バードウォッチングを楽しむ「三つのコツ」と「三種の神器」とは…5月10〜16日は「愛鳥週間」

 小鳥の愛らしい姿を街でもよく見かける春。  気候もよいのでもう少し本格的に野鳥を観察してみようか——。そう思って慣れない双眼鏡を手に里山や森を訪ねても、たやすく姿を捉えられないのも事実。「愛鳥週間(5月10〜16日)」を前に、バードウォッチングのコツを伺いに練達者を訪ねると、その奥深い魅力が見えてきた。(デジタル編集部 荒谷康平) 三つのコツ  「子どものころ、家の前の桜並木に小鳥がいっぱいいることにある時気が付きました。その中に小型のキツツキのコゲラがいて、街なかにキツツキがいることに幼いながらに衝撃を受けまして。それ以来、飛んでくる鳥の種類を調べるようになって(バードウォッチングに)ハマっていきました。今はもう(鳥の)オタクです」。そう語るのは「日本野鳥の会東京」のスタッフ、松脇菜那子さん(26)。同会が野外で開催する探鳥会のリーダーも務める、バードウォッチングの若き練達者だ。  「バードウォッチングが好きな理由は、鳥の観察を通して季節の移ろいを感じられることでしょうか。この時期の首都圏ですと、多磨霊園(東京都府中市)ならアオゲラやキビタキ、皇居や日比谷公園ならシジュウカラやメジロを見られます。初夏になれば高尾山でオオルリのさえずりも楽しめますよ」  4月中旬、松脇さんと同会副代表の石亀明さん(50)に、同会がよく探鳥会を開く葛西臨海公園(東京都江戸川区)で野鳥の見つけ方を実演してもらった。週末の行楽日和とあって園内は子どもたちのはしゃぎ声でにぎやかで、野鳥の気配は感じられない。松脇さんと石亀さんも「今日は野鳥を見かけないですねえ」と言いながら歩を進める。  しばらくすると、石亀さんが何かを見つけたのか、担いでいた三脚付き望遠鏡をおもむろに芝生に据えた。望遠鏡が示す方角を見ると、遠く先に林があるだけ。数秒後、松脇さんが望遠鏡の接眼レンズにスマホをあてて写真を撮った。見せてもらうと、ヒヨドリが写っているではないか。  「どうやって見つけたのだろう」と驚く記者をよそに、次なる鳥を求めて移動するお二人。別の林に差し掛かると、石亀さんが「ムクドリ」と言って望遠鏡を据えた。「あそこです」と松脇さんが指し示した方向を見ると、30メートルほど先の地面にムクドリがいた。  遠くの小鳥をどうしてこうもたやすく見つけられるのか。石亀さんによると、バードウォッチングには「見つける」「見分ける」「聞き分ける」の三つのコツがあるという。ヒヨドリのケースでは、鳴き声で「ヒヨドリがいる」と覚知すると同時に、鳴き声がした方を見てヒヨドリを発見、林のどの辺りに入ったかを肉眼で追った。「初心者の方ほど目を頼りに鳥を見つけますが、ベテランになるほど耳が頼りになると思います」と松脇さん。  ムクドリのケースでは、「(何かの鳥が)着地するところが目に入りました」と石亀さん。見つけてしまえば、鳥の種別はベテランには一目瞭然だ。それにしても、着地するところを見ていなかった松脇さんはどうしてムクドリを即座に見つけられたのだろう。松脇さんは「石亀さんが『ムクドリ』と言ったのを聞き、ムクドリだからきっと地面にいるだろうと推察して地面を探したんです」と教えてくれた。  野鳥はそこにじっととどまってはくれない。バードウォッチングを楽しむには鳥をさっと見つける力が求められるが、鳥の種別ごとにその習性を把握していると見つけやすくなる。  石亀さんが付け加える。「コゲラなんかはちょっと枯れた木がポイントになります。コゲラの声がして、あそこに枯れた木があるので、多分その木に来ると思って見ていると、ひゅっと飛んできてそこをコツコツたたき出す——みたいなことを、(経験を積むと)先読みできます。オオルリの声がした時はなるべく木の上部の先端を探す——というような感じです。野鳥を聞き分けられるようになるとうれしくなりますし、コゲラを声から発見できるようになると、ちょっとベテランになった気がすると思いますよ」  野鳥の鳴き声は駅の盲導鈴にも使われているという。意外と身近な所で様々な野鳥が鳴いている。鳴き声で聞き分けるには経験がいるが、比較的身近な野鳥の声は「日本野鳥の会 おさんぽ鳥図鑑」でも聞ける。 三種の神器  バードウォッチングには「三種の神器」があるという。一つ目は双眼鏡。小鳥や遠くの鳥を肉眼で見るには限界があるが、双眼鏡があれば鳥の姿形をつぶさに見られる。ベテランになると望遠鏡も選択肢となるが双眼鏡より高価なので、まずは双眼鏡で十分だ。