元力士・舞の海氏も騙された…!「プレートをつけるだけで節電できる」150億円が動いた投資事件「電気料金削減サービス」にご用心

うまい話には裏があるとわかっていても騙されてしまうほど、令和の手口は手が込んでいる。そうした中、現役時代に「技のデパート」の愛称で知られ、現在はNHKの大相撲解説者として活躍する元力士の舞の海秀平氏(57歳)が、多額の出資金トラブルに巻き込まれていたことが明らかになった。 舞の海氏は「リスクを十分に説明せず、多大な損害を被らせた」とし、業界最大手の野村證券と監査・税務アドバイザリーの南青山FASに対し、計6453万円を求める損害賠償請求訴訟を起こしており、今年5月にも第1回弁論準備が行われる予定だ。前編記事『元力士・舞の海氏が野村證券を相手に巨額の損害賠償請求を起こした…!「節税」と見せかけて「脱税指南」…「電気料金削減サービス」の驚きの手口』につづき、150億円ものカネが動いた投資事件を追う。 野村證券の回答 出資金の大部分が回収できない事態に直面した舞の海氏は、野村證券と南青山FASに対し、未回収の取次手数料と修正申告によって生じた加算税などの損害賠償請求を行うに至った。 「野村證券と南青山FASはそれぞれ、『(投資案件の事業主である)BUONO社の実態を詳しく把握していなかった』とする一方で、自らの非を認めず、請求に応じない構えを貫いている。そこで、今年1月31日に提訴に至りました」(舞の海氏の代理人弁護士) なお、BUONO社の代表だった首藤弘被告を訴訟相手に加えていないのは、「賠償能力に鑑みて」(代理人弁護士)だという(編集部注:首藤被告は'24年2月に東京地検特捜部に法人税法違反(脱税)などの疑いで逮捕され、翌月には複数の会社経営者への脱税指南を行った容疑で再逮捕されている人物で、すでに起訴もされている)。 投資は「自己責任」が大原則とはいえ、証券会社や公認会計士には、紹介する人物や金融商品がいかがわしくないか、チェックを行う義務があるはずだ。 本誌は、舞の海氏とのトラブルについて、野村證券と南青山FASに質問書を送付した。野村證券は、「個別の取引についてコメントできません」「訴状の内容を精査した上で、適切に対処していきます」と回答。一方、南青山FASからは期日までに回答はなかった。 会計士や税理士はなぜ協力するのか そもそも、首藤被告が謳っていた「電気料金削減サービス」とは何だったのか。BUONO社の事業に出資をしていた、大阪府在住の前田浩一氏(仮名・40代)が言う。 「BUONO社が手掛けていた電気料金削減サービスの軸は、『エレソルプレート』なる商品の販売です。このプレートを設置することで、電磁ノイズを抑制し、電力消費を効率化させるという触れ込みでした」 本誌は複数の出資者に取材をしたが、このエレソルプレートについては、「まったく効果がなかった」という人や、「一定の効果があった」という人などそれぞれだった。ただいずれにせよ、首藤被告の儲けのカラクリは、「電気料金削減」そのものではなく、「投資案件」にあったようだ。 前田氏が続ける。 「私が出資したのは、このエレソルプレートの製造に融資を行うことで、月3%の配当が得られるという投資案件でした。'22年5月に知人に勧められ、一口分である1000万円を出資しました。契約期間は4ヵ月。契約相手は首藤が代表を務めるエレソル株式会社です。 1回目の契約期間は毎月、30万円が振り込まれていたので、9月に再契約した。すると、11月に、何の前触れもなく配当がストップしました。紹介者だった知人の説明では『首藤が国税に入られたらしい』とのことでした」 この時点ではまだ、前田氏に焦りはなかった。エレソル社との契約書には、エレソルプレートの売掛債権が担保として設定されていたからだ。しかし……。 「いざ、それらの担保から債権回収をしようと手続きに入ると、多くは多重担保状態だったり、売掛が存在しなかったりで、回収は不可能でした。結局、最初の契約時点から騙されていたんです」 首藤被告はこういった投資案件で300社以上と契約を結び、約150億円もの大金を集めたとされる。 同被告が相手を信用させるために行っていたのが、会計士や税理士に仲介をさせる、という手口だ。 債権者らによる破産申し立てを受け、今年1月、東京地裁はBUONO社の破産手続き開始を決定している。申立代理人となった、加藤・轟木法律事務所の加藤博太郎弁護士が明かす。 「債権者の多くは、公認会計士や税理士、経営コンサルタントなど、肩書のある人たちからの紹介をきっかけに、首藤被告らによる投資案件への出資を行っていました。コロナ禍で不安を抱えるなか、専門家から節税商品として勧められれば、信じてしまう経営者も多かった。もちろん、契約が成立すれば、会計士や税理士には首藤被告側から『紹介料』が入る仕組みになっていました」 詐欺罪に当たる可能性もある BUONO社の関係者によると、首藤被告は投資案件で集めたカネの多くを仮想通貨に投資していたという。 現在、首藤被告が問われている刑事責任は、主に脱税指南である。しかし、加藤弁護士によると、さらなる罪が追及されることも考えられるという。 「不特定多数から出資を集めて損害を与えた行為は、場合によっては詐欺罪に当たる可能性もあります。今後の破産手続きによって、カネの流れが明らかになれば、当初から騙し取る目的だったのかどうか、はっきりすることになります」 BUONO社はすでに破産手続きが決定し、首藤被告が逮捕・起訴されている。とはいえ、コロナ禍に伴う景気の悪化、そして電気料金高騰によって、「電気料金削減」や「節税」を謳う怪しい投資話は急増している。 突然、「電話料金が未納です」という詐欺電話がかかってきたり、「NTTの委託を受け、電話料金が安くなる申込受付をしています」などと、強引に契約を迫られたことがある人も少なくないだろう。 なかには、紹介料をちらつかせて本物の会計士や税理士を取り込み、客を信頼させる悪徳詐欺手口もあるだけに、怪しい話には要注意だ。 「週刊現代」2025年4月28日合併号より 【さらに読む】『元力士・舞の海氏が野村證券を相手に巨額の損害賠償請求を起こした…!「節税」と見せかけて「脱税指南」…「電気料金削減サービス」の驚きの手口』 【さらに読む】元力士・舞の海氏が野村證券を相手に巨額の損害賠償請求を起こした…!「節税」と見せかけて「脱税指南」…「電気料金削減サービス」の驚きの手口

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