グレードアップするサッカーの聖地 今春にスペイン・バルセロナに2週間ほど滞在しました。この街を訪れるのは4回目ですが、今回の滞在で国際観光都市としてさらに魅力が増していると感じました。 バルセロナが世界にその名を知られるようになったのには、2つの大きな原動力があります。そのひとつが「サグラダ・ファミリア」や「グエル公園」に代表される建築物をデザインした建築家ガウディで、もうひとつが街の名前がそのままつけられたサッカーチーム「FCバルセロナ」です。 そして、そのFCバルセロナの本拠地であるスタジアム「カンプノウ」は大規模なリノベーション中です。 カンプノウは1957年に完成してから、82年のスペインW杯などのタイミングで拡張されてきました。一時は収容人数12万人を誇りましたが、その後FIFAの安全のための規則により立見席が廃止されたものの、10万人弱の収容人数は欧州で最大でした。 筆者も一度このスタジアムでFCバルセロナを観戦しましたが、急角度のスタンドに大歓声がこだまして素晴らしい迫力でした。 大改装に乗り出した「カンプノウ」 ただ、その一方で施設の古さは否めず、スタジアムに併設されたショップのラインナップは乏しくモニターのサイズも小さいので、過去に訪れた英国のトットナム・ホットスパーの本拠地など新設のスタジアムと比較すると、観戦の快適さではカンプノウは見劣りしました。 最大のライバルである「レアルマドリード」が、本拠地の「サンチャゴ・ベルナベウ」を約18億ユーロ(約2900億円)をかけて大改装に乗り出し、全天候対応の開閉式のドームに加えて、サッカーとそれ以外のイベントを機動的に切り替えるための芝生ピッチの地下格納システムまで備えたこともあり、FCバルセロナも約10年前からカンプノウの大改装に乗り出します。 既存の躯体を活かしつつ、ピッチ全面に屋根を付けて客席数も10.5万人まで拡大し、さらに外装も“ソシオ”と呼ばれるファン主体で運営されてきたクラブの性質を反映して、壁を極力少なくしてテラスを多用し街全体に溶け込むような野心的なデザインとなっています。 23年6月に着工して順調にいけば24-25シーズンから使用できるはずでしたが、バルセロナを慢性的に悩ませている財政問題や計画の度重なる変更に、UEFA主催のチャンピオンズ・リーグの試合日程など複数の要因が絡み合ったことで大幅に予定が遅れ、26-27シーズンにまで利用開始が遅れそうです。 今春に現場を訪れた時も、工事は佳境という雰囲気でまだまだ完成までには時間を要しそうでした。 トップクラブとの劣勢を跳ね返す試行錯誤 工事現場には完成予想図のパネルもありましたが、そこからも上記のようにソシオを主体としてきたクラブの運営方針からの変更が見て取れます。レアルマドリードや英国のプレミアリーグのビッグクラブを筆頭として、外国人を含む大富豪がオーナーに就任して巨額を投じて設備投資や選手を獲得したことで、ここ5年ほど欧州のトップ戦線からは後退していました。 FCバルセロナもソシオやスタジアム入場に、グッズ販売以外にも収入源を開拓することを迫られており、新しいカンプノウの名前には音楽配信で世界最大手のSpotifyの名が冠されることが決まっています。 また、FCバルセロナはオフィシャルストア網も拡大しており、今回訪れて驚いたのは街の中心部には数百メートルおきにショップができていたことです。また、オフィシャルグッズの価格もライバルのレアルマドリードや英プレミアリーグ勢と比べても強気で、うちの子供が欲しがった一番人気のラミン・ヤマル選手のTシャツは2万円以上もしました。 ただ、フットボールクラブとして変わらない点もあります。 伝統チームの「こだわり」 今のバルセロナは弱冠17歳で世界最高クラスのテクニックを披露しているMFヤマルを筆頭として、18歳のCBクバルシや21歳のSBバルデなど、揃ってカンテラ(FCバルセロナの育成組織)出身の若き才能が輝き、移籍組と合わせて久しぶりに欧州の頂点が見える良い状態となってきています。 子供の頃からパスを主体としたFCバルセロナのスタイルを叩き込まれた選手たちが核となっているのは、数十年にわたるこのクラブの伝統です。 時代の流れで部分的に変化を迫られながらも、同じサッカースタイルは堅持しているFCバルセロナが、上記で紹介した俊英たちがさらに成長してをこの新しく完成したスタジアムで目に焼き付けることを楽しみにしています。 そんなバルセロナですが、じつは滞在するにも非常に快適な街となっていることに驚きました。あらゆるシーンでテクノロジーの活用がとてもうまくいっていると感じたのです。 つづく後編『バルセロナが快適すぎた…!ガウディが愛した古都に調和する「テクノロジー」と、成長する「緻密な都市戦略」を感じた2週間を報告します!』では、バルセロナの魅力について、テクノロジー活用の点から詳しくお伝えしていきましょう。 【つづきを読む】バルセロナが快適すぎた…!ガウディが愛した古都に調和する「テクノロジー」と、成長する「緻密な都市戦略」を感じた2週間を報告します!