若者の「食べログ」離れ? 2005年にサービスを開始し、長らく飲食店探しの定番だった「食べログ」。 しかし今年3月13日、中年世代と思われるXユーザーが次のポストを投稿し、3.9万“いいね”(4月11日現在)を獲得して話題になっていた。 《全員がZ世代の会社と仕事しているのですが、次出すコンテンツ案として『なぜおじさんは食べログで予約するのか?ってどうですか?上の世代は食べログでしか予約しないらしくて〜!!!』って言われて、その日も食べログで予約した居酒屋で呑む予定あったおじさんで、すごい恥ずかった。》 1990年代後半から2010年代初頭に生まれた若者たちであるZ世代にとって、飲食店探しや予約において、もはや食べログは選択肢に入っていないということなのだろうか。では、彼ら・彼女らはどこで情報を得て、どのように予約をしているのだろう? 実際に20代のZ世代に話を聞いてみると、インスタやTikTok、Googleマップを駆使した“全く異なる動線”が見えてきた。しかも美容院なら「ホットペッパービューティー」、映画館なら公式サイトなど、他業種においては予約ツールがほぼ固定されているなかで、飲食店だけは「世代によって使うサービスが違う」という特異性も浮かび上がってくる。 そこで今回は20代の男女3名に、“お店選び”のリアルを聞いた。いま起きている世代間ギャップについて考えてみたい。 Googleマップで調べ、食べログで予約 最初に話を聞いたのは、週に1回ほど外食をするという20代の女性・Aさんだ。 「私はまず友人と落ち合う場所を決めてから、その周辺でお店を探すことが多いんです。だから飲食店探しにはGoogleマップが便利でよく使っています。あとはインスタグラムやネット検索を併用することもありますね。特にインスタでは『地名+グルメ』のハッシュタグで検索して、お店の雰囲気や料理の写真を見比べています」 その一方で、インスタから直接予約をすることはあまりないという。 「インスタで予約しようとすると操作が多かったり、リンク先のページが複雑だったりして面倒なんです。なので、予約自体はけっきょく食べログを使うことが多いですね」 では、お店を選ぶ際に何を重視しているのか。 「口コミはGoogleマップのものをめちゃくちゃ見ます。個人的な感覚ですが、食べログよりも“サクラ感”が少ない気がして。食べログの口コミって、ちょっとグルメなおじさんが書いてる印象が強くて、主観的すぎたり、逆に信憑性に欠けたり感じることが多いんです。逆にGoogleマップの口コミは、あまりグルメに詳しくない人も気軽に書いている感じがして、よりリアルな声が集まっている気がします。味だけじゃなく、店員さんの態度やお店の雰囲気など、細かいところも本音で書かれている印象がありますね」 Googleマップで店を調べ、口コミや写真を参考にするというAさんだが、こんな“落とし穴”も経験していた。 「以前、Googleマップで見つけたお店にそのまま直行したんですが、地図上では“営業中”と表示されていたのに、実際は臨時休業だったんです。後からそのお店のインスタをチェックしたら、『本日、都合によりお休みします』ってちゃんと投稿されていて……。あのときは、リアルタイムの情報をSNSで確認しないとダメだなと痛感しました」 情報を“ディグる”こと自体が楽しい 続いて話を聞いたのは、学生時代に飲食店で長くアルバイトをしていたという20代の男性・Bさん。彼は気になるお店を見つけてもすぐに予約はせず、複数の候補を比較・検討する“ディグる派”だという。 「最初はインスタの検索や、フォローしているアカウントの投稿からお店をチェックします。ここ良さそうだなと思ったら、いったんGoogleで検索し直すんです。すると、似たようなジャンルや価格帯のお店がいくつか表示されるので、そのなかから自分の予算や店内の雰囲気、写真や評価などを基準にして、3つくらい候補を絞り込んでいきます」 このようにしっかり比較したうえでお店を決めるスタイルだが、なぜすぐに即決しないのだろうか。 「やっぱり、もっと良いお店があるかもしれないっていう気持ちがあるんですよね。