【前後編の後編/前編を読む】妻は自宅で僕はプレハブ小屋生活…63歳夫「こじれた家族」の原点 姑の仏前に母が供えた悪意あるモノ 岸本博正さん(63歳・仮名=以下同)は、都内のマンションでひとり暮らしをしている。家族が暮らす郊外の自宅はあるが、居場所は敷地内のプレハブ小屋だけだという。不仲な両親に育てられ、大学生のときに離婚。幼少時には母の不倫現場と思しき場面にも遭遇した。恋愛面では、大学生のときにアルバイト先の人妻と関係を持ち、その夫が乗り込んできて修羅場になったこともある。 *** 【写真を見る】「夫が19歳女子大生と外泊報道」で離婚した女優、離婚の際「僕の財産は全部捧げる」と財産贈与した歌手など【「熟年離婚」した芸能人11人】 就職時はバブル前夜で、彼は希望通りの企業に入社した。その後、バブルがはじけるまではかなりの給料とボーナスを手にして、「人生で初めて浮かれた」そうだ。 当時の発言に、妻は目に涙を浮かべて大反論したものの… 「ただ、しょせんは会社員ですし、堅実な先輩たちは『そのうちヤバいことになるぞ』と話していました。あっけなくバブルがはじけて、その後、僕の勤務先もひどいことになった」 合併にともなうリストラ、さらなる合併、吸収などが繰り返された。そのたびに辞めていく同僚や先輩も数多くいた。辞めるも地獄、残るも地獄だと誰もがつぶやいた。 「僕は勇気がなくてやめ時を見失ったんです。残って会社が変わっていくのを見つめていた。独身だったし、自分ひとりが食べていければいい。地道に働こうと思っていました」 だが組織はときどき思い切ったことをする。いろいろな歯車がうまくかみ合って、彼が属する営業部が大きな業績を上げたことがあった。たまたまそのチームを任されていたのが当時、39歳だった博正さん。その直後に新たな合併があり、相手先と混合でできた営業部の部長に押し上げられてしまったのだ。役付も若いほうがいいという新たな社風に則っていた。 「わけがわからなかったけど、こうなったらやるしかない。リストラされた元社員に脅されたりしたこともありましたが、僕は僕の役目を粛々とこなしました。そんな僕を見ていてくれたのが、後輩の梨紗子だった。ひとりで残業していると、『夕飯まだでしょう』とお弁当を差し入れしてくれたりもした。手伝えることがあればと、一緒に残業してくれることも多々ありました。そういう女性を好きになるのは当然ですよね」 生まれて初めてのときめき 彼女は仕事もできたし、アイデアももっていた。仕事を効率化するためにどうしたらいいか、部署の〜〜さんはこういうことが得意だからやらせてみたらどうだろうとか。部内の情報を逐一上げてくれるので、彼は適材適所を考えることができた。 だが好きにはなっても恋愛に発展することには躊躇した。職場で恋愛すると仕事がやりにくくなると思い込んでいたのだ。だが恋に発展するかどうかはわからない。そもそも梨紗子さんが自分を好きになってくれる確証もない。 3年たって少しずつ成果が上がってきたころ、博正さんは梨紗子さんを食事に誘った。残業の合間のササッと飯ではなく、他の部下が一緒でもなく、たったふたりで食事に行くのは初めてだった。 「少しお酒も入ってリラックスしてきたころ、なんとなくお互いの過去を話したんですよ。彼女は僕より3歳年下なんだけど、20代で一度結婚経験があるそう。でも3年もたたずに義母との折り合いが悪いことが夫婦関係にも影響して離婚になった、と。『最後に、おかあさんと私、どっちが大事なのよと聞いたら、夫が嫁の代わりはいるけど母親の代わりはいないって言ったんです。それを聞いて、なあるほど、それもそうよねと離婚を決めました』と笑いながら言うんです。それで、『こんな質問、失礼だと思うけどつきあっている人はいないの?』と聞いてみたんです。すると彼女、少し目を潤ませながら『片思いの人ならいます』と。なんだ、いるのかと思ったけど、彼女なら片思いじゃなくて、つきあうことができるはず。心から励ますつもりで、告白してみればいいと言ったら、『今、告白していいですか』って。え? オレ? 心臓バクバクでした。生まれて初めてときめきました」 「できちゃった」ものの、結婚に戸惑う彼女 思いがけず、彼女から告白されてつきあうようになった。会社ではただの上司と部下、そしてふたりきりになると彼女は思いきり甘えてくるかわいい女性であり、ときには体を案じてくれる母のような包容力もあった。 「僕は当時42歳、彼女は39歳でした。ふたりともどこか気が緩んでいたというか、甘く見ていたというか……。つきあい始めてすぐに彼女が妊娠したんです。『私は子どもができにくい体質のはずだったんだけど』と彼女は戸惑っていた。どうしようと言われたら、結婚しようと言うしかないですよね。自分が親になる人生を想定していなかったから、ちょっと面食らいましたが、それもまた人生。できたのなら喜んで受け入れようと覚悟を決めました」 ところが産んでほしい、結婚しようと言うと彼女が躊躇した。彼女もまた、母親になることを想定していなかったのだ。 