神話の里を走る「高千穂あまてらす鉄道」 初の新卒社員 宮崎の廃線線路を観光に活用

 宮崎県高千穂町で、廃線となった鉄道の線路を観光に活用している「高千穂あまてらす鉄道」。今月、設立以来初となる18歳の新卒社員が入社した。 ■絶景を走る“あま鉄”  宮崎県の人気観光地の一つ、国の名勝・天然記念物に指定されている高千穂峡。シンボルとなっている真名井の滝をはじめ、柱状節理が形作る独特の渓谷美で知られている。 ドイツからの観光客 「山を見るのが好きなので、ここで自然にかえり、触れ合って、どんな風景が待ち受けているのか楽しんでいます」  季節や時間帯によって、さまざまな表情を見せてくれる高千穂。その観光地で今、注目されているのが、廃線となった旧高千穂鉄道の線路を活用し、観光用の車両を走らせている「高千穂あまてらす鉄道」通称“あま鉄”だ。 運転士 「グランド・スーパーカート発車いたしま〜す」  あま鉄は鉄道会社ではなく「遊具会社」で、2両編成・60人乗りのオリジナル車両を走らせている。  車両は高千穂駅から「東洋一の眺望」といわれた高さ105メートルにある高千穂鉄橋までのおよそ2.5キロメートルを往復30分で走り、景色を堪能できるというものだ。  トンネルにさしかかると、社員手作りのイルミネーションが天井を彩り、トンネル内も楽しませてくれる。  一番の見どころ高千穂鉄橋に到着すると、長さ352メートル、高さ105メートルの橋の上をゆっくりと進んでいく。 運転士 「高い所が苦手な方はしばらくの間“がまん”して下さい」 ■赤字慢性化、暴風雨被害で経営断念も…  ここで、運転士からのアナウンスがあった。実は…。 運転士 「私、今年4月から新入社員として入社しました萱野(かやの)と申します。まだまだ、運転技術やアナウンスなど慣れないところもございますが、3カ月後くらいには、立派な運転士として活躍していると思うので、またすぐの機会にもご乗車よろしくお願いします。ありがとうございます」  今月1日、あま鉄に2008年の開業以来初となる新卒社員として入社した、萱野瑛来さん(18)だ。 萱野さん 「観光客の皆様に、高千穂の魅力をたくさん伝えていけたら良いなと思うので、頑張ります。よろしくお願いします」  この春に地元・高千穂高校を卒業した萱野さん。彼はある熱い思いがあって、あま鉄に入社した。  あま鉄が利用しているこの鉄道路線は1972年に旧国鉄が延岡—高千穂間のおよそ50キロメートルを高千穂線として開通。87年の国鉄民営化を経て、2年後に第三セクター高千穂鉄道として再スタートしてからは、通勤通学をはじめとする地域の足として人々に愛されてきた。  しかし、毎年5000万円以上の赤字が慢性化してきたことに加え、廃線の決定打となる出来事が起こった。2005年9月の台風14号だ。河川の増水によって水没。鉄橋は崩れ、線路が折れ曲がるなどの被害も出た。鉄道を再開させようと試みていたが、2008年に廃線を余儀なくされた。  あま鉄の専務を務めるのは、高千穂鉄道で運転士として働いていた齊藤拓由さんだ。 高千穂あまてらす鉄道 齊藤専務 「線路を守っていきたい。本当は鉄道会社をしたいが、今の状況では鉄道会社はできない。鉄道、鉄道という前に、お客様を集めないことには、維持管理ができないので今(遊具会社)運営している」  駅舎や一部の路線を維持・管理していくため、あま鉄は観光施設として運営している。 ■貴重な展示品 運転体験も  そんなあま鉄に新入社員として入社した萱野さん。入社を決めたのは、高校2年生の時だったという。 萱野さん 「学校の『地域探求』という授業で、あまてらす鉄道でアナウンスをする企画で、その時にいただいたお客様からの温かい拍手がとてもやりがいを感じたので、この高千穂あまてらす鉄道を選びました」  そして、熱い夢も語ってくれた。 萱野さん 「この高千穂から延岡まで列車を運転してみたい。復活させたいという思いが強いです」  今、観光客に人気となっているあま鉄は、高千穂鉄道の歴史を振り返る展示品の数々を所蔵する資料館も設けている。  また、旧高千穂鉄道時代に使用していたディーゼルカーも展示されているが、なんと運転体験指導員のもと、本物の車両の運転体験ができるのだ。料金は1人2万円から。あま鉄はこうした体験なども合わせて行うことで、観光客を呼び込んでいる。 齊藤専務 「私たちの考えとしては“あま鉄”だけじゃなくて、お客様がこの地域にお金を落としていただく。この地域が潤ってもらえればと、私たちは思っています」  あま鉄の近くで営業する飲食店の代表はこう話す。 カフェ TAKACHIHO-BASE 谷川祐一代表 「今までは高千穂峡一極集中、あとは神社とかに少しお客様が行くというのだったのが、子ども連れで楽しめる場所というのがなかなかなかった。あまてらす鉄道に期待するものが非常に高い」  そんな期待を背負ったあま鉄。最後に、新入社員の萱野さんの希望は? 萱野さん 「新入社員が僕が初めてだって知らなかったので、びっくりしました」 「(Q.後輩は持ちたい?)後輩ほしいです。将来的に」 ■観光客の滞在時間アップ 地域の活性化に  廃線を観光資源とした高千穂あまてらす鉄道は、地域の活性化にもつながっている。  高千穂あまてらす鉄道の観光用カートは現在、高千穂駅から高千穂鉄橋の2.5キロを往復しているが、齊藤専務によると、隣町の日之影町にある旧深角駅まで区間を伸ばすため自治体と協議を進めているという。実現すれば片道6キロになる。  そんなあま鉄だが、エンジンカートを初めて導入した2010年度の乗客は3000人ほどだったのが、グランド・スーパーカートを導入した17年度には4万人。そして昨年度は13万3000人を超え、過去最高を記録。そのうち外国人観光客が3割を占めているということだ。  このあま鉄について、高千穂町観光協会の有藤さんは、「高千穂町のメインの産業は観光で、高千穂峡や神社などの観光名所にあま鉄が加わり、あま鉄を目的に来る観光客もいる。また、滞在時間が延びることで、食事や宿泊する人も増える傾向にある」と地域の活性化にもつながっていると話している。  こうした廃線を活用した観光資源は他にもある。それが、国の登録有形文化財に指定されている「愛岐トンネル群」だ。  1900年=明治33年に開通した愛知県と岐阜県にまたがる旧国鉄中央線の廃線路で、愛知側にある4基のトンネルを含む1.7キロを春と秋に期間限定で一般公開している。春は庄内川渓谷の新緑を感じながら、秋は紅葉スポットとして散策を楽しめるという。今年の春は、ゴールデンウィークの来月2日から6日まで公開される。(※雨天中止)  愛岐トンネル群保存再生委員会・村上真善理事長に番組で話を聞いたところ、「期間限定での公開を始めた2008年から、これまで40万人近くが訪れ、観光客にアンケートをとったところ、36都道府県14カ国から訪れていることが分かった。全国的にみても明治からあるトンネル群は貴重で、観光資源としての価値も非常にある」といい、「もっと多くの人に知ってもらいたい」と話している。 (「大下容子ワイド!スクランブル」2025年4月25日放送分より)

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