逆に生きる気力が湧いた?「いのちの電話」トンデモ相談員の実情

いのちの電話がつながらない… 自身のYouTubeチャンネルで“自殺”について取り扱うと『ひとりで悩まないで』という文言と電話番号が表示される。いわゆる“いのちの電話”というやつだ。 全国50ヵ所のセンターで運営されていて、電話に出る相談員はボランティアだという。完全に無償なのは当たり前で、相談員になるには1〜2年の研修が必要で、さらに費用と交通費は自己負担になるらしい。 そんな損ばかりの役回りを誰がやるんだ?と思うが、相談員は全国に約5700人いるそうだ。ただ、数は足りておらず、なかなか繋がらないのが現状だという。 以前、僕のXに 「樹海で死にたいので案内してくれませんか?」 とDMを送ってきた30代の女性Tさんがいた(僕は青木ヶ原樹海を20年以上取材している)。実際に案内した所、死ぬ気が失せてしまったらしく、現在も生きている。 彼女はもともと、いのちの電話の“ヘビーユーザー”だった。 「20代後半の頃からかけていましたね。とにかく繋がりませんでした。本当に死にたいと思ってる時にかけるから、つながらないとつらいですよね。いのちの電話には大きく2パターンあって、相談者は都道府県の固定電話か、フリーダイヤルにかけます。 フリーダイヤルが一番繋がりやすかった。複数回線に自動的に繋がる仕組みで、長時間利用者や複数回利用者の番号は一定期間制限されるらしいです。固定電話は1本の回線を他の相談者と奪い合うから全然繋がらない」(以下、「」内はTさん) 逆に相談者が相談に乗ることも 県ごとにも繋がりやすさの差があるそうだ。 「私はつながらない時は、北海道から沖縄まで順々にかけましたね。県によって繋がりやすさは全然違う。東京、神奈川、埼玉、大阪、愛知、などの大都会は全く繋がらなかった。東北地方など人口の少ない地域の方が繋がりやすい。一番繋がりやすかったのは、九州の佐賀県でした」 自分の住んでいる県以外に電話をかけても、相談には乗ってもらえる。ただ困ることもあるという。 「たとえば岡山にかけていて、『どこに住んでいるの?』って聞かれて『東京です』って答えると、『東京のデータはないんですよ』って制度の相談とかできなかったりするんですよ。まあ、制度は自分で調べればなんとかなることもありますが。対応にも地域差がありましたね」 東北のいのちの電話では震災の話が持ち出されることが多かったという。 おばあちゃん相談員は、 「震災で身内が全部亡くなった。命があるだけでありがたいんだよ」 と語るうちに、当時を思い出したのかおいおいと泣き出した。 「いつの間にか、私が相談に乗っていました。おばあさんは『話せて助かった』って言ってましたけど、私はなんだかトラウマになってしまいました」 他にも地域ごとに特徴があるという。 「関西の人とは口喧嘩になることが多かったですね。傾聴できなくて、自分の考えをズケズケ言ってくる。『それはあなたが甘えているからよ』、『若いんだからやり直せるでしょ』とか。でも不思議と関西弁ではないので、聞いてみると、関西弁は禁止らしいです。『関西弁禁止!!』とポスターが貼ってある事務所もあるそうです。 あと、私の出身である岡山の相談員には、『東京が良くないんだよ。岡山に帰っといで』っていつも言われました」 そんな地域差はまだかわいい方で、中にはトンデモな相談員もいる。 「死にたいのは霊のせい」 「すごくぶしつけな事を言ってくる人は多かったですよ。私は親のせいで死にたくなっていると相談しているのに、『あなたが死んだら親が悲しむよ!!』ってお決まりで言ってくる人がほとんど。 あとは、『勉強していい大学入って、素敵な男性と結婚したら死にたくなくなるよ』って言ってくる昭和のおばちゃんみたいな人も多かったですね。『とりあえず薬飲みましょう』って言われてガチャ切りされたりもしました」 ただ、もっと酷いカウンセラーもいたという。 「霊の話は結構出てきますよ。私が『死にたいです』って言うと、『最近、心霊スポットに行きましたか?』とか『霊障のある石を拾ってきませんでしたか?』とか答えられるんです。 一番びっくりしたのは、『死にたいのはあなたの感情ではなくて、取り憑いている霊の感情だから!! 