パンデミック対策に米不在、医薬品分配に懸念…WHO加盟国が条約内容に合意・採択へ

 【ジュネーブ=船越翔】世界保健機関(WHO)の加盟国は16日、感染症対策の新たな国際ルールとなる「パンデミック条約」の内容に合意した。  WHOは5月の総会で条約の採択を目指す。ただ、条約が今後発効しても米国のトランプ政権は参加しない見通しで、ワクチン開発などで世界をリードする米国の不在を懸念する声が出ている。 歴史的な偉業  ジュネーブで15日から翌16日未明まで夜通し続いた会合で、不参加だった米国を除く加盟国が条約の内容に合意した。WHOのテドロス・アダノム事務局長は「世界をより安全にするための合意を成立させた。歴史的な偉業だ」と強調した。  条約は、2022年から3年にわたりWHO加盟国が協議を続けてきた。背景には、国際連携やワクチンの分配などで各国の足並みがそろわず、世界の累計感染者数が7億7000万人超に上った新型コロナウイルスの流行の教訓がある。 焦点は「分配」  読売新聞が入手した条文案によると、条約は「疾病の世界的流行は、生命や社会、経済に深刻な影響を及ぼす」とし、感染症対策の研究強化や途上国への技術移転などを盛り込んだ。  最大の焦点となったのは、医薬品の分配だ。条約では製薬企業が病原体の遺伝情報などを迅速に入手する見返りに、医薬品の生産量の一部をWHOに提供する仕組みを導入するとした。  医薬品提供の割合を巡って先進国と途上国の間で意見が対立する場面もあったが、企業が生産量の1割を無償提供し、さらに追加で1割を安価で提供することを目指す内容で決着した。 傍観者の米国  一方、WHOや専門家が注視するのが米国の動向だ。  トランプ米大統領は1月の就任直後にWHO脱退を表明し、米国は条約策定に向けた協議からも離脱。ワクチン懐疑論者として知られるロバート・ケネディ・ジュニア氏を厚生長官に充てるなど科学軽視の姿勢が目立つ。  新型コロナ禍では、米製薬企業のワクチン開発が先行し、日本を含む多くの国で利用された。米国が条約に参加せず、米企業からの医薬品提供もない場合、条約の実効性が著しく損なわれかねない。米国が条約に参加しなくても、米企業は医薬品提供に関与できるかどうかなど、詳細な制度設計は今後の課題となる。  米ジョージタウン大のローレンス・ゴスチン教授(国際保健法)は「多くの革新的な製薬企業が拠点を置く米国の不在は大きな痛手だ。米国が傍観者となることは、世界と米国の双方にとって損失となる」と指摘する。

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