何と登場から27年!プジョー206は今買って乗ってもよい小型車の傑作【第5水曜日の男、遠藤イヅルの令和的ヤングタイマー列伝:第3回】

今なお新鮮、高い完成度を誇るデザイン こんにちは。クルマを主体としたイラストレーター兼ライターの遠藤イヅルです。年に数回だけやってくる第5水曜日に、今見直したいヤングタイマー世代のクルマについて記す当連載。第3回は、『プジョー206』をお送りします。 【画像】日本でも大ヒット!プジョー206 全12枚 えっ、プジョー206って最近のクルマだよね? と思いますよね。しかし、プジョー206の登場は1998年。今からなんと27年も前のことなのです。驚き! 引き締まったデザインが魅力的なプジョー206。デザインは自社。長年パートナーを組んでいたピニンファリーナの手を離れたが、完成度はとても高い。 ステランティス つまり、この連載の第1回でお送りしたBMW 3シリーズ(E46)、そして第2回のアルファ・ロメオ 155と同じく、「そんなに古いの?」、「気がついたら登場からすっかり時間が経っていた!」と気づかされるクルマなのです。 閑話休題。末尾『6』世代のプジョーは、106、206、306、406がいずれも1990年代に登場しています。その最後を飾った206は、Bセグメントのコンパクトハッチ、205の後継車として生まれました。 プジョー=スポーティという図式 205登場前夜までのプジョーといえば、404、504、505など、地味、寡黙ながら手に馴染む道具のような、堅実な後輪駆動セダンを得意としていました。しかし205は、ピニンファリーナが関与したシンプルかつ美しいデザイン、高性能モデルGTIの存在などフレッシュな印象で登場。現在に至る、『プジョー=スポーティ』という図式を作り上げました。 205に比べると206の車体全体は丸く、雰囲気を大きく変えていました。口のようなバンパーやプジョーのアイデンティティであるつり目を強調したフロントマスクも特徴です。 3ドアのほか5ドア車でも太いCピラーを持ち、205の雰囲気を残しています。短いオーバーハング、コンパクトな車体も相まって引き締まった印象が強く、このあと登場する207や208に比べても、今なおデザインは新鮮で、その輝きは色あせていません。改めて言いますが27年前の登場なんて、信じられないですよね。 ワイドバリエーションと価格で日本でも大ヒット プジョー206といえば、デザインの良さ、明快なキャラクター、爽快な運転フィーリングなどから、日本でも1999年の導入以降大ヒットを記録しました。 かくいう自分も、2000年に206を新車で購入したことがあるのですが、当時あまりにも206が売れて在庫がなく、展示車を買ったほどです。しかも値引きなし(なんという強気!)。206で街を走っていると、多くの人が振り返るほどの人気だったのです。 206CCも、日本では人気車種。CCはクーペカブリオレの略で、電動開閉式のメタルルーフを備えていた。 ステランティス 手に入れやすい価格も、日本での206人気を支えました。発売開始時、1.4リッターSOHCエンジンを積む廉価モデル『XT』は、3ドア、MT車なら165万円、5ドア、AT車でも175万円というリーズナブルさでした。MT車が好評だった306と同じくMTを設定したこともトピックです。 バリエーションも多く、ハッチバックのほか『SW』と呼ばれるコンパクトなステーションワゴン、メタルルーフを電動格納する『CC』と称するクーペカブリオレも用意されました。 137psをマークする2リッターDOHCエンジンを載せる『S16』や、当時206が活躍していたWRCのイメージを投影した『RC』、WRC参戦用ホモロゲモデルとして限定発売された『GT』など、高性能モデルも抜かりなく販売されていました。シックな色合いの『ローラン・ギャロス』も印象に残ります。 軽快、爽快な乗り味 プジョー205で構築されたスポーティ路線を継承した206の乗り味は、実に軽快。ちょっと硬い足まわりは、期待されるフランス車の乗り味とは異なりますが、そのぶんステアリングは路面と直結しているかのようなダイレクト感があり、シャープなハンドリングでワインディングはお手の物でした。 全長3.8mというコンパクトさは都市部での運転に大きなアドバンテージをもたらし、郊外のみならずあらゆる場面で運転の楽しさを与えてくれたのです。それはエントリーモデルでも同じでした。最高出力75psしかないの? と思うほど、キビキビと爽快に走るのです。 画像は英国仕様だが、日本でもほぼ同様の姿でエントリーグレード『XT』が販売された。 ステランティス 欧州製コンパクトカーの常で直進安定性は優れており、長距離移動も得意科目。シートは従来のプジョーよりは薄めで沈まないタイプですが、座り心地も良好です。後席まわりもボディサイズを考えると広く取られています。 ダッシュボードはいささかプラスチッキーですが、プレミアム化が進み内装が立派になった昨今のコンパクトカーを見慣れると、むしろ「欧州の大衆車なのでこれで十分」と思うのです。 総額100万円しない個体がゴロゴロ この連載は書いている本人が「いいなあ、欲しいなあ」と思っちゃうんですが、プジョー206もまた然り(笑)。発売初年1999年、販売終了が2007年なので十分に古いモデルなのですが、その頃のフランス車はトラブルの確率も大幅に減り(ないとは言い切れませんが、205などの『05世代』よりは安心できる)、新鮮なデザインを保つ206は、2025年の今改めて買って乗っても十分にアシになるでしょう。 しかし、いくら古く見えないとはいえ時間の経過は残酷。日本で累計5万台も販売されたという206も、大手中古車サイトではCCやRCなどの『キャラが立った』モデルを中心に15台ほどしか掲載がありません(執筆時)。 全長わずか4030mm! 今こそコンパクトなステーションワゴンとして見直したいプジョー206SW。デザインも秀逸だ。 ステランティス とはいえ、程度がよく低走行の個体はまだあり、しかも総額100万円しない個体がゴロゴロしています。古いクルマ、古めのクルマは高い! とお嘆きのアナタ(とワタシ・笑)、206という選択は、案外賢いクルマ選びなのかもしれません。 なお206は欧州のみならず南米、アジアなど世界中で販売され、エリアによってはセダンもありました。2012年までの生産台数はなんと800万台を超え、実はプジョーで一番売れたクルマだったりします。世界各国で受け入れられた傑作車といっても過言ではないでしょう。 そして次回の『第5水曜日の男』は7月30日公開予定です。また「そういえばもう、そんなに古いのか」ってびっくりするようなクルマを取り上げたいと思います。どうぞご期待ください。

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