外に出ないで!!』って言われたことですね。その人は自称霊感がある人で、『自分も理由なく死にたくなる時があって、そういう時は記憶が飛ぶんです。いつの間にか、ビルの屋上にいたり。だから外に出ていると危ないんです』って力説されました。 だったら霊に対する対処法を教えてください、って言ったら、『それは自分でも分からない』って言われました。その人からは『精神病院は霊に悪影響があるから行かない方がいい』って言われて、通院をやめてしまいました。後から考えると絶対に良くなかったです」(Tさん) 相談員に依存してしまった 他にも、 『自殺した霊が苦しんでいるのをよく見かける。自殺したらあなたも成仏できないよ!!』 などと脅されたこともあったという。 この話には、さすがに僕も驚いてしまった。 研修期間を設けていると言うが、一体何を研修しているのだろうか?別にすべてのオカルトがダメとは言わないが、“いのちの電話”で言うことではないだろう。 「相談員と相談者は表裏一体なんですよ。相談員に話を聞くと、実生活で居場所がないけどここだったら必要とされていると思って救われるとか、身内の自殺を止められなかった後悔をここで晴らしているとか、よく聞きます。 私も“いのちの電話”じゃないけど、相談員をやったことはありましたしね。相談者で、死のカウントダウンしてくる人が多いんですよ。『●月●日に死にます』とか、『20歳になるまでに死にます』とか。私もそうだったけど、その言葉の裏には『助けて欲しい』って気持ちがあるんですよ。だから助けてあげたいと思った。 ただ今思えば、私は相談窓口に頼りすぎたんだと思います。『助けて欲しい!』ってすごい思ってた。でも“いのちの電話”にかけていくうちに『人は自分を助けてくれないんだ』って腑に落ちました。 こういうサービスって絶対に『あなたは一人じゃない』って書いてあるけど、私は『あなたは一人です』って言われたほうが楽ですね。結局自分の人生は自分で生きるしかないし、誰も背負ってくれないですからね」 と、Tさんは笑顔で語ってくれた。 「死にたいならさっさと死ね」 彼女の衝撃的な話を自分のYouTubeチャンネルでも紹介した。すると、公開直後からどんどんコメントがついた。一部、ピックアップする。 ・10年前、過労でうつ病の時、夜中の0時に電話をかけたら『こんな時間に電話するな!死にたいならさっさと死ね』と言われた ・虐待相談したら「緊急性なし」と軽く扱われ、絶望を感じました。対応者が専門性に欠ける印象でした ・舌打ちされ「疲れてるから手短に」と罵倒されて以来怖くて使わなくなりました ・つらくてかけたら「他にも同じような人はたくさんいる」とあっさり切られ、冷静になり今は元気。 ・自殺寸前まで追い詰められていた夫が電話をかけると「どうにもできない」と言われた ・7年前、適応障害でかけたら「解決できない」とガチャ切りされた。怒りが逆に生きる力になりました ・中学生の時、めんどくさそうな対応で「あなたが悪い」と言われ、電話したことを後悔しました と、これでもかというほど不満のDMがわんさか来た。 皮肉なことに、この動画にもしっかり、「ひとりで悩まないで』という言葉と共にいのちの電話の問い合わせ先が表示されていた。もちろん、不満に思っている人ほどコメントを投稿しがちだ。ただ、実際につながらなかったり、変な対応をされたりした人は多くいるのだろう。 事実関係を確かめるため日本いのちの電話連盟に問い合わせると、理事の末松渉さんが取材に応じてくれた。 連盟側が明かす実情 「このようなお声が寄せられているということで、本当に残念で、また申し訳なく思っています。寄せられているような事案が事実なのかどうかについては、すでに確かめる方法がないのではっきり申し上げることはできませんが、あり得る話として私は考えております。 実際、相談員のコミュニケーションの取り方に対するクレームは、私たち連盟や全国の各センターに寄せられることがあります。例えば、定年後に応募された方が部下に接するような態度で相談者とコミュニケーションを取ってしまったり、一生懸命なあまり自分が信じている宗教の話をはじめてしまったりするケースが過去にはありました」 クレームが寄せられた場合はどのような対応をするのだろうか? 