全日本柔道選手権は体重制限なし 無差別級の戦い…小柄な選手たちはなぜ挑む?

 日本の柔道界はこの時期、最も盛り上がります。なぜならば女子、男子の全日本選手権が行われるからです。この大会は、オリンピックとはルールが大きく異なります。柔道は、体重別に男女とも7階級あります。しかし、この大会においては体重制限がなく、小さい選手が大きい選手とハンデなしで戦います。なぜ、こういう大会に挑んでいくのか。その思いを松岡修造さんが聞いてきました。 【画像】全日本柔道選手権に挑む 角田夏実・阿部一二三・永山竜樹に聞く思い ■角田夏実 最軽量級ながらベスト16進出  「柔よく剛を制す」の精神で行われる柔道。そもそも“体重制”という概念・発想はありませんでした。それが柔道のグローバル化に伴い、1964年東京オリンピックから階級ができ、今ではそれが当たり前となっています。  世界ではオリンピックからも無差別級がなくなるなか、日本では最も権威ある大会(全日本柔道選手権)として「柔よく剛を制す」を体現しています。  なぜ小柄な選手たちは、圧倒的不利にもかかわらず、体重無差別の戦いに挑むのでしょうか?  今月20日、女子の無差別級に挑んだ最軽量48キロ級金メダリスト・角田夏実選手(32)は…。 松岡さん 「何が魅力なんですか『無差別』っていうのは?」角田選手 「『小さいほうが弱い』っていうのは見ていて分かるので、そのなかでどうくぐり抜けていくかの勝負の面白さは軽量級からしたらある。『柔よく剛を制す』っていうのはあります」松岡さん 「柔らかい?」角田選手 「私は逆で、私の柔道は『剛道』って言われるぐらいパワー派なんですよ。その『剛道』が無差別級だと力同士では敵わないので、そのなかで自分は柔道ができるのか、どこまでやれるか、食らいつけるか。自分を強くできるのかなと」  1回戦の相手は90キロ。体重差はなんと37キロにも及びます。それでも得意の巴投。パワーでまさる相手に攻め勝つと…。  続く2回戦。今度も大きい、体重差23キロ。それでも再び巴投。23キロの体重差を覆し、最軽量級ながらベスト16進出を果たしました。 ■6年間個人戦無敗の阿部一二三 なぜ挑む?  そして、4月29日に行われる男子の全日本選手権。  今大会一番の話題は、男子66キロ級オリンピック連覇・阿部一二三選手(27)の初挑戦です。  約6年間、個人戦負けなしの一二三選手だからこそ無差別級に求めるものがあるといいます。 松岡さん 「金メダリストなんですよ。出場したら負ける可能性もたくさんある」一二三選手 「柔道は、トップにいけばいくほど技術面は大差がないと思うんです。やっぱり気持ちの部分ですかね。重量級に挑む時の自分の新しい気持ちを経験できるかなっていう。そうなった時に、たくさんのものを経験している自分はもっと強くなれると思う」松岡さん 「『無差別級』ってあるべきなんですか?」一二三選手 「あるべきだと思います。日本で一番強い選手を決める。世界で一番と言ってもいいんじゃないですかね。誰もが目指したい場所だと思う」  大きな意義をもたらす反面、けがのリスクもあり、階級が上の選手との戦いは簡単ではありません。 ■最軽量級の永山竜樹 相手は100キロ差  今回、最も過酷な戦いに挑むのが最軽量60キロ級銅メダリスト・永山竜樹選手(29)。今大会最小156センチ65キロ(※エントリー体重)の永山選手の相手は、なんと大会最重量160キロの入来巨助選手。約100キロ差です。 松岡さん 「どんな感じがしますか?体格差っていうか、大きさ?」永山選手 「すごく大きいなって思います。目線が…上になっちゃいます」 「自分が重量級の選手と戦う時の心構えとしては、目の前に自分よりもはるかに大きくて強い野生動物が現れたとして、そこで立ち会った時に逃げても逃げられない状況で勝つしかない。命がけで戦うというぐらいの気持ちで試合に臨んでいます」松岡さん 「『100キロ差がある・背も高い』怖くはないですか?」永山選手 「小学生の時から小さかった。『大きい選手を投げる』っていうのも、オリンピックと同じぐらいの目標に掲げていた」松岡さん 「僕のほうが大きいんですよ。完全に心は負けてます」永山選手 「いえいえ、そんなことはないです(笑)」■伝説の1994年全日本選手権 吉田秀彦vs小川直也  そんな無差別級の戦いで伝説となっているのが、1994年全日本選手権。  主役は78キロ級金メダリスト・吉田秀彦さん(当時24)。体重差38キロでも大外返で投げます。  今度は体重差49キロ。今度は小外刈できめます。  そして、今もなお語り継がれるのが準決勝。大会5連覇中の小川直也さん(当時26)との一戦。身長差13センチ体重差44キロ。とんでもない体格差です。  先に先にしかけていく吉田さんは、恐れずどんどんしかけます。必死に投げにくる小川さんに対し、吉田さんは足をかけ何とかこらえます。  判定での決着。44キロ差の絶対王者を破り、柔よく剛を制しました。 吉田さん(55) 「全部使えば、体が小さくても大きい選手に勝てる」松岡さん 「あるべきですか?全日本選手権は」吉田さん 「一番なきゃいけないんじゃないですか。柔道の醍醐味(だいごみ)が全日本選手権には詰まってると思います」■「今まで知らなかった自分に出会える」全日本選手権徳永有美キャスター 「永山選手の『野生動物が目の前にいるかのように』という言葉がありましたけど、本能で倒していくという、この競技に関してはそういう思いで皆さん戦っているんですね」松岡さん 「まさにそうだと思います。ですから、皆さんに聞いていて、勝つ柔道というよりも、全うする柔道。全うは何かというと多分、吉田さんが言っていた言葉のなかで、自分の持っているすべてを出して戦っていく。普段、自分の引き出しにあって自分の階級では使わないけど、大きいと普通にやっても勝てないから。いってみれば引き出しの中に新たな技があって、それを出せるからこそハンデがあったとしても、この大会は魅力がある」大越健介キャスター 「無差別級の大会を見る時、体格の大きい選手をつい見ちゃうんですよね。彼らからすれば、小さい相手に負けるわけにはいかないというプレッシャーもあるでしょうし、相手の素早い動きに対応する技術面でもあるでしょうから。体格の大きな選手にとっても試練という面でもそれから技術という面でも大いに得るところのある大会なんじゃないかと思うんです」松岡さん 「これから男子が行われますが、一二三選手が『ワクワクして仕方がない』と言っていた。今まで知らなかった自分に出会えますからね」 (「報道ステーション」2025年4月25日放送分より)

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