サーブ博物館(Saab Car Museum) マニア必見の展示車両 20選 知られざる宝物たち

貴重なコレクションを大切に保管 サーブ博物館(Saab Car Museum)を軽視してはいけない。「当たり前の存在」と捉えるべきではないのだ。 【画像】サーブ最後のモデルの1つ【サーブ9-3(第2世代)を写真で見る】 全23枚 2011年9月、スウェーデンの執行当局が同館のコレクションのすべてを差し押さえ、サーブの債権者に支払うために1台ずつオークションにかける計画を発表した。しかし、サーブの故郷であるトロルヘッタンの町、防衛企業サーブAB、ワレンベルク記念財団は何百万ドルもの資金を投じてコレクションをひとつ屋根の下で保管し、博物館を存続させることで、サーブの輝かしい過去を未来に伝えられるようにしたのである。 サーブ博物館の奇妙で興味深いコレクションを紹介する。 今回は、現存する最古の900からコルベットエンジン搭載のSUVまで、サーブ博物館に展示されている珠玉の逸品や秘蔵のコレクションの一部をご紹介しよう。 92(1950年) 1950年、サーブは初の量産車『92』を発表した。2気筒2ストロークエンジンを搭載し、3速マニュアル・トランスミッション(フリーホイーリング機能付き)を介して前輪に25psの出力を伝達した。前輪駆動システムと、航空機からインスピレーションを得た空力特性に優れたデザインにより、92は当時最も先進的なクルマの1つとなった。基本設計は1980年まで使われ続けた。 92(1950年) ソネット(1956年) サーブがスポーツカーの世界に参入するのに時間はかからなかった。同社のエンジン開発者の1人であるロルフ・メルデ氏が、友人やエンジニア仲間の協力を得て納屋で最初の『ソネット』を製作した。サーブは2000台の量産を計画し、このクルマで欧州縦断レースへの出場を目指したが、レギュレーション変更により、改造した市販車を出場させることが認められると、コスト効率の観点からソネットの開発を中止した。 ここに写っている青い車両は、6台製造されたソネットのうちの5台目である。2ストローク3気筒エンジンを搭載し、最高出力57psを発生する。サーブの説明によると、本格的なスポーツカーとしてだけではなく、ツーリングカーとして出力を抑えた仕様も用意していたという。 ソネット(1956年) モンストレット(1959年) ラリーでの覇権を求めた結果、3気筒エンジン2基を融合させた2ストローク直列6気筒エンジンが誕生した。サーブのエンジニアは、この最高出力138psの直6を、ほぼノーマルルックの93に無理やり搭載した。ちなみに、1959年に一般ドライバー向けに販売された93のエンジンの出力は33psであった。 (次項に続く) モンストレット(1959年) モンストレット(1959年) サーブは開発プロセスにおいて、レギュレーションを完全に無視していた。この狂気じみたプロトタイプをスターティンググリッドに並べさせてくれるレースシリーズは見つからなかったため、ツインエンジンの93がレースに出場することはなかった。しかし、サーブの勇敢なテストドライバーたちに強烈な印象を残したに違いない。なぜなら、スウェーデン語で「モンスター」を意味する『モンストレット(Monstret)』という愛称が付けられたからだ。 モンストレット(1959年) ソネットII(1966年) サーブは1966年に初のクーペ『ソネットII』を発表した。エンジニアたちは、10年前に初代ソネットを開発したときとほぼ同じ手法を採用した。既存のシャシーに高性能エンジンを搭載し、その上にプラスチック製のボディを載せたのだ。 初期のソネットIIには、モンテカルロ850から流用した最高出力60psの2ストローク3気筒エンジンが搭載されていた。サーブはこの仕様で258台を製造し、1967年に3気筒からV4エンジンに切り替えた。 ソネットII(1966年) 99エレクトリック・バン(1976年) 1976年、自動車業界で「電動化」という言葉がマーケティングの流行語となる何十年も前に、サーブは質素な『99』を、スウェーデンの郵便局向けのバッテリー駆動式配達バンに変身させた。バッテリーはキャビンの下に取り付けられており、専用のカートを使用すれば、メンテナンスのために取り外すことも可能であった。サーブは徹底的にテストしたが、量産化の計画を進めることはなかった。 99エレクトリック・バン(1976年) 99ターボ(1977年) 『99ターボ』は、高性能車メーカーとしてのサーブのイメージを確立する上で重要な役割を果たした。過給機によって従来の2.0L 4気筒エンジンから145psを引き出しており、これは1970年代においては驚異的な数値であった。また、サーブは地政学的な優位性も手に入れていた。大西洋の両岸で燃料価格の高騰が起こり、パフォーマンスと燃費効率を両立するクルマへの需要がかつてないほど高まっていた時代に、この99ターボを発表したのである。 1977年のフランクフルト・モーターショーで、サーブはこの写真の車両を展示した。ホワイトパールのラッカー塗装が施され、内装にはツートンブラウンのレザーが張られている。いずれも、通常の量産車には採用されなかったオプションである。 