「まずは相談の記録を精査して、事実確認を行います。事実であった場合は、面談やスーパービジョン(より経験豊富な人から助言や指導を受ける仕組み)を実施します。それでも改善が見られない場合は相談員を辞めていただきます」 そもそもどのような過程を経て相談員になるのだろうか? 「書類選考とグループ面接を実施しています。書類選考では志望動機や人生経験を確認させてもらい、グループ面接ではコミュニケーションの取り方や人の話を聞く姿勢などを見ています。“自分の話ばかりする”“他者への関心が薄い”など、明らかに相談員に向いていない方を見つけるよう心がけています。 その後、選考をクリアした方には1年以上の研修を受けてもらいます。自殺予防の基本やカウンセリング、発達心理学などを学ぶ理論研修、ロールプレイングを軸とした体験学習がメインです。適性がないと判断された場合は相談員になれません。 ただし、相談員は常に不足しているのが実情です。相談員になってもらったとしても、イタズラ電話に辟易して辞めてしまう方もいる。厳しい選考を実施して相談員を厳選するのが理想なのですが、人数確保のために基準がゆるくなってしまったこともあったかもしれません」 相談者からのクレームにはどう向き合うのだろうか? 「年に5回ほど開かれる全国研修担当者研修会で各センターの代表者とクレーム事例を共有し、再発防止の注意喚起を行っています。今回こういった話があったということも共有し、連盟としてきちんと受け止めたい」 ボランティア依存は正しいのか? 相談員へのクレームには真摯に対応しているようだが、それでも「電話がつながらない」という状態が解消されるのはなかなか難しいようだ。 というか、そもそもこの問題はかなり根深いのではないだろうか。 精神的にギリギリのところまで追い詰められた人に手を差し伸べるという使命を帯びながら、全国の相談員はボランティアとして働いている。自殺というテーマは重い。積極的に引き受けたがらない人がほとんどだろう。 だからこそ相談員は常に不足していて、今後も増えるとは考えづらい。明らかに相談員に向いていない人間が運悪く各地のセンターに紛れ込んでしまうケースもあるだろうが、捌ききれない大量の電話や相談内容の重さに疲弊し、投げやりな対応になってしまったケースもないとは言い切れない。 「どんな相談者だろうが受け止める覚悟がなければこんな事業やるべきではない」という意見もあるだろう。ただ、何度もいうが、あくまで、いのちの電話はボランティアなのだ。正論で突き放すのは簡単だが、それはあまりにも酷な気がする。 ここまで大きな責任を伴う活動をボランティアに依存すること自体正しいことなのか、という問題もある。国なり自治体なりがもっと助成金を増やして、相談員に報酬を払うのもひとつの手だと思う。 それに、「公共性がある」と言って、注目度の高い芸能人の自殺ニュースを目立つところに載せて、ページの終わりに免罪符のように「いのちの電話」の問い合わせ先を載せるネットメディアやポータルサイトにもどこか違和感を抱かずにはいられない。彼らが自殺の問題をカジュアルに押し付けるせいで、相談員の負担は間違いなく増している。 個人的には、AIを使って受け答えしてみてはどうかと思った。AIなら、現在のいのちの電話の欠点がほとんどカバーできるだろう。 まず、絶対につながる。そして、傾聴しながらアドバイスをすることができる。霊を持ち出す、罵倒する、など困った対応をすることもない。 普段は「同じ意見ばかりに触れるので認知が歪む」とネガティブに捉えられがちなAIによるエコーチェンバー現象も、“いのちの電話”の場合は「寄り添う」ことが目的だからプラスに働きそうだ。 まずはAIが対応して、緊急性がある場合だけ、医療機関などに繋げれば良いと思うのだが、いかがだろうか? “富士の樹海”で見つかった「お笑い芸人」…ネタ帳に書かれていた「切なすぎる最期の言葉」

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