「アラフォーになって子育てに挑戦というのもおもしろいんじゃないかと話し合いました。彼女の体が最優先だけど、妊娠を維持できるなら出産まで一緒にがんばろうよと」 そこまで言って、彼はふうっと大きなため息をついた。やっぱり結婚する時点で何かが間違っていたんだろうか、あのとき僕は確実に彼女を愛していたんだけどと、ぶつぶつとつぶやいている。 「人生、いい年になると振り返ることが多すぎますよね。それだけ年とったということなんだろうけど」 今の時代、アラ還なんて若いほうですよと言いかけたが、私自身も同世代がゆえにまさに「老い」を実感中で上滑りの慰めの言葉は出てこない。 梨紗子さんの母が手伝いに来てくれたものの… ともあれ、ふたりは結婚した。結婚と同時に、彼は実家を出て都内に中古マンションを買った。実家を売り払うことも考えたが、当時はどうしても売れそうになかったので、たまに風を入れに帰るしかなかった。 彼女は会社とも話し合った結果、同じ部署だと仕事がしづらいと異動を申し出た。もともと広報関係への異動を希望していたのだが、会社はなぜかその願いをかなえてくれたという。 「広報の仕事は楽しかったようです。以前より生き生きとしていた。家でつわりがひどくても、仕事をすると忘れてしまうと彼女も笑っていました。あまりに元気で、出産の2週間ほど前まで仕事をし、産後2ヶ月で仕事復帰していた。彼女のおかあさんは地方で看護師をしていた人で、ちょうど退職したばかりだから手伝いに行くと言ってくれたんです」 梨紗子さんの母は住み込んで主婦としてがんばってくれた。彼も極力、早く帰宅して息子のめんどうを見た。むしろいちばん世話を焼かなかったのは妻かもしれないと彼は苦笑した。妻は復帰した仕事に没頭していたのだ。 ところが妻と母親は不仲だった。もともと折り合いが悪かったらしいが、遠慮なくお互いを傷つけるために言葉をぶつけあっているようにさえ見えた。怖くて家に入れないこともあったと博正さんは言う。半年あまりで母親は「やってられない」と帰ってしまった。梨紗子さんは「これですっきりしたわ」と言い放った。実の母娘の壮絶なやりとりを見せられていた彼も内心、ホッとした。 「子育てに専念してもらえたら」 「それからは保育園と地域ママ、ベビーシッターを駆使してがんばりました。ただある日、ふと思ったんですよ。どうしてこれほどまでに忙しい思いをしなければいけないのかなって。梨紗子が仕事を好きなのはわかる。でも僕のほうが収入は多い。ここはいったん子育てに専念してもらえたら、どんなにお互いに楽だろうと。ある日、思い切って言ってみました。すると梨紗子は目に涙をためて『私から仕事を奪うの? 仕事は収入だけが評価されるの?』と大反論してきた。ただ、このままじゃふたりとも疲れきってしまう。誰か助けてくれる人が必要だろうと言うと、じゃあ、毎日、シッターさんに来てもらうと。でも下手すると金額がとんでもないことになる。すると梨紗子は『わかった。もういい。離婚して』と言い出した。そこからけっこう揉めたんですよ」 だが最終的には梨紗子さんが倒れる事態となり、さすがに博正さんの言うことを聞くしかないと判断したようだ。それからは、博正さんが妻の機嫌を損ねないように気を遣いつつ、なんとか「普通の家庭」を維持してきた。 梨紗子さんは子どもが小学校高学年になったころ、またパートで働き始めたが、もちろん彼は反対しなかった。 「僕はその間、ずっとまじめに仕事をしてきました。もちろん、たまに同僚と飲みに行くことはあったけど、常に梨紗子にきちんと連絡してきたし、妻に知られてまずいことは何もしていない。むしろ妻が機嫌良く過ごせるように。息子が小さいころから週末は僕が見ていました。仕事が多忙でなければ、早めに帰って夕飯を作ったりもしていた」 息子が元気で大きくなっているのは梨紗子のおかげだと言葉にして感謝もしてきた。梨紗子さんも仕事を辞めた当初はつらそうだったが、その後は子育てに専念、家事万端を完璧にこなし、彼にも優しく接してくれてきた。 2年前、息子が合格した大学は、自宅より博正さんの実家からのほうが近かった。息子はそこで暮らしたいという。だがとにかく古い家だからリフォームしなければ住めない。 「僕も定年になったら、実家で暮らしたいと思っていた。郊外だから緑も多くて住みやすいところなんですよ。妻も了解してくれたので半年かけてリフォームしました。都内のマンションは売ってもよかったんですが、僕が遅くなったときに泊まってもいいなと思ってそのまま使っていた。いつしか僕は平日は都内にいて、妻と息子が郊外で暮らすようになっていったんです」 「ひとり暮らし」のマンションに、同級生で集まって ひとりの生活は、意外なほど快適だった。何より妻に気を遣わずにすむ。早く帰ってひとりで1杯やりながらだらしないかっこうで寝そべってテレビを見ても、文句を言われない。結婚生活で自分がいかに窮屈な思いをしてきたか、初めて気づいたという。 「そんなとき、学生時代の友人から連絡があって……。