか。でも、私のファンも無理して来ているんですよ。『青柳を孤独にさせちゃいけない』って。辞めるメンバーのファンも『今ぐらいの頻度では無理だけど、推しが辞めた後も行ける時はライブに行くからね』と言ってくれて。優しいなって思います」  青柳たちがグループに加入した時、批判もあった一方で「今もグループの歌を歌い継いでくれてありがとう」「フロアから『アッパーカット!』(注:グループの代表曲)が聞こえるとぶち上がるから嬉しい」と言ってくれるファンがいた。それが青柳の原動力になっている。 「モーニング娘。さんは世代交代を何回もしているのに、ずっと続いていてすごいなって感じています。私もアップアップガールズ(仮)には100年続いてほしいなと思っているんです。さすがに100年後に私はアイドルをやっていないと思うんですけど、でも120歳まで生きるつもりなんで。100年後、私がおばあちゃんになった時にまだテレビから『アッパーカット!』が聞こえているといいなって」  幸せな120歳を迎えるためにも、まずは2025年を全力で走るつもりだ。 徳重龍徳(とくしげ・たつのり) ライター。グラビア評論家。ウェブメディアウォッチャー。大学卒業後、東京スポーツ新聞社に入社。記者として年間100日以上グラビアアイドルを取材。2016年にウェブメディアに移籍し、著名人のインタビューを担当した。その後、テレビ局のオウンドメディア編集長を経て、現在はフリーライターとして雑誌、ウェブで記事を執筆している。著書に日本初のグラビアガイドブック「一度は見たい! アイドル&グラビア名作写真集ガイド」(玄光社)。noteでマガジンを連載中 X:tatsunoritoku デイリー新潮編集部

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