せっかくお金を使うなら、ちゃんと調べて納得できる選択をしたい。そうやって情報を比較しながら探す時間自体が、息抜きにもなって楽しかったりするんです」 いわば“お店選びそのものを楽しむ”というスタンスは、検索スキルに長けたZ世代らしい姿とも言えるかもしれない。 さらに、Bさんは飲食店で働いた経験も踏まえ、予約の際には「お店側の視点」も意識しているという。 「予約するときは、できるだけお店の公式サイトや電話を使っています。ネット予約だと決められた時間枠しか出せなかったり、細かい調整ができなかったりするから、あえて“週末は電話予約のみ”って設定してるお店も結構ありますよ。表向きには“予約受付終了”と表示していても、常連さんの電話には対応してることもあるし。私の元バイト先もそのような調整をしていました。 つまり、本当に使える席数って、実はサイト上で見えてる数字より少なかったり、特定の客層に優先的に確保されていたりすることもあるんです。予約サイト経由だと若年層っぽい人にはあまり重要な良い席を割り当てないっていうケースも、一部の飲食店では正直あると思いますよ」 Bさんはさらに飲食店経験者ならではの深い話を教えてくれた。 「これはもちろん稀なケースかもしれませんが、忙しい日や金曜・土曜の夜なんかは、お店としても“どの客層をどこに入れるか”って戦略を立てているところもあるんですよね。そういったバイト経験からか、予約サイトはなんとなく“二次流通”的な感じがしてしまって、利用は避けています。 それから、公式サイトの情報や更新頻度、写真の雰囲気を見れば、どれだけお店が発信に力を入れているかもわかる。だから判断材料としては公式サイトのクオリティもかなり信頼していますね」 Bさんいわく、表に見えている「予約可能」の裏には、飲食店側の事情や戦略が複雑に絡み合っているとのこと。Z世代のなかには、そうした“構造”まで読み取ったうえで、予約手段を選び取っている人たちも少なくないようだ。 誰と食事に行くかで選び方を変える 最後に話を聞いたのは、外食の際には必ずと言っていいほど自分で予約をするという20代男性・Cさんだ。 「誰と一緒に食事をするかによって、お店選びの基準を変えています。たとえば、友人とサクッと居酒屋に行くときは、Googleマップで近くのお店を探して、そのまま入店することも多いです。だけど恋人とのデートや、仕事関係の会食、取引先との接待のときは、お店の“雰囲気”を大事にしていて、インスタグラムやTikTokで事前にリサーチしますね。 そのうえで、予約は食べログを使うことが多いです。上の世代の人は食べログに慣れている人が多いので、例えば『このお店、百名店に選ばれてるんですよ』って言えるだけで、ある程度、お店への信頼感にもつながる気がして」 世代によって“見慣れている情報源”が異なることを意識した、非常に戦略的な選び方と言えるだろう。しかし、予約サイトに頼りすぎたことで、痛い目を見たこともあったそう。 「接待のために予約したお店で、しっかり予約完了の画面まで確認していたはずなんですが、当日お店に行ったら『予約が入っていない』と言われてしまって……。しかも、そのお店は雑居ビルの10階にあって、エレベーターが一基しかなかったんです。当日は人が並んでいて、大事なお客様を階段で登らせる羽目になってしまいました。味やサービスは悪くなかったんですけど、アクセスや建物の構造までチェックしておくべきだったと、かなり反省しました」 ———Z世代の若者たちは、飲食店選びにおいて「検索→比較→予約」というプロセスを非常に柔軟に、そして目的や相手によって使い分けている模様。 冒頭で紹介したXのポストを見ると、もうZ世代は食べログを利用していないという印象があったが、ケースバイケースで食べログを利用する20代もまだまだいるようだ。ただ“食べログオンリー”で探す中年世代とは異なり、利用するツールのうちのひとつという認識なのかもしれない。 飲食店の選定・予約の方法は、世代間ギャップが生まれやすいようだ。 (取材・文=逢ヶ瀬十吾/A4studio) 「ドンキの食料品」の快進撃が止まらない…人気のウラに存在している「賛否両論」