“2億円トイレ”問題をはじめ、何かとトイレ関係が取り沙汰される大阪・関西万博。開幕直前には、一部の子ども用トイレに男女の区別や仕切りが設けられていないことが〈子どもにだって羞恥心はある〉や〈保育園では普通〉とネット上を中心に賛否両論を招いた。 【写真】用を足す男性の横で手を洗う女性「オールジェンダートイレの“謎すぎる配慮”」 また、4月13日に開幕初日を迎えると、今度は〈トイレがわかりにくい〉という不満が噴出。ひとつの個室に入り口と出口ふたつのドアがある構造や、使用中を示すランプの不具合などで混乱が生じていたことが報告された。 とはいえ、SNSには“盛った”投稿も少なからずあるのではないか、という指摘もある。“2億円トイレ”批判も勘違いから起きたようだ。当初はある一か所のデザイナーズトイレに2億円近くの施工費がかかっていると思われていたが、日本ファクトチェックセンターによると、多くのトイレの設置から撤去までが1億5000万円で落札されており、平米単価にならすと一般的な公衆トイレ施設よりも安価なのだという。 実際にはトラブルも大してないのだろう──そう考えていた記者の元に、万博を訪れたという人物から情報提供があった。その人物は「万博のトイレはちょっといただけないですね……」と顔を曇らせる。一体何があったのだろうか。 「万博を訪れているとき、ちょっとお腹の調子が悪くていくつかのトイレに行きました。トイレはどれもデザインがカッコよくて個性的だったのですが、使い勝手の悪さも多種多様で……。まず驚いたのが、このトイレです」 そう言って見せてくれた写真にはドアが開け放たれた状態の男性用小便器トイレが並んでいた。万博では性別を問わず誰もが使える「オールジェンダートイレ」が全体の4割に併設されており、このトイレにも男性用、女性用に加えオールジェンダー用とのトイレがあったという。 「男女の区別が判別しづらく、周辺にはトイレを求めてさまよう人がちらほらいました。実際私もちょっと迷いましたし。それに手洗い場が外にあるため、扉を閉めずに小便器で用を足す外国人男性のすぐそばで女性が手を洗う、なんてこともあって。何をどう配慮したのかよくわからない光景が広がっていました」 そして個室からは“謎の音”が鳴っていたという。 「やたら『ピーピー』と音が鳴っていて。なんだろうと思っていたら、スタッフが『大丈夫ですか?』と確認にやってきて、外国人客が『ソーリー。ミステイク、ミステイク』と恐縮していた。緊急時の呼び出しボタンに外国語表記がないせいで、水を流すつもりで誤ってボタンを押してしまうようでした。私がいる間に数回音が鳴っていたので、同じような方は結構いらっしゃるんじゃないですかね……」 その後、この人物が用を足しに訪れたのは、シルバーのスタイリッシュなトイレだった。 SNSでは入り口と出口が異なる構造について批判が集まっていたが、実際に使用してみると「ランプがわかりにくい問題」と合わさって、混迷を極めていたという。 「使用中の個室はランプが光る構造になっているのですが、昼間はランプが点灯しているか否かが判別しにくいんです。それに加えて“トラブル”も起きて……。 私が訪れた時、3つある個室のどれもが使用中を示すランプがずっと光り続けていたんです。尿意でそわそわと体を揺らす人や、待ちかねて別のトイレに向かう人もいました。試しにドアをノックしたり、引っ張ってみる人も。 ひとつの個室に入り口と出口ふたつのドアが存在するせいで、待っている側は、本当に中に人がいて使用しているのか、単なる故障なのか、判断がつかないんですよ」 この人物は結局20分以上待ったそうだ。同じく待ちくたびれた様子の別の男性が、ランプが点灯し続けていることをスタッフに伝えると、その場ですぐに鍵が解除されたという。 「結局、3つのトイレはすべて無人だったんですよ……。ずっと列に並んでいた中年男性は、『おせーよ、誰もいねーのかよ!』と不満を漏らしていました。 SNSでは〈ドアがふたつあって出方がわからない〉という意見もありましたが、実際は、『しめるLOCK/あけるOPEN』と掲示されているので、さほど難しくはないんです。でもこのランプ問題は早急に解決した方がいいと思います」 見た目は洗練されていても実際に利用するとなると、わかりにくい。そんな関西万博のトイレを“デザインの敗北”と揶揄する向きもある。この問題は会期中に是正されるのか──。