体の様々な細胞に変化できる「iPS細胞」(人工多能性幹細胞)を使ったパーキンソン病の治験について、京都大学の研究チームは、安全性と有効性が確認されたと発表しました。実用化には時間を要しますが、患者やその家族にとって大きな成果と言えそうです。 ■7人のうち4人は「症状まで改善」 藤井貴彦キャスター 「iPS細胞を使った研究の成果が、次々と発表されています。京都大学の研究チームは、iPS細胞を使ったパーキンソン病の治験について、安全性と有効性が確認されたと発表しました」 「3月には脊髄損傷の臨床研究で、手助けなしで立つことができた例をお伝えしました。今回の成果は、どのようなものなのでしょうか?」 小栗泉・日本テレビ解説委員長 「パーキンソン病というのは、ドーパミンという伝達物質を作り出す脳の神経細胞が減ることで発症します。手足の震えや筋肉がこわばるなどの症状がある難病で、国内に約25万人の患者がいるとされています」 「今回の治験は7人の患者を対象に行われ、iPS細胞を使って作った神経細胞を脳に移植しました」 「その結果、全員健康上の大きな問題は見られず、7人のうち6人については移植した神経細胞からドーパミンが出ていることが確認でき、さらにそのうちの4人は症状までもが改善したということです」 ■治験を行った教授「もっとよい治療を」 小栗委員長 「治験を行った京都大学iPS細胞研究所の郄橋淳教授は、『よかったなとは思う。患者さん治してなんぼなんで。これからもっともっと治療をよくしていかないと、という思いです』と話しています」 ■臨床研究や治験が行われている病気 藤井キャスター 「iPS細胞の研究は今、どこまで進んでいるのでしょうか?」 小栗委員長 「現在、様々な病気に対して臨床研究や治験が行われています。今回のパーキンソン病だけでなく、重い心臓病に対しては心臓の細胞を作るシート(心筋シート)などの再生医療製品で、目の病気(加齢黄斑変性)・がん・�型糖尿病などでも研究が進められています」 「『zero』のスタッフの祖父もパーキンソン病を患っています。今回の治験結果を受け、介護を続けてきた家族は『いい光が見えた。患者本人だけでなく、介護している家族も少しでも楽になればいいなと思う。その治療が早く全員に行き渡れば』と話していました」 ■「もっと多くの試験が」…実用化は? 藤井キャスター 「今回はとてもいいニュースですが、いつ実用化されるのかが課題になりますね」 小栗委員長 「研究チームは年度内にも厚生労働省に承認申請を行う方針ですが、すぐ実用化というわけにはいきません。郄橋教授は『最終的な承認を得るためにはもっと多くの試験が必要で、できれば2030年までに実用化を目指す』と話していました」 ■「成果を次世代の医療に繋げる」 藤井キャスター 「iPS細胞の新しい成果をどのように受け止めましたか?」 津川恵理さん(建築家・『news zero』木曜パートナー) 「明治時代から比較して、日本人の寿命はこの150年で40歳ほど延びているらしいです。そう思うと、医療の研究や開発の、人類に対する貢献度はとても大きいのだなと改めて思います」 「最近は暗いニュースをよく見かけます。私も建築家として残りの人生、歴史に一歩踏み出せるような何かをしたいというモチベーションにつながるような、明るいニュースだなと感じました」 藤井キャスター 「それがみんなに広がっていくといいですよね。そして17日、郄橋教授が『zero』にコメントを送ってくれました」 郄橋教授 「ひと区切りではありますが、ゴールではなく新たなスタートでもあります。これからもこの治療法を発展させ、その成果を次世代の医療に繋げていきます。若い皆さんには『大胆にチャレンジし、緻密に積み上げる』姿勢をもっていただきたいです」 (4月17日『news zero』より)