仲よくしていたグループのひとりが亡くなったと。久しぶりにお通夜でみんなに会いました。オレたち、そういう年齢なんだなあとみんな意気消沈しましたね。居酒屋で精進落としをしたあと、たまたまうちが近かったから、よかったらうちで飲まないかということになった」 男性ふたりと女性ふたりがやってきた。途中でコンビニに寄ってつまみと酒を買い、博正さんの自宅、マンションに5人が集まって、しみじみと話しながら飲んだ。終電がなくなるころ4人は帰っていったのだが、見送ってリビングに戻ったころ、玄関チャイムが鳴った。 「藍子という友人が、ごめん、携帯を忘れたと言って。一緒に探したけどなかった。すると彼女はバッグの中をごそごそ探して『悪い、あった』と。笑いましたね。学生時代からそそっかしいヤツだったけど、変わらないなあと。どうせならもう少し飲んでいけばと誘うと、『そうね、別に私、帰らなくてもいい立場だし』と。熟年離婚したばかりなんだそうです。みんなの前ではそんなこと言わなかったけど、実は夫の定年を機に離婚したって」 水割りを作って彼女に渡すとき、ふと手が触れた。思わず見つめ合った。そういえば学生時代、一度だけ藍子さんと夜をともにしたことがあると彼は思い出した。 「思い出してたでしょと藍子が笑ったんです。思わず手をぎゅっと握りしめました。考えたら、うちは10年以上レスだなあとつい言ってしまった。夫婦なんてそんなものでしょと藍子が言って。なんだか急に劣情にかられたような懐かしい気分がわき起こってきたんですが、彼女の顔を見たらそんな気はなさそうで。あきらめようかと思ったら、『ねえ、あのときの続きをする? こんなおばあちゃんでもよければ』って。そんなこと言うなよ、藍子は今もきれいだよと言いました。本当にきれいだった」 号泣から修羅場へ 抱き合うと人肌のぬくもりが流れ込んできた。実は自分の結婚生活、つまり梨紗子さんとの暮らしが決して満たされていなかったことを実感していた。考えてみたら最近は会話もほとんどない。妻の不機嫌だけを案じながら日々を過ごしていた。 「でも結局、そのとき僕は役に立たなくて……。藍子に『大丈夫、気にしないで。久しぶりだとそうなるよね』と抱きしめられてぽろぽろ涙が出てしまって。一気に気が弱くなっていたというか。そのとき、ガチャガチャと音がして、なんと梨紗子が入ってきたんです」 リビングでほぼ全裸で抱き合っていたから、いきなり入ってこられたら逃げ場はない。梨紗子さんの絶叫が部屋にこだまし、そのまま妻は出ていった。 「『大丈夫……じゃないよね。連絡してね』と言って藍子は帰っていった。僕はどうしようもないので翌日、郊外の家に帰りました。妻は一言も口をきかない。申し開きをさせてほしいと言ったけど聞いてもらえなかった。その翌日も帰ったんですが、なんと僕の荷物が庭のプレハブ小屋に入れられていて」 思わずクスッと笑ってしまった。彼もしかたなさそうに笑いながら、「僕名義の家だし、リフォームもしてるんですよ。それなのにあんな汚い、今にも潰れそうなプレハブで暮らせというのか、とさすがに腹が立って。でも妻には何も言えなかった」 プレハブ小屋の中には、離婚届も置いてあった。離婚する気はないと妻にLINEを送ったが返事はなかった。息子が顔をのぞかせ、「おとうさん、大丈夫?」と気遣ってくれた。 「おかあさんは怒ってるよ。でも僕は何か事情があるんじゃないかなと言っておいたからって。よくできた息子ですよ。よくできた息子を育てたのは梨紗子だということもわかってますけど」 それ以来、彼は基本的には都内のマンションで暮らし、ときどきプレハブ小屋に帰っている。話し合おうと連絡しても、梨紗子さんからは返信がない。 「つい最近、梨紗子からLINEがあって『私から仕事を奪ったあなたが、好き勝手に暮らしている。私の人生、何だったのかと思うと虚しくてどうしようもない』と。そんな思いをさせたのは僕なんですよね。妻が心から離婚を望んでいるなら、それをかなえてやるのが僕の贖罪なのかもしれないなと思い始めたところです」 結婚してからたった一度の過ちの現場に、なぜ妻がやってきたのか、彼は今も不思議でたまらないという。それまで妻は都内のマンションに来たことなどなかったのに。間が悪いというのはそういうことなのだろう。 博正さんは2年後に定年を迎える。そのときは答えが出ているでしょうねと、彼は虚ろな表情で目を泳がせた。 *** 積もらせていた妻の長年の恨みが、博正さんの浮気によって一気に噴出してしまった形だ。それがたった一度の過ちだったとしても、なかなか妻を納得させることは難しそうだ。思えば「家族」に振り回されてきた人生でもある。その詳細は【記事前編】で詳しく紹介している。 亀山早苗(かめやま・さなえ) フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。 デイリー新潮編集部
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