トランプ政権の関税措置をめぐる交渉から帰ってきたばかりの赤沢亮正・経済再生担当相に注目が集まっている。ご本人は帰国後「機内でパジャマを着ている最中にトランプ大統領が出てくることがわかってびっくりした」だのと興奮冷めやらぬ様子で土産話を披露しているが、実のところ交渉は始まったばかり。まだ何も成果を得られたわけでもないのだ。永田町では「こんな軽い男に大事な交渉を任せて本当に大丈夫か?」といった不安視する声が出始めている。 *** 【写真】SNSでも浮かれっぱなし。絵文字を駆使した「赤沢大臣の無邪気な投稿」 やたら「パジャマ」を強調 「早ぇーし」 帰国直後の4月18日夜、自民党のYouTube番組に出演した赤沢氏は、司会役の小野寺五典政調会長からペットボトルのお茶を差し出され、軽い“コント”に応じてみせた。16日夜(日本時間17日午前)、ホワイトハウスでの会談直後に行われたぶらさがり取材の最中、赤沢氏とスタッフとの間であったやり取りの再現である。 トランプ大統領と満面の笑みで写真に収まる赤沢大臣 「ぶら下がり中、喉が渇いたと赤沢さんが近くにいたスタッフに声をかけると、すぐさまお茶が差し出された。その時、緊張感から解放された赤沢さんが『(お茶が出てくるのが)早ぇーし』と独りごちながらゴクリとお茶を飲んだことをネタにしたのです」(政治部記者) 行きの機内でトランプ大統領本人が急遽交渉に出てくると判明した時の状況を小野寺氏から聞かれた赤沢氏は、ご満悦な様子で次のように話した。 「端的に言うとみんなパジャマに着替えて、それぞれ快適なものを持って行きますし、パジャマない人はパジャマ貸してくれといえば、航空会社の方で用意してくれますし、みんなパジャマの状態の時に、外務省職員、経産省職員の幹部がですね、2人ともパジャマで私のところにすごい勢いですっ飛んでくるんで…こんな格好ですみませんとパジャマの格好で…」(自民党のYouTube番組より) パジャマ、パジャマと口にすること実に6回。このやり取りはニュース番組でも散々流れたので、うるさいと感じた人も多かったろう。このように赤沢氏はトランプ会談にかこつけてやたら自分をキャラ立たせようとしている節があるのだ。 出発前、森山幹事長に「叱責されていた」 そもそも、先週までは「こんな大臣いたっけ?」という扱いだった人物になぜこんな大役を任されたのか。 「石破さんが信頼して任せられる人がいなかっただけです。本来は、第一次トランプ政権時に日米貿易協定を担った経験がある、“自称・トランプから認められた男”こと茂木敏充前幹事長や、1990年代に貿易摩擦が激化する中で、通産官僚として日米自動車交渉に携わったこともある斎藤健・前経産相のような経験者に任せるべきところ。ただ、石破さんはこういった実力者たちとの折り合いが良くないのです。結局、外交経験が全くない、“趣味は石破茂”と公言するくらいの最側近である赤沢さんに委ねるしかなかった」(同) 大役を拝した直後から、赤沢氏のはしゃぎぶりは目に余るものだったという。 「いろんな省庁に『トランプとディールできる材料はないか?』と上から目線で電話しまくり周囲を混乱に陥れた。それを耳にした森山裕幹事長が烈火の如く怒り、アメリカへの出国前、一時的に幹事長室への『出禁処分』にしたほどでした」(同) 「トランプを怒らせなかったこと」くらいが今のところの成果 そして想定外の展開でトランプと交渉できたことでマスコミから一躍注目を浴びたわけだが、はしゃぎぶりが止まらないことを周囲は冷ややかに見ているという。 「現段階で、別にトランプから何かを引き出したわけではありません。今のところの成果といえば、ゼレンスキーの轍を踏まず、『トランプを怒らせなかったこと』くらい。今月中にも2度目の会談を控えており、本格的な協議はこれからといったところです」(自民党関係者) にもかかわらず、トランプ大統領が掲げるスローガン「MAGA」(マガ=米国を再び偉大に)が記された赤いキャップを交渉中に満面の笑みでかぶり、ぶら下がりで「格下の格下の私が…」と興奮気味に言い放った姿勢が政権や与党内で呆れられているわけだ。 「すでに野党からも批判が出ていますが、仮にも一国の代表として対等に交渉に臨むわけです。あんな軽い調子だと、この先、足元を見られかねません」(同) ぶら下がり会見での応答の仕方を問題視する声も出ている。 「『為替や安全保障の問題は議題に上がりましたか』という記者からの問いに『為替は出ませんでした』と答えていましたが、すなわち、安全保障の問題は出た、と答えているようなもの。交渉に関わる話なんですから、本当は『中身は一切言えません』で貫き通すべきです。『浮かれているんだかなんだか知らんが、交渉内容を漏らすな』と怒っている政権幹部もいます」(同) 赤沢氏は初当選以来、一貫して石破首相を支持していたこともあり、なかなか大臣になれない不遇の政治家人生を歩んできた。ようやく脚光を浴びてはしゃぎたくなる気持ちもわからないわけでもないが、国益を左右する大事な交渉である。気持ちを引き締めて今後の交渉に取り組んでほしい。 デイリー新潮編集部