石亀さんらが初心者に勧めるのは倍率が8倍か10倍のもの。倍率が高くなるほど手ブレの影響が大きくなる。対物レンズの口径もポイントで、口径のミリ数が大きいほど明るくなる。  「8倍・30ミリ」のスペックが一般的だといい、松脇さんは「明るく見えると鳥の種類を識別しやすいので、少し倍率を落としてでもより明るく見えるものを選ぶのがベター。また、女性や小さい子どもだとサイズが小さいほど持ちやすいと思うので、そういう観点で選んでもいいかな」と話す。双眼鏡の使い方は、松脇さんが同会の動画「バードウォッチング初心者向け 双眼鏡の使い方」でも解説している。  二つ目は図鑑を手に入れること。「いろんなタイプがありますが、最初は鳥がイラストで載っているものをお勧めします。似たような種類を1ページ内で見比べられる作りになっているものが多いので。対して写真のものは、1ページに大きな鳥の写真1枚と解説が載っている作りが多く、見比べるのが難しいという点があります」と石亀さん。松脇さんは「写真だと光の当たり具合とかで、本来の色とちょっと違って写ってしまっているケースもあるので、なんとなくイラストの方が一般的な外見が描かれているように思います」と話す。  三つ目は「どこでどの野鳥を見たか記録しておくこと」だという。「『1年前ここで見たよね』というような形で積み重ねていくことで、自分自身のレベルアップにつながると思います。記録しないとどんどん忘れていってしまいますし」(石亀さん)、「『去年あの場所でこの時期にこの鳥を見た、今年も見られるかもしれないから行ってみよう』というふうに、記録を残しておくことが次のバードウォッチング計画につながったりします」(松脇さん)。 仲間と楽しむ探鳥会  さて、「三つのコツ」を頭で理解して「三種の神器」を備えたとしても、双眼鏡で実際に野鳥を視野に捉えて識別までするのは、最初はなかなか骨が折れる。そこで頼りになるのが探鳥会だ。お二人が所属する「日本野鳥の会東京」も、東京とその近郊で年に200回近く探鳥会を行っている。松脇さんら「探鳥会リーダー」が、「三つのコツ」の実践の仕方や双眼鏡の使い方を教えてくれ、参加者が自分の双眼鏡で野鳥を見られなくても、多くの場合、スタッフが望遠鏡で見せてくれる。同会の探鳥会情報は、同会のウェブサイトへ。  探鳥会の魅力を、石亀さんは「鳥を見て楽しい、仲間が増えてくれたらより楽しい。バードウォッチングを通じて話す仲間が増えてみんなが楽しくなる、その循環がすごく楽しい」と話す。探鳥会リーダーも務める松脇さんは「探鳥会で参加者の方々を案内すること自体が趣味みたいなものです。鳥に限らず、他の生き物とか自然とのつながりとかも担当者は詳しいので、そうした周辺情報もお届けできるかな。3月末ぐらいから6月中旬ぐらいまでは鳥の繁殖期になるので、鳥が積極的にさえずる時期です。鳴き声を頼りに鳥を探してみる非常にいい時期だと思います」といざなう。 「自然観察の入門」「推し活」  最後に、バードウォッチングの魅力をお二人に伺った。  石亀さん 今朝もツバメが飛んでいましたが、4月になってツバメが渡ってきて「春だ」と告げる。10月になってふと空を見上げると、ヒヨドリが集団で飛んでいるところが見られたりする。そういうことを通して季節を感じられる。自然の中で鳥というのはとても目立つ存在なんですよね。鳥が好きになって、その後に植物とか昆虫とかも好きになって、自然全体を好きになってくれる方が増えるといいな。鳥は昆虫とかに比べると目立って分かりやすいので、自然入門としては打ってつけです。そして、鳥の魅力をみんなに知ってもらいたい。みんなで楽しみたい。仲間が増えるといいな。  松脇さん 日本に野鳥は約600種類いますが、私がこの16年ぐらいバードウォッチングをしていても、まだ370種類くらいしか見たことがありません。見たことのない鳥を見たいという気持ちがずっとあります。海外にも鳥を見に行きたい。身近なところに結構たくさんの種類の鳥が暮らしていることに気づくこと、それ自体がすごく面白い。(バードウォッチングを通して)人生が豊かになるのかなと思います、大きく言えば。アイドルが好きな人は推し活をするじゃないですか。私には探鳥(バードウォッチング)が推し活です。ちにみに推しは「コマドリ」です(笑)。 双眼鏡の構え方・野鳥のいる場所…松脇さんが動画で解説

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