学校での音読や発表が苦痛……。吃音がある子の苦手な場面に対応するベストな方法

「子どもの吃音(どもり)は親のせい」。そんな誤ったメッセージが過去に新聞でも掲載されていたことがありましたが、今もなお、そうした情報がインターネット上に数多く存在しています。しかし、本当にそうでしょうか? 吃音は100年以上も前から研究され続けており、原因や治療法についてのとらえ方は変遷を重ねてきました。現在は、昔とは180度反対の考え方になっています。 子どもの吃音は親のせいではありませんし、もっというと、子どもに吃音があってもよいのです。とはいえ、なかなかそう簡単には思えないという人もいるでしょう。そこで、本連載では、『吃音のことがよくわかる本』(菊池 良和 監修)の内容をもとに、子どもと親が、吃音とうまくつきあいながら、自信をもって人生を生きていくためのコツを全8回にわたって提案していきます。前回に引き続き、吃音があることで起こりうるリスクへの対策を考えていきます。 吃音のことがよくわかる 第8回 子どもが苦手な場面のリスクを減らすには、担任の先生の協力が鍵 小学生以上になると、授業中にことばがうまく出なくなってしまうことが、からかいの種になったり、誤解を受けたりするもとになってしまうことがあります。 担任の先生に対しては、からかいの防止だけでなく、学習の場で起こりうる吃音ゆえの問題についても、適切な対応を求めていく必要があります。 通常学級を受け持つ先生のすべてが、吃音に対する正確な知識をもっているわけではありません。保護者からの働きかけが必要なことも少なくありません。 そこで、これまでの経過や学校生活でお願いしたいことなど、先生に率直に相談してください。たとえば、授業中の指名について。順番に指名するほうがよいか、手を挙げないかぎり指名しないほうがよいのか、ランダムに指名してもよいか、子どもと相談して決めてもらいましょう。 本人が発言するときは、話し方ではなく話の内容を聞いてもらいます。なかなかことばが出なくても、急かさないようにお願いしておきましょう。子どもの状態によっては、「発言をパスするサイン」「同意・不同意のサイン」などを決める、書いて提出してもよいことにするなどの工夫も考えます。 また、音読や号令、学習発表、劇、自己紹介など、吃音の子が不安を感じやすい場面への対応も相談しておきましょう。そして、話し方のからかいには、子どもたちに毅然とした対応をしてもらいます。 吃音の対応に迷っていたら ことばの教室への通級も検討して 小学生になったら、小学校に併設されていることばの教室で、吃音とのつきあい方を学んでいくのもよい方法です。ことばの教室とは、言語障害のある子どもを対象とした通級指導教室や特別支援学級の通称です。同じ学校内に設けられていなければ、近隣の学校に足を運びます。 からかいやいじめはなく、本人が楽しく学校生活を送れており、親自身とくに心配はしていないということであれば、利用しなくてもかまいません。特別な指導を受けなければ吃音がひどくなるというわけでもないからです。 ただし、親には素直に悩みを打ち明けられないこともあります。休み時間や放課後、いつも一人で過ごしているなど、なにか気がかりなことがあれば相談だけでもしておくとよいでしょう。それにあたり、ことばの教室のメリットとデメリットもあらかじめ把握しておくようにします。 ●メリット ・吃音のある子一人につき、ことばの教室の先生一人でのマンツーマン指導が原則。ていねいに向き合える ・ことばの教室の先生に、担任の先生とのパイプ役をつとめてもらうことで、吃音への理解を広げやすく、からかいやいじめへの対策などもとりやすい ・教育機関なので無料で、欠席扱いされずに指導を受けられる ・親の相談も聞いてくれる ・ことばの教室は1930年頃から開設された歴史ある制度(吃音の専門家である言語聴覚士は1999年から認められた資格) ・数は少ないが、幼稚園、中学校に併設されていることもある ・通常授業を抜ける機会を利用して、吃音のことを先生からクラスの子に説明してもらいやすい ・同じ吃音の子たちのグループ学習をしている教室もあり、「自分一人ではない」と思える ●デメリット ・毎年、担当の先生が替わる可能性がある ・通常授業を抜けて指導を受けるため、本人がいやがることがある 苦手な音読や発表・自己紹介は、事前の練習で乗り切る 国語にかぎらず、どんな教科でも、授業中、教科書やプリントに書いてある文章をそのまま読み上げる音読をする機会があります。吃音のある子の半数以上は、音読を苦痛に感じていると報告されています。苦手とわかっているのであれば、対応を考えておくことが必要です。 学校での本読みが苦手なら、先生に直接、対応を相談しておきましょう。音読が苦手であることを直接先生に伝えておくだけで、本人の安心感は増すものです。 家庭では十分に練習しておきましょう。同じ文章を5〜6回読んでいれば、つかえる頻度は半分程度に下がります。家の人が手伝えるときには、いっしょに練習するのもよい方法です。音読するときは、だれかといっしょに声を出せば、ことばがつかえにくいのが吃音の特徴です。音読、号令はその特徴をいかせば、比較的スムーズに実行できます。 また、人前で話すときには、どもるのではないかという不安が高まりがちです。確かに、おおぜいの人の前で話そうとすると、ふだんよりつかえやすくなる傾向は否めません。そこで必要なのが、やはり事前の準備で話す前の不安を減らすこと。 発表をするにあたって不安が強ければ、参加のしかたを考えます。「2人以上で声を合わせればスムーズに話せる」「歌はつかえずにうたえる」といった特徴をいかし、不安なくのぞめるように促します。話すことばが決まっていれば、事前の反復練習が効果的。家族や友だちの前で練習すればさらに効果的です。発表の前には「吃音がある」と伝えることも考えましょう。 自己紹介するときは、その場でなにを話すか考えながらだとことばにつまりやすくなります。事前に文案を考え、練習しておきましょう。そして話しはじめに「どもるかもしれない」と伝えてしまえば、聞く側の姿勢も変わります。その後の学校生活で吃音を隠す必要もなくなります。 こうして人前で話すことに挑戦し、それがうまくいけば、子どもの大きな自信につながるのです。 からかいの標的になりやすい「吃音」をもつ子ども。リスクを踏まえてトラブルを未然に防ぐには?

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