中国で「薬物入り火鍋」が横行しているが…日本の「ガチ中華」に危険性はないと言い切れる理由

中国では日常茶飯事の「薬物入り」の火鍋 中国・湖北省にある火鍋レストランが、「アヘン成分入り」のスープが提供されていたとして摘発された。昨年3月、公安局などによる飲食店を対象とした食品衛生検査で、店舗の廃棄油からモルヒネの陽性反応が出たものだった。 ただ、本件のニュースは、中国で大きな話題にはならなかった。今年3月下旬に広く報じられてもニュースランキング50位にも入っておらず、関心は低調だった。 「まったく珍しくないことだったのでしょう。中国では年に2桁の店が摘発されていますから」 こう話したのは、上海の中国人グルメブロガーのリ・インヒンさん。実際、少し調べただけでも、火鍋にアヘン成分を混入して摘発された事例は、中国各地で確認されていることがわかった。なぜ火鍋店でばかり問題が起きているのか、日本の火鍋店は大丈夫なのか、問題を追ってみた。 摘発された店舗の店主は、「客寄せのため」、「粉末にすればバレない」として、自宅で保管していたケシ殻を八角や草果などの香辛料と混ぜて粉末化し、料理に使用していた。調査時には「自家製調味料」と主張したが、公安の担当者が不審に思い、成分分析を行った結果、モルヒネやコデインなどのアヘン成分が検出された。 ケシ殻とは、アヘンの原料となるケシの乾燥殻部分であり、長期摂取すれば神経系や消化器系に障害を引き起こし、依存症にもつながる危険性がある。 味を引き立てるものではなく、中国では依存性に「客寄せ」を期待して使用されることが多い。ちなみに、日本では規制の枠組み上「アヘンアルカロイド陽性」と表現されるため、ケシ殻も“アヘン”で総称されるが、中国ではケシ殻とアヘン成分は分けて扱われる。 過去に中国で起きた、想像を絶する事件 問題の店主は今回「生産・販売有毒・有害食品罪」で懲役6カ月・執行猶予1年、飲食業の永久関与禁止、販売価格の10倍の罰金が命じられ、廃業となった。中国の刑法では、食品への添加は5年以下の懲役と罰金、客に健康被害があれば5〜10年の懲役が定められている。 ケシ種子の不法取引も3年以下の懲役で禁止されているが、なぜ火鍋にばかりこのような事件が集中するのか。リさんはこう説明する。 「その理由は複数あります。火鍋は、薬膳の香辛料がたくさん使われるので、隠しやすいですし、客も気付きにくいんです。事前に仕込みやすく、火鍋で最も好かれるのが、クセになるスープ、です。人気料理とあって店の競争もかなり激しいのも一因ですが、一番大きいのは、法律で禁じられる前は、秘密の隠し味として普通に使っていた地域がありました」 事実、中国のSNSを見回すと、この話題に関して「もともとケシ殻は、地域料理の香辛料だった」とか「ちょっとくらいなら平気じゃないのか」という甘い認識も見られた。これが摘発されても社会的議論に発展しにくい一因かもしれない。 過去にはラーメン店や串焼き店でも同様の摘発が報じられており、「客が病みつきになるから」と信じる経営者の認識も問題視されている。ただし、中国当局の調査結果によると、火鍋スープ1リットルあたりに検出された量では、たとえ飲み干しても依存症を引き起こす濃度には達しないとされている。 アヘン成分以外にも、料理への薬品投入は絶えない。たとえば安徽省では、火鍋スープに市販のビタミンC錠剤を通算44瓶も投入した店が、10万元(約194万円)の罰金処分を受けた。健康被害は確認されなかったが、ビタミンC錠剤は医薬品に分類されるため、食品への添加は違法と判断された。 店主は「抗酸化作用で肉や野菜の変色を防げ、風味も保てる。レモン汁の代わりになっていた」と弁明した。また、江蘇の火鍋チェーンでは、「ケシ殻+ビタミンC錠剤」というダブル投入が発覚したこともある。 ただ、料理に麻薬を投入するケースは、中国に限らない。インドでもカレーにアヘン成分を入れていて罰金刑になったケースが複数あり、アメリカでコカイン入りフライドチキン、イタリアで大麻オイル使用パスタ、タイで覚せい剤入りトムヤムクン、メキシコでマジック・マッシュルーム入りタコスなども問題になっていて、日本も例外ではない。さらに近年では、大麻入り料理で健康被害が出た事例が世界中で起きており、注意が必要だ。 地域によっては、宗教儀式や伝統薬として“合法的に”使用されることすらあり、世界中を見渡せば、「食とドラッグ」の問題は想像以上に多いのだ。 では、近年、日本で増加中の“本場系”中華食堂、いわゆる「ガチ中華」で同様のリスクはないのか。日本中国料理協会の関係者に聞いてみた。 「日本でも保健所による抜き打ち検査があって、協会でも定期的なチェックをしています。中国人が日本で飲食店を開業する際は、食品衛生法などの厳格な指導があり、法令順守の意識は高いです。そもそもケシ殻や麻薬類の入手が簡単ではないです」 日本では昔、市販の風邪薬にケシ柄が使われていたが、昭和29年にあへん法で所持も禁止された。 「仮に調味料として偽装しても、発覚すれば即廃業となるリスクがあって、日本で飲食店を出すような資金力のある経営者にとってはまったく割に合いませんし、味に対して意識の高い経営者がほとんどです。親しい中国人シェフも『日本で手に入る山椒、花椒、クミン、八角、唐辛子などの合法食材で十分にクセになる味は出せるのに』と言っています」 中国での摘発例が多いのは事実だが、さすがに日本国内での危険性が高くないと言えるだろう。 「スーパーの野菜は解毒作業が必要」…在日中国人が帰省して衝撃を受けた「劣悪な食品事情」

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