ロシア軍“突撃専門”の自殺部隊「ストームZ」に“中国人傭兵”が…バフムートの激戦でも「兵士150人のうち生存者は15人」の玉砕戦法

 第1回【ウクライナで拘束の「中国人兵」が衝撃の暴露…敵軍の居場所を割り出せれば「外国人兵が戦死しても構わない」というロシア軍のヤバすぎる本音】からの続き──。4月14日の会見では、2人目の捕虜も傭兵となった経緯を詳細に語った。1人目は中国国内で採用担当者に連絡を取ったのに対し、彼はロシア国内で傭兵の募集を知った。(全2回の第2回)  *** 【写真】ロシア軍での“非人道的な仕打ち”の数々を告白した「中国人捕虜」…必死の表情で中国への帰国を懇願していた  男性は1998年に生まれた27歳。会見では自身のことを「裕福な家庭の出身」と説明し、上海で消防士として勤務していたと明かした。  昨年12月に休暇を取り、観光目的でロシアを訪れた。「ロシアで少しカネを稼ぎたい」と考え、現地で仕事の斡旋を依頼した。 習近平国家主席はどう動くか  最初は建設業の仕事を紹介されたが、「ロシア軍に入隊すれば200万ルーブル(約340万円)」と呼びかけるオンライン広告を見たことなどにも影響され、最終的にはロシア軍と傭兵の契約を結んだ。  契約時の心境について、男性は会見で「お金は稼ぎたかった。だが戦争に巻き込まれるとは考えていなかった」と振り返った。  ロシア軍は男性に対し、20万ルーブル(約34万円)の残高が記録されていたプリペイド式のクレジットカードを渡した。  ところが、渡されたはずのクレジットカードだけでなく、男性の私物であるスマートフォンもロシア軍は定期的に没収した。スマホには男性が個人で契約しているクレジットカードとリンクしたアプリが入っていた。  ロシア軍は没収で手に入れた2つのクレジットカードを使い、「燃料費」や「充電器購入費」などの名目で勝手に決済する。結局、男性に傭兵としての報酬が支払われることはなかった。 ロシア軍の中国人差別  男性はモスクワに1週間滞在すると、1人目の男性と同じように、ロストフの軍施設に送られた。  施設で6日間の訓練を受けると、ロシア軍が攻撃を続けているウクライナのドネツク州に向かうよう命じられた。3月に到着し、あちこちの塹壕をたらい回しにされた。男性は他の外国人傭兵と意思疎通をしようと努力を重ねた。  3月下旬、男性は少人数の部隊に配属され、ウクライナ軍に向かって徒歩行軍するよう命令された。部隊の兵士たちは何時間も身を隠しながら、ウクライナ軍によるドローン攻撃と砲撃に耐えた。  4月5日、男性がウクライナ軍の攻撃から逃れようと全力で走っていると、生まれて初めてウクライナ兵に遭遇した。そして捕まって捕虜となった。  ロシア軍で地獄の日々を過ごしている中国人は彼らだけではなく、他にも大勢いる。キーウ・インディペンデント紙は、ロシア軍が中国人傭兵を徹底的に差別し、その生命も軽視していると詳しく報じた。  そもそもロシア軍では非白人の外国人傭兵に対する差別が横行しているという。訓練キャンプでは黒人、アラブ人、中国人に対する深刻な差別行為が繰り返され、会見で1人目の捕虜は「自殺した外国人傭兵がいた」という話を耳にしたと証言した。  同紙は多くの中国人傭兵が「ストームZ」という部隊に配属されているとも伝えた。この部隊はロイターが2023年に「懲罰部隊」と報じたことでも知られている。 恐怖の懲罰部隊「ストームZ」 「プーチン大統領の右腕」とも呼ばれた実業家、エフゲニー・プリコジン氏が創設した民間軍事会社「ワグネル」は、ロシア軍がウクライナ軍の反撃で多数の兵士を失ったことから、約4万8000人の囚人を傭兵として採用した。  プリコジン氏は自ら刑務所に赴き、「戦場で生き残った者には恩赦が与えられる」との甘言で重罪の囚人をスカウトした。だが囚人が配属されたのは突撃専門という、戦死の可能性が極めて高い特別部隊だった。  2022年7月から約4万8000人の囚人を傭兵として採用。その大半がドネツク州の激戦地に投じられ、州を制圧するため1万7175人が戦死した。35・7%という戦死率は非常に高いが、受刑者以外の戦死者は2372人と少なかったことも注目を集めた。計算すると戦死者の88%が囚人兵だった。  プリコジン氏はプーチン大統領との関係が悪化し、2023年8月に飛行機事故で死亡した。今でも暗殺説が根強いことをご存知の方も多いだろう。  ロシア軍はワグネルの囚人兵に関心を持っていたことに加え、プリコジン氏の死亡で仕事が発注できなくなったこともあり、ストームZを創設した。  