物価高対策として協議されていたガソリン価格の引き下げ。暫定税率を廃止し、1リットルあたり25円の値下げを求める声が上がっていましたが、石破総理が表明したのは「10円の引き下げ」でした。果たして、これで十分なのでしょうか? 【写真を見る】ガソリンの暫定税率撤廃を求めるJAF ガソリン10円引き下げ「まだ高い」 石破総理(22日) 「リッターあたり10円引き下げます」 ガソリン価格をめぐって石破総理は、5月22日から1リットルあたり10円引き下げると表明。 給油にきた客の受け止めは? ——ガソリン価格が10円引き下がることについて 給油にきた客 「下がれば下がるほど嬉しい。10年前くらいの値段に戻ってくれれば、いくらでも遠くにツーリング行ける」 「10円ありがたいですけど、それでもやっぱりまだ高いなと思う」 ガソリンスタンドの店長は、10円という金額は“少ない”と断じました。 西綾瀬サービスステーション 三枝直樹 店長 「10円下げるために、どれだけの時間使ってるんだという気持ち」 街からはこんな声も・・・ 男性 「今注目の暫定税率とかがあるので、なくなればいいなって。急に25円安くなれば、どっかに行こうかなという気持ちにはなる」 暫定税率いつまで続く? ガソリンにはガソリン税をはじめとする複数の税がかかっています。1リットルあたり「28.7円」のガソリン税には、さらに「25.1円」が加算されています。いわゆる「暫定税率」です。 また、その上に10%分の消費税がかかるため、“二重課税”との指摘もあります。 物価高対策として行われるガソリン価格の10円引き下げ。 一方、自民・公明・国民民主の3党が2024年に合意した「暫定税率」の廃止は未だ実現していません。 国民民主党 玉木雄一郎代表 「10円?がっかりしてますよ。いつ廃止するんですか」 石破総理 「3党で真摯な協議が行われている時に、いつということは申し上げられません」 国民民主党 玉木雄一郎代表 「補助金の10円聞いてませんよ。真摯な協議が行われてませんよ、総理。東京にいると分かんないけど、(地方は)車がないとスーパーにも病院にも行けない。物流コストも下がる、物価も下がる、皆喜ぶ。やりましょうよ総理」 石破総理 「(財源が)恒久的にきちんとした手当てができるのかということも含めて、御党と真摯な議論を重ねてまいりたい」 51年前に始まり、今も続く“暫定”状態。終わる日はいつになるのでしょうか。 日本自動車連盟=JAFは、SNS(X)で「暫定税率の上乗せには自動車ユーザーの96.1%が反対しています。ユーザーの負担感は限界に来ており早急に廃止を求めます」と、投稿しました。 「ガソリンよりお米」の声も 藤森祥平キャスター: 石破総理大臣は5月22日から補助金という形でガソリン価格の10円の引き下げを決めています。一方、野党側からは補助金ではなく減税、25.1円の暫定税率の廃止を求めています。 小川彩佳キャスター: 補助金だと一時的ですし、野党からは選挙をにらんだ動きなのではないかという指摘も出ています。 東京大学 斎藤幸平准教授: ガソリンに対する税金の国際比較では、日本はかなり安いです。 <ガソリンに対する税負担率> ▼日本42.6%、▼イギリス52.4%、▼フランス53.0%、▼ドイツ53.9% 今、ドイツに住んでいて、1リットル250円ぐらいするので日本は安いですね。気候変動の時代に税金を安くして、ガソリンをガンガン使うことを援助するような政策をやるべきかというと、むしろ暫定税率を炭素税みたいに恒久的なものにして、税率を上げていくぐらいの議論をすべきじゃないでしょうか。 藤森キャスター: ただ、今は特に車を定期的に使ったり、地方で遠くに行く手段が車しかなかったりという方も多くいらっしゃるから、10円の引き下げは大きいと思います。 東京大学 斎藤幸平准教授: 逆に言えば、これは地方を喜ばせるためのバラマキによる小手先のポピュリズムと言われても仕方がない。本来であれば、電気自動車などに変えていくチャンスだと思います。 藤森キャスター: 物価高対策としてガソリン価格の引き下げを行うということです。 ただ、これまで給付金の声、減税しようという声も上がりましたけど、断念するということになりました。 こうしたことを踏まえて街の皆さんに聞いてみると、「ガソリンよりお米の方が助かる」「様々な人が恩恵を受けられる政策がいい」という声が上がっています。この方は、ひょっとしたら車を運転しない方なのかもしれません。 小川キャスター: 物価高対策ということを考えると、ガソリン価格引き下げでどれだけ実感が得られるのか疑問に思うところがありますね。 東京大学 斎藤幸平准教授: 今の状況で問題なのは給料が低く、あまりにも手取りが低いことです。日本の雰囲気としては、とにかく減税をして、手取りを増やす、消費税を減らすなどといった議論にもなっています。短期的にはそうかもしれないけれど、長期的にはずっと日本は安い賃金で労働者たちをこき使って、企業は余ったお金を研究・開発じゃなくて、株や投資に回して官製相場でどんどん株高を煽ってきた。そのツケが円安なんかに出てきてるわけですよね。 そういう中で、また新しい減税ポピュリズムで税収を減らすようなやり方は、長期的に見て持続可能ではない。もっと根本的な産業転換の議論を併せてしてほしいと思います。 小川キャスター: 物価高が厳しいという実情はあると思います。どういった対策が望ましいとお考えですか? 東京大学 斎藤幸平准教授: 電気代の補助金、ガソリン補助みたいなものは、やっぱりバラマキの一環になってしまう。長期での産業転換というものになかなか繋がらない。エネルギー自給、電気自動車などの話も併せてやってほしいと思います。 インフレというのは実質賃金が上がっていれば、問題がない。便乗値上げをチェックしたり、新しいものへの投資をしていったりすることが基本的な戦略になっていくのではないかと思います。 ガソリン価格について「みんなの声」は NEWS DIGアプリでは『ガソリン価格』について「みんなの声」を募集しました。 Q.今回のガソリン価格の引き下げ どう思う? 「評価できる」…8.2% 「引き下げ幅が不十分」…18.4% 「暫定税率を廃止すべき」…63.9% 「物価高対策は必要ない」…3.9% 「その他・わからない」…5.6% ※4月24日午後11時20分時点 ※統計学的手法に基づく世論調査ではありません ※動画内で紹介したアンケートは25日午前8時で終了しました。 ======== <プロフィール> 斎藤幸平さん 東京大学准教授 専門は経済・ 社会思想 ドイツ在住 著書『人新世の「資本論」』