99ターボ(1977年) 900 GLE(1979年) 1978年、99は大幅な成長を遂げ、サーブで最も人気のあるモデルの1つである『900』へと進化した。エンジンルームのスペースを広げるためにフロント部分を伸ばし、またホイールベースを延長して車内空間を拡大している。しかし、これは物語の始まりに過ぎない。その後、サーブはラインナップを拡大し、コンバーチブルを含む複数のボディスタイルを追加した。さらに、SPGやエアロなど、性能を大きく向上させたモデルも登場している。 1978年から1993年の間に、サーブは900シリーズを90万8817台製造した。写真の米国仕様車はシャシーナンバー17番である。サーブのアーカイブ部門によると、スウェーデンの田舎の納屋にさらに古い個体が保管されているというのでなければ、これが現存する最古の900であるという。 900 GLE(1979年) 96 V4(1980年) 1980年1月8日、最後の『96』(写真)が出荷され、その長い歴史に幕が下ろされた。このモデルは、1950年に発表されたサーブ初の乗用車、92にルーツをたどることができるが、ほぼすべての点でモダンなものとなっている。サーブは、92、93、96の3車種を30年という異例の長期にわたって製造し、その総出荷台数は73万607台に上った。 96 V4(1980年) 900サファリ(1981年) 1980年代初頭、人や荷物を収納する広いスペースを求める顧客に対して、サーブは900の4ドア・ハッチバックモデルを提案した。しかし、ライバルであるボルボ、メルセデス・ベンツ、BMWが好調なステーションワゴンセグメントに参入する動きを見せる中、サーブは興味を示さなかったため、スウェーデンのコーチビルダーであるニルソン(Nilsson)が代わりにその空白を埋めることになった。 (次項に続く) 900サファリ(1981年) 900サファリ(1981年) ニルソンは900のルーフパネルを延長し、寝かせたDピラーを追加することで、まとまりのある均整のとれたデザインの『サファリ』を完成させた。箱形のボルボ245よりもずっとスポーティな外観であった。ごく少数が製造され、サーブ博物館に展示されているのは1981年製の新車同様の車両だ。サーブは1998年に9-5スポーツコンビを発表し、ようやくステーションワゴンに参入した。 900サファリ(1981年) 900カブリオレ(1983年) サーブは、1980年代初頭に『900カブリオレ』の開発を始めた際、2つの選択肢を検討したという。1つ目は、900ハッチバックをベースにタルガ風のルーフを装備したもの。もう1つは、アメリカン・サンルーフ社(American Sunroof Company)が設計した、格納式布製ソフトトップを備えたフルコンバーチブルだった。サーブは後者の案を採用し、1983年のフランクフルト・モーターショーでプロトタイプ(写真)として発表した。 900カブリオレ(1983年) EV-1(1985年) 1985年に発表された『EV-1』は、未来のスポーツカーのあり方を模索する最高出力285psのコンセプトモデルだった。サーブは、当時としては画期的な炭素繊維複合素材を使用することで、重量を抑えた。着色ガラスのキャビンと、非常に空力特性に優れたシルエットが特徴的だ。ルーフに埋め込まれたソーラーパネルにより、アリゾナの炎天下で何時間も駐車していても車内を涼しく保てるよう、エアコンシステムを稼働することができた。 サーブは、技術デモンストレーターとして900ターボのシャシーをベースにEV-1を組み立てたが、ラインナップに追加することは真剣に検討しなかった。 EV-1(1985年) 9000エアロ(1996年) 『9000エアロ』は、1992年のパリ・モーターショーでベールを脱ぎ、大きな話題となった。単なる9000の改良版ではなく、サーブ史上最速のクルマとして誇らしげに発表されたのだ。パワーユニットは、アウトバーンを駆け抜けるのに十分な225psを発生するターボチャージャー付き4気筒エンジンだ。内外装の専用パーツ(4席のバケットシートを含む)により、エアロは他の9000シリーズよりも際立った存在となった。 9000エアロ(1996年) 9-3ビゲン(1999年) サーブは1999年に発売した高性能モデル『9-3ビゲン』で再びドイツ勢に挑んだ。伝統に忠実に、最高出力225psのターボチャージャー付き4気筒エンジンを搭載し、前輪駆動とした。カタログ上では、誰もが羨むスペックにより愛好家たちを魅了したが、実際にハンドルを握ると、強烈なアンダーステアに驚かされた。 サーブの米国部門は、ビゲン購入者に対して、ロード・アトランタ・サーキットでの集中ドライビングコースを受講し、クルマの性能限界を学ぶことを推奨した。すべての購入者に2日間のプログラムが付属していたが、コースを受講したのは購入者の約30%に過ぎなかった。 9-3ビゲン(1999年) SVC(1999年) 一見ありふれた9-5のように見えるが、この『SVC』はスーパーチャージャー付き1.6L 5気筒エンジンを搭載したハイテクテスト車両である。圧縮比を調整可能で、高速道路を巡航する際には燃費向上のために圧縮比を高くし、ワインディングロードではパフォーマンス向上のために低くすることができる。