ロイターが2023年10月6日に配信した「焦点:ロシア軍懲罰部隊『ストームZ』、弾薬も食料もなく前線投入」との記事によると、飲酒や命令違反などが発覚して懲罰の対象となったロシア兵と、ワグネル流の囚人兵からストームZは構成されているという。 中国人傭兵の戦死者は増加  23年6月、バフムートの激戦地にストームZの兵士120人が投入されたが、生き残ったのは15人に過ぎなかったとロイターは伝えた。この場合、戦死率は87・5%という異常な数字となる。これでは懲罰部隊というより自殺部隊だろう。  この懲罰部隊に中国人傭兵が配属されているとキーウ・インディペンデント紙は報じた。しかし、これはおかしいと誰もが思うだろう。彼らは契約を結んでロシア軍に雇用されたのであり、軍紀やロシアの法律に違反したわけではない。  同紙によると、ロシア軍は突撃作戦にこだわっており、結果として兵士の戦死率が非常に高い。そしてロシア軍はロシア人の兵士を突撃させることには消極的なのだという。ロシア人兵士の身代わりを求めて外国人傭兵の獲得に資金を投じ、ストームZのような突撃部隊に送り込んでいるのだ。  4月11日、ゼレンスキー大統領は少なくとも数百人の中国人傭兵がロシア軍に参加していると発表した。ウクライナの情報機関は163人の中国人傭兵については個人情報を把握しているという。  キーウ・インディペンデント紙はストームZに配属された2人の中国人傭兵が戦死したことを報道。中国人傭兵の戦死者は増える一方で、同紙は「遺族に対して40万元(約770万円)を支払う必要が生じているが、支払いは頻繁に遅延している」と伝えた。 ゼレンスキー大統領は中国を批判  契約満了を迎えた中国人傭兵に対し、雇用主であるロシア軍が帰国を妨害するケースも確認された。昨年7月、軍事ブロガーのインタビューに中国人傭兵が応じ、上官に「戦争に勝利するまで契約は解除しない」と言われたことを暴露したのだ。  ウクライナ政府は、中国政府が傭兵の募集を支援しているか、あるいは黙認している可能性が高いと非難している。  ゼレンスキー大統領は「ロシアは中国のSNSを通じて傭兵を募集している。中国政府もこの事実は把握している」と指摘した。  第1回【ウクライナで拘束の「中国人兵」が衝撃の暴露…敵軍の居場所を割り出せれば「外国人兵が戦死しても構わない」というロシア軍のヤバすぎる本音】では、34歳の中国人男性が名誉と高給に惹かれて傭兵になる経緯、ロシア軍の血も涙もない“突撃作戦”の結果、中国人傭兵が逆にロシア軍から化学兵器で攻撃されるという異常事態などについて詳細に報じている──。 ◆参考記事 Chinese POW says he doesn’t want to return to Russia, hopes to go back to China(THE KYIV INDEPENDENT:4月10日) 'Don't come, there's nothing good here' - Chinese soldiers warn against following Russian propaganda to fight in Ukraine(同:4月11日) About 200 Chinese nationals fighting for Russia as mercenaries in war against Ukraine - Reuters(UKRINFORM:4月12日) Chinese POW says Russia recruits mercenaries not only from China(同:4月14日) Chinese POWs ready for exchange, ask Beijing to take them home(同) Captured Chinese fighter says Russians took his army pay(同) Captured Chinese soldier said videos on China's TikTok convinced him to join Russia's armed forces after he lost his job(BUSINESS INSIDER:4月15日) 焦点:ロシア軍懲罰部隊「ストームZ」、弾薬も食料もなく前線投入(ロイター:2023年10月6日) ワグネルの受刑者戦闘員、1万7千人が戦死 激戦地バフムートの9割(朝日新聞電子版:6月1日) デイリー新潮編集部

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