警察や軍関係、暴力団組織などの内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、特定抗争指定暴力団の山口組による、2015年から続く神戸山口組との抗争終結宣言の裏側について。 【写真】山口組総本部には物々しい雰囲気が漂う!餅つき大会に参加した司組長の姿も * * * 10年にも渡った山口組分裂抗争が終結に向かいそうだ。4月7日、六代目山口組の森尾卯太男本部長ら執行部幹部らが、兵庫県警を訪問し抗争終結に関する宣誓書を提出した。 「この度は全国の任侠団体の申し出により、山口組は処分者の井上、入江、池田、岡本、松下との抗争を終結することにしました」と書かれた宣誓書には、「一般の市民にはご迷惑をおかけしました」という謝罪の言葉とともに、六代目山口組ナンバー2の高山誠司若頭の名前と執行部一同という文字が書かれていたという。だがそこに当代である司忍の名前はなかった、 ヤクザ界隈のSNSでは3月頃から、抗争終結に向けた情報が随時流れていた。稲川会が全国の暴力団組織に”要望書”、いわるゆ「連判状」を持った幹部を派遣し、抗争終結の同意を得ようと奔走。SNS上では当初、この連判状は要望書ではなく”神戸山口組井上組長引退連判状”とされていた。社会情勢もヤクザを取り巻く状況も悪くなる中、抗争終結に向けて神戸山口組の井上邦雄組長を引退させる。井上がカタギになる代わりに命の補償はするという内容を持って稲川会が動いているといわれ、連判状に署名捺印したという組の名前も挙がっていた。だが西日本の組織は話を蹴った、九州勢は難色を示したという情報も飛び交っていた。 神戸山口組側の弱体化に伴い、これまでも六代目山口組が抗争終結宣言をするのではという噂はあったため、山口組関係者の間では「慌ただしくなってきたが、勝手に終結なんて無いだろう」という見方が大半だったとA氏はいう。それがにわかに現実味を帯びたのは4月に入ってからだった。 SNSに流れた怪文書 4月4日、稲川会の内堀和也会長と住吉会の小川修司会長が、六代目山口組の高山誠司若頭に、抗争を終結してほしいという要望書を渡したという情報が流れた。「山口組が一方的に終結宣言をするのではという話が過去に何度か出ていた。抗争も10年目、昭和から数えてヤクザの抗争事件で10年を超えたことはない。そのいらだちも大きかったのではないか。司忍組長も高齢で、今年中に代替わりをという意向もあったのだろう」とA氏はいう。 しかし六代目が自ら言い出すわけにはいかない。「山口組としては一方的に抗争終結宣言を出したいが、それではカッコがつかない」とA氏。ヤクザは見栄を張ってなんぼの商売でもある。また現在のヤクザ業界でトップに立っている六代目山口組の当代司忍と、並ぶことができる他組織の組長は今や数少ない。「そこで内堀会長に打診し、要望書が作られたのではないか、という噂もある」という。六代目山口組の体面を保つためには、全国の任侠団体の要望によりという態にする必要があったのだろう。 要望書とされる文書には丁寧な言葉が並んでいた。全国斯道界の有志が現在の抗争がもたらす影響を深く憂慮していると告げ、「此れからの斯道界が 発展して行く為にも常々 六代目山口組が唱える 原点回帰の元 任侠道の原点に帰り 抗争の早期終結を決断して頂きたく ここに 強く 要望致します」とし、友好団体一同は中立な立場で仲介に入ることも厭わないとあった。要望書により山口側は動いたようだ。 7日前日に執行部が兵庫県警に入るらしいという情報とともに、8日、直参らに「体調が悪くても這ってでも来い」と緊急招集がかかったという情報が流れた。抗争終結と代替わりに絡んだ動きがあるとみられたが、この時点では「兵庫県警に行った事も茶番ではないのかという者も多かった」とA氏は語る。 直参が集まった緊急会合では、高山若頭が「神戸、池田、絆は認めているわけではない。とにかく六代目山口組は前進あるのみ!」と大声を張り上げたというが、代替わりに関する話はなかった。するとSNSには「高山若頭が、司親分に総裁に就任してもらうか、引退されてゆっくりされることを提案した」「高山若頭は弘道会総裁のまま最高顧問に退き、竹内照明若頭補佐を若頭に打診したが、司親分から何代も弘道会出身者が当代に就任したら、それはもはや弘道会山口組であって、分裂の目を生むだけだ」という主旨の怪文書が流れた。 「この話が本当ならもっともだと思う者も多いだろうが」というA氏だが、「名古屋(弘道会)が、誰が流したのか犯人捜しをしている」。怪文書は、弘道会出身者が代替わりすることに危機感を持つ者の仕業とみられている。実際これはガセネタだった。18日、六代目山口組は本部執行部通達として、高山若頭を相談役に、竹内若頭補佐が若頭に就任したことを公表した。 「本部から、井上、池田ともめたら処分の対象とする。頼ってきた場合には接触は構わないが、山建組の処分者は拾わないという通達もきた」というA氏。抗争を終結させ、六代目山口組代替わりに向け動きを加速させている六代目山口組。抗争終結に向けて動いた稲川会では、終結宣言を見届けたかのように総裁だった清田次郎(辛炳圭)が亡くなった。 一方的に抗争終結宣言を出された神戸山口側では目立った動きはみられない。10年も続いた抗争がこのまま揉め事もなく終結に向かうのか。予断を許さない。