【ワシントン=池田慶太】米大統領選で民主党のハリス副大統領が大敗したことを受け、来年1月に退任するバイデン大統領(81)への風当たりが強まっている。 選挙戦撤退の判断が遅れ、トランプ前大統領の復権を許したとの批判が強い。4年前に現職だったトランプ氏を破り、喝采を浴びた頃の輝きは見る影もなくなっている。 「ジョー・バイデンのせいでハリス氏と民主党は負けた」。米政治専門紙ポリティコによると、ハリス氏側近は、こう不満をぶちまけた。 再選を目指していたバイデン氏は6月末のテレビ討論会で精彩を欠き、高齢不安が一気に高まった。それでも大統領候補にとどまり、撤退を表明したのは投開票3か月半前の7月下旬だった。ハリス氏は急ごしらえの選挙戦を強いられた。 そもそもバイデン氏は1期で退くとみられていた。2020年大統領選で次世代への「架け橋」になると宣言しており、勝てば二度と出馬しないと約束していたとされる。その後、「トランプ氏を倒せるのは自分だけ」という信念から再選を目指す方針に転じた。国民の多くが大統領職には高齢過ぎると世論調査に答えていたにもかかわらず、バイデン氏と側近たちは無視した。 米国では第2次大戦以降、現職大統領の不支持が支持を上回る場合、すべての後継候補が大統領選で敗北している。バイデン氏は新型コロナ禍で危機に直面した経済を立て直したものの、記録的なインフレ(物価上昇)を招き、不支持が支持を大きく上回る。ハリス氏はバイデン氏の負の印象を最後までぬぐえなかった。 バイデン氏は7日、ホワイトハウスでの演説で「平和的な政権移行」を約束し、国民に融和を呼びかけた。「私たちが達成したことを忘れないでほしい」とも訴えた。 だが、バイデン氏の「過信とエゴ」が選挙を台無しにしたとの不満が上がっている。バイデン氏の伝記を手がけたフランクリン・フォア氏は米誌への寄稿で、去りゆく大統領にこうメッセージを送った。 「任期の4年間がトランプ氏復活への道を開いたという事実から逃れることはできない。これが彼のレガシー(政治的遺産)だ」 バイデン米大統領の演説 200年を超える間、米国は、世界史上最も偉大な自己統治の取り組みを続けてきた。誇張ではなく事実だ。国民は投票で平和的にリーダーを選ぶ。我々のいる民主主義国では、国民の意思が常に優先される。 昨日、次期大統領に選ばれたトランプ氏と話し、彼の勝利を祝福した。平和的で秩序のある政権移行を確実にするために、私の政権が彼のチームに協力することを約束した。それが米国民にとって適切なことだからだ。 ハリス副大統領とも昨日、話をした。彼女は人々を奮い立たせる選挙戦を展開した。彼女とチームは誇りに思うべきだ。 選挙戦は「未来像」を競い合うものだ。国民はどちらかを選び、我々はその選択を受け入れる。自分たちが勝った時だけ国を愛するというわけにはいかない。自分たちに同意してくれる時だけ、隣人を愛するというわけにはいかない。誰に投票したかにかかわらず、互いを敵としてではなく、同じ米国人として見ることを願っている。 米国の選挙システムの信頼性に向けられた疑念が解消されることも願っている。公正、公平で透明性があり、信頼に足るものだ。私は大統領としての責務を果たし、憲法を順守する。(次期大統領の任期が始まる)来年1月20日、平和的な政権移行を行う。 皆さんと多くのことを成し遂げた。1兆ドルを超えるインフラ(社会基盤)の事業は、人々の生活を変えつつある。我々はともに、米国をより良い国へと変えてきた。任期はあと74日だ。全ての日を価値のあるものにしよう。 人生において挫折は避けられないが、あきらめることは許されない。いかに早く立ち直るかだ。我々はこの戦いに敗れた。米国は、皆さんが立ち上がることを求めている。