覚醒が起きた……感じるか?『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(2015)で主人公の1人フィンに大抜擢されたジョン・ボイエガが、キャスティングに至るまでのハラハラドキドキの裏話を披露。米シカゴで開催のイベント「C2E2」で語られたところによると、当時お金もなくてギリギリの状態だったボイエガは、J・J・エイブラムス相手にブラフをかまして凌いだそうだ。 ©︎ THE RIVER 米が報告するところによると、ボイエガは長期間にわたる『スター・ウォーズ』新作のオーディションで疲弊していたという。「当時、もうずっとオーディションを受け続けていたんです。だから、彼(J・J・エイブラムス監督)に威厳を奪われたような気がしていて」。 そこでボイエガがとった作戦は、「多忙であるフリをすること」。つまり、“武士は食わねど高楊枝”である。ボイエガは忙しいフリをして、J・Jに「僕は他にもやることがあるんで」と、まるでオーディションにそこまですがりついていないように振る舞った。 このブラフが効いたのか、J・Jから「どこにいるの?」と尋ねられた。ボイエガはハッタリを続け、「グリニッジのアートショーに来てるんですよ。いやー、めちゃくちゃ忙しくって」と偽る。J・Jの方はどこにいるんですかと聞いてみると、「僕は今メイフェアのレストランにいるんだけど、ちょっと今話せる?結構大事な話があるんだけど」。 ハッタリ作戦は成功か?しかし、実際のボイエガはピンチだった。「その時僕は、口座に45ポンドしかなかった」というのだ。日本円にすると、せいぜい8,000円程度。「J・Jに会いに行く交通費で33ポンド83ペンスかかる。計算してみてって話ですよ」。ざっくり、全財産8,000円のうち、6,000円くらいの交通費をかけて会いに行くわけだ。もちろん、そこまでギリギリである素振りは見せるわけにかないだろう。ボイエガは「若く多忙な役者」を演じているのだ。 それでボイエガは、ほぼ全財産をかけてJ・Jとを訪ね、いざ面会となった。「一歩一歩、全部緊張しました」とボイエガ。「J・Jは驚異的なナイスガイ。もし彼が僕を落としても、きっと食べさせてくれるだろうと思いました」。 席に着くと、J・Jから「また来てくれてありがとう。オーディションをたくさん重ねたから、負担をかけてしまったと思う」と労われた。ボイエガはつい「お願いします。オーディション、また受けます。イギリス人でもスコットランド人でもナイジェリア人でも、なんでもやります」とすがったという。するとJ・Jから「君は『スター・ウォーズ』に出る」と告げられたそうだ。 その瞬間は時間が止まったとボイエガ。「テーブルの上に置かれていた小さなカップに角砂糖が何個入っているのかとかにも気付く感じ。全てが非現実的でした」。そこに脚本家のローレンス・カスダンがやってきて、こう声をかけられたそうだ。「この映画で人生変わるぞ、キミ」。 実際、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』への出演で、ボイエガの人生は一変した。映画は全世界20億ドル超の興収を記録し、今なお全映画史上5位。シリーズ史上最高額は未だ破られていない。 もっとも、ボイエガの場合は少しネガティブな変化もあった。シリーズが『最後のジェダイ』『スカイウォーカーの夜明け』と進むにつれ、彼が演じるフィンの出番は縮小されていったのだ。「『スター・ウォーズ』はいつだって白人的でエリートな空間にいるような雰囲気があった」と、ボイエガは居心地の悪さを感じていたことを。「俺たち(黒人)が親友の役をやるのは良いらしい。でも、いざヒーロー役に触れたり、主役になったり、先駆者になったりすると、“ちょっとやりすぎだろ!迎合しやがった!”って言われるんです」。 ちなみにボイエガの起用には、もちろん彼自身の実力や人柄、そしてブラフ作戦も作用しただろうが、実はもあった。ボイエガの主演映画『アタック・ザ・ブロック』を気に入ったクルーズが、『ミッション:インポッシブル』シリーズを共にしていたエイブラムスに「この子を見てみろ」と紹介していたというのだ。「それでJ・Jも見てくれて、あれこれあって、4~5年後に映画(『スター・ウォーズ』)に出ることになりました」。 Source: