“小泉家の国家老”が進次�氏に直言「衆院選では幹事長の言いなりで敗北、『私の思う通りにやらせてください』と啖呵を切るぐらいでないといけなかった」

 総選挙で惨敗を喫し、自民党は少数与党に転落。石破首相は続投の見通しだが、政権は危機的な綱渡りが続く。この1か月あまりで総裁選、そして選対委員長として臨んだ総選挙で立て続けに辛酸を舐めたのが、小泉進次郎氏だ。手痛い敗北を喫した進次郎氏に対し、「政治の原点を見つめ直すいい機会だ」と故郷から見守る重鎮がいる。ノンフィクション作家・広野真嗣氏がレポートする。【前後編の前編】 【写真】“小泉家の国家老”牧島功氏と小泉進次郎氏のツーショット 「安倍支配は、いまだ終わっていません」 「今回の衆院選は、自民党にとっては酷い選挙でした。本来は“安倍政治との決別”という転換点に位置付けられるべきでした。アベノミクスの隘路や裏金問題を含め、10年以上続いた安倍支配の歴史に幕を引き、次のページをめくる。そのために進次郎君が総裁になっていたら……。  ところが、自民党執行部は古い衣を脱ぎ去るどころか、非公認の候補者の党支部にも2000万円を支給した問題では、むしろ古臭い論理に縛られていることを露呈した。安倍支配は、いまだ終わっていません」  こう語るのは、「神奈川のドン」とも呼ばれた元神奈川県議会議長の牧島功氏(80)だ。横須賀市議を3期、県議を9期務めたが、牧島氏にはもう1つの顔がある。  進次郎氏の祖父・純也氏(元防衛庁長官)、父の純一郎氏(元首相)の秘書を務め、進次郎氏のことは党神奈川県連で支えた。57年に及ぶ政治家人生を小泉家と共に歩んできた「国家老」なのだ。  海軍から海上保安庁に転じた船乗りを父に持つ牧島氏は、横須賀で純一郎氏の弟と同級生だった縁から純也氏を手伝うようになり、大学卒業後、小泉家の書生となった。  1969年の純也氏の死後、立候補した純一郎氏の選挙現場を仕切り、2009年に横須賀の地盤が進次郎氏に引き継がれた後も県議や市議に睨みを利かせた。  県議選の選挙区では連続トップ当選の余力を残しながら、昨春に引退。今回の衆院選中も進次郎氏の選挙事務所に連日顔を出し、県連や議員から何度も相談の電話が鳴っていた。そんななかで、私は牧島氏に話を聞いた。 地方の決定を覆した  選対委員長としての進次郎氏は女性候補を過去最多56人擁立したとアピールしたが、「不記載議員」の重複禁止で空いた比例の枠を埋めただけで、インパクトには欠けた。 「進次郎君の思いは半分も実現できなかったんじゃないかな。本気でやるなら準備が必要ですが、実際の進次郎君は永田町の論理に振り回され、幹事長の言いなりになった。そこに私は怒っています」(同前、以下「」はすべて牧島氏)  なぜ“言いなり”と断じるのか。牧島氏に聞くと、「自民党王国・神奈川が崩壊したんですよ」と嘆息して語り始めた。 「進次郎君は神奈川県連会長として10月上旬に地元の仲間と決めた候補者認定の案を、党執行部の決定で覆しました」  過去4回連続の比例復活だった経過を踏まえ、4区と9区の候補者について県連は「退路を断つ」意味で比例重複なしで申請したが、裏金問題による重複禁止の前職が続出した影響を調整するためか、党執行部は2人の重複を認めた。結果は2人とも落選。惨敗だった。 「県連会長でもある進次郎君は、『なぜ地方の決定を覆すのか』という問いを立てなければおかしい。幹事長に、『黙って選対委員長の私の思う通りやらせてください』と啖呵を切るぐらいでないといけなかったと思います」  牧島氏の怒りは、地方の現場に耳を貸さない自民党の体質に向けられている。長年、甘利明・元幹事長が出馬した選挙区・神奈川13区(旧13区が新13区と20区などに区割り変更)では、三菱商事などを経て公募に応じた女性候補である向山淳氏が内定寸前までこぎつけたが、昨年6月、党本部から提示があった男性の元経産官僚に決まった。  蓋を開けてみればこの元官僚は立民前職に敗れ、落選した。他方、北海道8区に転出した向山氏は立民のベテラン、逢坂誠二氏に肉薄して比例復活を果たし、明暗を分けた。牧島氏の表情は険しい。 「永田町からの指示で地方の判断を覆したことで失敗しているのです。進次郎君は責任者として率直に反省し、地域の声を受け止めるところから始めないといけません。決めたことを後で覆された地方には不信感が残ります。  同じようなことを繰り返して、この選挙に負けたんじゃないですか」 (後編に続く) 【プロフィール】 広野真嗣(ひろの・しんじ)/ノンフィクション作家。神戸新聞記者、猪瀬直樹事務所スタッフを経て、フリーに。2017年、『消された信仰』(小学館文庫)で小学館ノンフィクション大賞受賞。近著に『奔流 コロナ「専門家」はなぜ消されたのか』(講談社) ※週刊ポスト2024年11月22日号

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