【独自】「ワタクシがやったんですよ」…たつの女児刺傷「勝田州彦」が“直筆手紙”で告白 2つの“未解決事件”で「真犯人として逮捕される予定です」

 2024年8月22日に書かれた筆者宛ての手紙にはこんな一文が記されていた。 〈ユキ女史、大事件ですっ!!また逮捕されそうですっ。〉  独特な丸文字で綴られた文章は、赤と青のペンで仰々しく彩られ、ご丁寧にアンダーラインまで引いてある。手紙はこう続く。 〈少し前の5月下旬から、兵庫県警察がアタクシのところに突如来て、平成18年9月28日に兵庫県たつの市で発生した殺人未遂事件のことで取り調べを受けているのですっ。〉  筆者がこの手紙を目にしてから2ヵ月以上が経過した11月7日、「たつの市女児刺傷事件」に関与したとして“45歳の男”が殺人未遂容疑で逮捕された。容疑者は別の女児刺殺事件で無期懲役が確定して服役中だった。 “未解決事件”への関与の疑いで逮捕された勝田容疑者  男の名前は勝田州彦——。筆者は勝田容疑者と3年近くにわたって手紙のやり取りを続けてきた。そうしたなか、突如として“未解決事件”への関与を記してきたのだ。そもそも、勝田容疑者は実刑が確定した事件の公判でも「私は絶対にそのようなことはやっていません」と無罪を主張していた。にもかかわらず、なぜ筆者に宛てた手紙で未解決事件への関与についてまで“告白”したのか。勝田容疑者が筆者に打ち明けた言葉の数々、その一部始終をお伝えしたい。【高橋ユキ/ノンフィクションライター】 〈全2回の第1回〉 【写真】逮捕は「200%間違いないですね」…獄中から届いた便箋は、昔の女子中高生が書くような“丸文字”で埋められていた。赤や青のボールペンを使ってカラフルな印象だが、「無期懲役」「死刑」「再審請求」といった強烈な言葉が並ぶ。 「無期懲役」が確定  勝田容疑者が逮捕される前日の11月6日早朝、神戸新聞のホームページに〈17年前の女児殺害、45歳男が関与認める〉というタイトルが躍った。2006年と翌07年に兵庫県内で発生し、いずれも女児が被害に遭った“2つの未解決事件”について、別の女児刺殺事件で有罪判決を受け、服役中の男が関与を認めたという内容だ。  今回、勝田容疑者が関与を自白したとされるのは、07年10月16日午後6時ごろ、兵庫県加古川市において、公園から自転車で帰宅した鵜瀬柚希(うのせ ゆずき)さん(当時7)が自宅の玄関前で刺殺された事件。次に、06年9月28日午後6時22分ごろ、同県たつの市新宮町の路上において、自転車で帰宅中の小学生女児が(当時9)刃物様のもので刺されて重傷を負った殺人未遂事件である。  勝田容疑者は、岡山県津山市で04年9月に当時9歳の女児を殺害したとして殺人罪などに問われ、22年1月に岡山地裁で求刑通りの無期懲役が言い渡された。その後、控訴、上告を経て23年9月に刑が確定している。つまり、逮捕時は服役中の受刑者という立場だった。  一連の流れを整理すると、「津山事件」で服役中の勝田容疑者が、「加古川事件」と「たつの事件」への関与を認め、兵庫県警はまず「たつの事件」の殺人未遂容疑で逮捕したということになる。 「まぁ、自分でした事なので仕様がないのですが」  ちなみに筆者は、勝田容疑者の接見禁止処分が解かれた21年11月から手紙のやり取りを続けてきた。そして、勝田容疑者は西日本にある刑務所で服役生活を送りながら、“再審請求”への意欲を滲ませていた。  そんな勝田容疑者に明らかな変化が見られたのは今夏のことだった。より具体的に言えば、冒頭で紹介した〈大事件です!!また逮捕されそうですっ。〉と記された手紙である。  実は、勝田容疑者を巡っては、無期懲役が確定した「津山事件」で逮捕された18年5月の段階から、報道関係者の間では「加古川事件」と「たつの事件」への関与が囁かれてきた。  そのため、「たつの事件」について勝田容疑者への取り調べが始まったという“大事件”は、正直なところ想定内ではあった。だが、筆者が目を見張ったのはその後に続く文章だ。勝田容疑者は「たつの事件」について以下のように記していた。 〈まぁ、自分でした事なので仕様がないのですが、あと10年程刑期が追加されそうです。〉  その言葉は「津山事件」公判での勝田容疑者の言い分を知る者にとって驚くべきものだった。 「この際だから正直に言いますね」  岡山地裁で21年9月に開かれた「津山事件」裁判員裁判の初公判で、勝田容疑者は「私は絶対にそのようなことはやっていません。事件の日は、現場にも津山市にも行っていません」と完全否認していた。結局、判決ではこの主張は認められず、勝田容疑者が犯人と認定されたが、本人はこれを不服として控訴、上告している。また、刑の確定後も、再審請求を行うための準備を進めるとの意志を手紙で示していた。  その後、9月12日に送られてきた手紙にはこうある。まず公判で関与を否定し続けてきた「津山事件」について。 〈ユキ女史、この際だから正直に言いますね。津山事件もワタクシがやったんですよ。嘘をついていて、たいへん申し訳ありませんでした。本当にごめんなさい、です。この件についても、今後詳しく正直にお話ししますね。〉  そして、この手紙には「加古川事件」と「たつの事件」についての“告白”も記されていた。 〈また逮捕されそうなことについて。これは嘘ではありませんよ。200%間違いないですね。それも、2件の罪で、です。この2件の罪とは、平成19年10月16日に兵庫県加古川市で小学2年生の女の子が刺殺された殺人事件と、平成何年かは失念しましたが、9月28日に兵庫県たつの市で女の子が刺された殺人未遂事件の2件の事件の真犯人として逮捕される予定です。〉  その言葉通り、勝田容疑者は逮捕された。今後の捜査によって未解決事件の真相が明かされることを願ってやまない。だが、その一方で、勝田容疑者の起こした事件を取材し、本人と文通を続けていた身としては、どうしても違和感が残るのだ。 第2回【「良くて無期懲役、悪くて死刑のレベルですね」…女児刺傷「勝田州彦」が手紙に綴っていた逮捕直前の“自供”内容】では、獄中からの手紙に綴られていた、勝田容疑者が犯行を告白するに至った経緯を詳述している。 高橋ユキ(たかはし・ゆき) ノンフィクションライター。福岡県出身。2006年『霞っ子クラブ 娘たちの裁判傍聴記』でデビュー。裁判傍聴を中心に事件記事を執筆。著書に『木嶋佳苗 危険な愛の奥義』『木嶋佳苗劇場』(共著)、『つけびの村 噂が5人を殺したのか?』、『逃げるが勝ち 脱走犯たちの告白』など。 デイリー新潮編集部

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