「建物というよりお菓子に似ている」 日本はいったい、世界のなかでどのような立ち位置を占めているのか。 世界情勢が混乱するなか、こうした問題について考える機会が増えたという人も多いかもしれません。 日本が世界に占める位置を、歴史的な視点をもって考えるうえで非常に役に立つのが、『イザベラ・バードの日本紀行』という本です。 イザベラ・バードは、1831年生まれのイギリス人。オーストラリアや朝鮮などさまざまな国を旅し、旅行作家となりました。 彼女は1878年、47歳のときに日本を訪れています。北海道をはじめ、いくつかの土地を旅しますが、その様子をあざやかにつづったのが、この『イザベラ・バードの日本紀行』なのです。 19世紀の後半、日本はどのような姿をしていたのか、それはイギリスという「文明国」「先進国」からやってきた女性の目にはどのように映ったのか、そこからは、明治日本とイギリスのどのような関係が見えるのか……本書はさまざまなことをおしえてくれます。 たとえば、東京の建築物に対してバードは辛辣な言葉を残しています。同書より引用します（読みやすさのため、改行を編集しています）。 ＊＊＊ 〈広くてがらんとした通りに完全な平地、そして暖かな霧雨とそろっては、なにもかもが単調でわびしく見えました。わたしは西洋式の家屋を建てる計画がここを侵害していることに驚愕しています。 江戸は、主に城壁、築堤、堀の壮観、ヤシキ──その多くがとめどない荒廃の徴候を示しています──、日本橋──日本じゅうの距離がこの橋を基点に測られるそうです──界隈の人出の多い問屋街に代表されます。 東京と新政府は建築という形では、赤煉瓦の塀をめぐらせた化粧煉瓦の大臣官邸、実に堅牢で端正な工部大学校、多数の兵舎、警察署、学校で代表されますが、これらは質の劣ったヨーロッパ風またはアメリカ風スタイルで建てられ、木造で白いペンキが塗ってあります。長方形の窓がえらくたくさんついており、ふつうベランダはなく、安物の倉庫かサンフランシスコの場末の居酒屋のように見えます。 ひどく悪趣味でいやになるほど醜く、建物というよりお菓子に似ているのです。工部大学校を設計したシャテル・ド・ボワンヴィル氏に助言を仰がなかったのは確実で、政府は首都の景観の一部をこのようにすることで新しい首都の品位を落としてしまいました。ただし例外は清潔でなめらかな道路で、東洋の都というよりシカゴかメルボルンの郊外のように見えます。〉 ＊＊＊ さらに「「日本はロシアの属国」「日本には奴隷制がある」…19世紀のイギリス人が、日本に抱いていた「驚きのイメージ」」の記事では、当時のイギリスから日本にたいする偏見やイメージについてくわしく見ていきます。 「日本はロシアの属国」「日本には奴隷制がある」…19世紀のイギリス人が、日本に抱いていた「驚きのイメージ」