1999年、サーブは225psの強力な出力と、ディーゼル車並みの低燃費を謳った。 サーブは革新的なメーカーとして歴史に名を残す可能性もあったが、結局5気筒エンジンは量産には至らなかった。代わりに、可変圧縮比技術を市場に初めて投入したのは日産のインフィニティ部門で、VC-Tエンジンを搭載したさまざまな日産車やインフィニティ車が2017年から販売されている。 SVC(1999年) 9-2X(2004年) スバルとサーブはゼネラルモーターズ傘下で一時的に同居していた。経営陣は、スバルの余剰生産能力を安価に活用し、北米でのサーブの販売を大きく後押しする好機と捉えた。しかし、ここで登場した『9-2X』は、サーブ風のフロントエンドと若干のシャシー調整を施したインプレッサのハッチバックに過ぎなかった。 『リニア』グレードにはインプレッサの2.5L水平対向4気筒エンジン(最高出力165ps)が搭載された。最上級グレードの『エアロ』にはWRXのターボチャージャー付き2.0L 4気筒エンジン(227ps)が搭載された。どちらもスバルの全天候型AWDシステムが採用されている。 9-2X(2004年) 2005年と2006年のモデルイヤーには、日本のスバル工場でインプレッサと並行して1万346台の9-2Xが製造された。そのほとんどは米国向けであったが、ごく一部はカナダ市場にも出荷された。9-2Xが欧州で販売されることはなかった。 9-7X(2004年) サーブはSUVブームに乗るために、2004年のニューヨーク・モーターショーで『9-7X』を発表した。確かにグリフィンのエンブレムが付いていたものの、誰もだまされることはなかった。ひと目見ただけで、ビュイック・レイニア、シボレー・トレイルブレイザー、GMCエンヴォイ、いすゞ・アセンダー、オールズモビル・ブラバダ、そしてシボレーSSRと同じGMT360プラットフォームを採用していることは明らかであった。 サーブは9-7Xで、驚くほどの先見性を見せている。スポーティグレードの『エアロ』に、最高出力390psの6.0L V8エンジンを搭載したのだ。このエンジンは、シボレー・トレイルブレイザーSS、ポンティアックGTO、シボレー・コルベットでも使用されている。しかし、 大不況のさなか、大型SUVに大排気量のアメリカンV8エンジンを搭載することは、月面にチポトレのフランチャイズ店をオープンするようなもので、生産的とは言えない。9-7Xはサーブの業績を好転させることができず、2009年モデルを最後に製造終了となった。 9-7X(2004年) 9-5(2010年) サーブは過去の失敗から学び、第2世代の『9-5』の競争力を高めるために多大な努力を傾けた。オペル/ヴォグゾールのインシグニアとプラットフォームや多くの機械部品を共有しつつも、ブランド独自のデザインを採用した。ヘッドアップディスプレイ、アダプティブクルーズコントロール、交通標識認識などの機能を導入することで、より高級なモデルへと仕上げている。 9-5は2010年6月に発売され、1万1280台を売り上げた後、2011年3月に販売終了となった。 9-5(2010年) 9-4X(2010年) サーブは2010年のロサンゼルス・モーターショーで『9-4X』を発表した。キャデラックSRXとプラットフォームを共有しているが、賢明にも、露骨なバッジエンジニアリングをうまく避けた。9-4Xは、活況を呈する米国の新車市場に投入されたものの、ブランドの崩壊を救うには遅すぎた。サーブが破産申請を行うまでに、ゼネラルモーターズのメキシコ・ラモス・アリスペ工場で生産されたのはわずか814台だった。 9-4X(2010年) 9-3インディペンデンス・エディション(2011年) オランダに拠点を置くスパイカーは、GMからの独立1周年を祝うため、9-3カブリオレの限定仕様車『インディペンデンス・エディション』を発表した。製造は1日つきに1台ずつ、そして2年目の始まりを記念してもう1台だけ追加され、合計366台が出荷された。スパイカーによると、専用設計のアルミホイールを履き、ボディカラーはオランダ国旗への敬意を表して選ばれたものだという。 9-3インディペンデンス・エディションは、2011年2月23日にデビューした。サーブが破産を申請したのは2011年12月19日である。 9-3インディペンデンス・エディション(2011年) 9-3レトロターボ(2017年) サーブの現在のオーナーであるナショナル・エレクトリック・ビークルズ・スウェーデン(NEVS)は、99ターボの40周年を祝うために、2017年にワンオフの『9-3レトロターボ』を製作した。最高出力260psの4気筒ターボエンジンを搭載し、レトロなバッジと象徴的なインカのアルミホイールデザインを採用している。しかし、NEVSは、この9-3は量産化されないと繰り返し述べており、いずれにしても、NEVS自体も2024年に閉鎖された。 サーブ博物館(Saab Car Museum)の詳細については、同館のウェブサイトをご覧ください。 9-3レトロターボ(2017年)

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