2023年に開場した北海道日本ハムファイターズの本拠地「エスコンフィールドHOKKAIDO」。スタジアム周辺は2028年にJR千歳線の新駅が開業予定であることに加え、新たに地上36階建て・高さ約130メートルのタワーマンションを建てる計画が明らかになるなど、周辺の街づくりが活気を見せている。一方、元本拠地の札幌ドーム(大和ハウス プレミストドーム)は……。 【画像】羊もいっぱい! 展望台から眺める札幌ドーム 北広島市の地価は6年で約2.7倍 就任4年目の新庄剛志監督率いる日本ハムは、2位と躍進した昨年の勢いそのままに好スタートをきった。 エースの伊藤大海や山粼福也、野手では新4番の野村佑希や万波中正、レイエスなど華のある選手を生で観たいという道民が多いのか、成績に比例して観客動員数も絶好調。 昨年は1試合平均2万8830人で12球団中8位だった動員数に対し、今年はシーズン序盤ながら4月15日時点で1試合平均3万992人で12球団中5位。上位は巨人、阪神、ソフトバンク、DeNAという人気球団が占めている点を見ても、十分すぎる数字だろう。 盛り上がっているのはスタジアム内だけではない。このポールパークに隣接する位置にJRの新駅(仮称「北海道ボールパーク駅」)が2028年夏に開業予定で、同年度を目途に北海道医療大学のキャンパスもこの地に移転予定だ。 「このような市の発展から北広島市役所は、4月1日付で31人の職員を新たに採用しています。これは昨年度採用された16人からほぼ倍増で、採用試験の倍率は10倍を超えていました。中には札幌市役所の内定を辞退して北広島市に入った人もいたそうです」(地元紙記者) そんなイケイケの北広島市で新たに明らかになったのが、ボールパーク付近でのタワーマンションの建設。2028年ごろに建設予定とのことで、地上36階・高さ約130メートルという規模は同市で最も高い建物になるという。 これからも発展を続ける街であることを考えれば、日本ハムファンでなくとも気になる物件だろう。 そのお値段はどの程度なのか。ある不動産鑑定士は「当該のタワーマンションについて詳細な価格は不明ですが……」と前置きしてこう解説する。 「北広島駅近くの2026年秋に引き渡し予定の新築マンションの価格を見ると、もっとも高い物件の募集価格が4LDK、約150㎡で1億7490万円となっています。このマンションは北広島駅から徒歩4分、エスコンフィールドからは車で5分という立地で階数は14階。 ボールパークと新駅の間近にできるという新たなマンションはこれよりもいい条件と考えると、さらに高額の募集価格になることも考えられます」 数年前まで全国的知名度がほとんどなかった北広島市で億ションが当たり前になっている現状は、いかにプロ野球チームとその本拠地に付加価値があるかがわかる。また、地価の上昇率はさらにわかりやすい。前出の不動産鑑定士が続ける。 「北広島市の住宅地の公示地“北広島-1”を例に価格動向を見てみると、その地価は2019年1月1日時点で1㎡あたり2万6600円だったのが、2025年1月1日時点で7万2000円と、6年で2.7倍強になっています。これほどの上昇傾向は全国的にも稀と言っていいでしょう」 一方、その日本ハムに出ていかれた札幌ドーム周辺の地価はというと……? 札幌ドームは純利益で黒字を主張するも… 「昨今は全国的に都市部の地価が高騰しており、札幌市全体の地価も同じく高騰しています。ですので、市街中心部から少し外れた札幌ドーム周辺の公示地“札幌豊平-4”の価格動向は、2025年1月1日時点の価格で1㎡あたり約8万6000円。一昨年と比較して当該地点の公示価格は10%以上も上昇しています」(前出、不動産鑑定士) 地価に影響はなかったものの、日本ハムが北広島市に移転した2023年以降の札幌ドームの運営は非常に苦しいことに変わりはない。ある公認会計士がその実情を解説する。 「株式会社札幌ドームの決算の営業利益を見ると、2023年3月決算の営業利益は約7000万円だったのに対し、北海道日本ハムファイターズが移転した翌年の2024年3月決算は約6億7000万円の営業損失となっています。 これは北海道日本ハムファイターズという稼ぎ頭を失ったことが原因であると推定できます」 さらに、札幌ドームへの逆風は続く。前出の地元紙記者が話す。 「今年3月、札幌ドームを本拠地として使用しているサッカーJ2の北海道コンサドーレ札幌の代表取締役社長・石水創氏が『(新スタジアムを)いつまでに作る、といったような明確な時期はまだ言える状態ではないですが、しっかりと推進していきたいです』とメディアのインタビュー記事で発言したのです。 これに対し、札幌市の秋元克広市長は定例記者会見で『将来的な夢と認識している。現時点で相談や要請はなく、話すことはない』としていますが、実際にコンサドーレにまで逃げられたら札幌ドームの解体がいよいよ現実味を帯びてくるのでは……」 札幌ドームは今年2月、24年度の決算について営業利益こそ8700万円の赤字だが純利益は2400万円の黒字になる見通しであることを発表した。 しかし、その内実は「大和ハウス プレミストドーム」というネーミングライツによる広告収入のほか、アマチュア大会主催者に対する使用料減免分について、過去の利益から積み立てた市の財源で補填したことなどで黒字化したものだという。 いわゆる“日本ハム時代の遺産”で体裁を保っているが、今後は果たしてどうなるか。上り調子のエスコンフィールドHOKKAIDOや北広島市にない魅力の創出が期待される。 取材・文/集英社オンライン編集部