被害を訴えた側の心情は軽視し、大物出演者を守るーー。中居正広の性暴力問題と同じような事例はフジテレビの報道局内でも起きていた。夕方のニュース番組「Live News イット!」のメインキャスター・青井実氏が起こしたパワハラ問題を、当初、番組上層部は内々に収めようと画策。被害者に対して、まともな会社では「あり得ない対応」までしていたというのだ。 *** 【写真】青井実アナが2023年に結婚した、テレ東で「大江麻理子アナの跡を継ぐエース」と呼ばれる美人アナ ピンマイクを投げつける「ブチギレ」 フジテレビによれば青井氏には2件のパワハラ行為があったとされる。(1)2024年5月ごろ、番組リハーサル中にフリップの演出が上手くいかなかったことに対し、強い口調でスタッフを叱責した行為と、(2)2024年10月ごろ、放送終了直後、速報ニュースの対応をめぐり、自身がつけていたピンマイクを強い調子でキャスター台の上にある箱に放り投げ、社員やスタッフに強い口調で叱責した行為の2件だ。 青井実氏(「Live News イット!」のXより) フジは4月9日、上記事案を公表。青井氏に対し、今後、出演を継続するにあたり二度と同様の言動がないよう申し入れを行い、本人から関係者への謝罪と反省の意が示されたとして、番組出演を継続させるとした。 青井氏自身は9日の番組で「本当に自分の未熟さが出てしまったと痛感しています。申し訳ありませんでした」と謝罪。だが、ことはこれで収まらなかった。4月14日、青井氏だけでなく、この問題に対応した上司たちに「非違行為」があったとして、社員1名に懲戒処分が出されたのである。 上司たちが問われた「2つの非違行為」 下記は社内で発表された処分内容である。 〈当社の番組に於いて、出演者による番組スタッフや共演者への優越的な地位を背景にした不適切な言動について社員から訴えがあったが、上長1(番組プロデューサー)、上長2(上長1の上司)および業務関連性が強い、他部署の役職者がその際に、 (1)出演者と被害者を一対一で話し合わせる(上長1) (2)自らの上長やコンプライアンス推進室等に適切な時期に適切な方法で共有しない(上長1、上長2、および他部署の役職者)等の不適切な対応をしたことで職場環境の悪化を招いた〉 上記の懲戒事由を理由として上長1を戒告の懲戒処分とし、上長2と「他部署の役職者」にも「然るべき措置を行った」としている。 注目すべきは(1)だろう。上長1は、青井氏と青井氏から叱責を受けた被害者を「一対一で話し合わせる」措置を取ったというのだ。 「イットの天皇」と言われた男 「立場が上のパワハラをした張本人とサシで話し合うなんて、被害者からすれば怖いに決まっています。雑な対応にもほどがある。コンプラ推進室に話を上げなかったことも含めると、中居問題と同様、出演者側の肩を持ったと受け取られても仕方ない」(フジ社員) この対応を取った上長1は、「イットの天皇」と呼ばれている渡辺貴チーフプロデューサーだ。 「10時間半の記者会見の生中継を敢行した“気概のあるプロデューサー”みたいに朝日新聞に持ち上げられ、インタビュー取材も受けていた人物ですが、こんなデタラメなやっていたんだとみんな呆れています。本人は周囲に『個別に解決しようとしていただけ』などと、いまだ言い訳じみたことを言っています」(同) 渡辺プロデューサーと共に今回の不祥事を内々に済ませようとした責任を問われた「上長2」は渡辺奈津子報道局長。報道局ではこの”Wワタナベ”が中心となって、10時間半の生中継を行うなど中居問題の徹底追及を続けてきたが、「『フジテレビの良心』みたいに正義感を振り翳してきくせに、結局、自分たちも同じようなことをしていたじゃないか」と局内で猛批判を受けているという。 年俸「7000〜8000万円」と言われる青井氏の処遇は? では、そもそもの問題を起こした張本人である青井氏は今後どうなるのだろうか。 「早ければ年内にも降板になるともっぱらのウワサです。昨年4月に鳴物入りでNHKからやってきましたが、もはや完全な“お荷物”状態になっています」(同) イットの視聴率は中居問題発覚後、個人で2パーセント台に低迷。テレ東の『孤独のグルメ』に負ける日も増えている。 「夕方のメイン視聴者である主婦層が中居問題に不信感を募らせていたことが原因と言われてきましたが、さらにメインキャスターのパワハラ問題まで乗っかってしまった。もはや青井氏を外す以外に選択肢がありません」(同) だが、契約の問題があって簡単にはクビにはできないという。 「青井氏をNHKから引き抜く際、年俸7000〜8000万円で複数年契約したと言われています。今回は一発でアウトにできるような重大な不祥事とも言えないので、しばらくは使わざるを得ない。過去女性2人にハラスメント行為をしていたことが発覚したことでBSフジ『プライムニュース』のメインキャスターの出演を見合わせている、反町理解説委員の後釜になるのでは、という観測も広がっています」(同) 番組自体も次の10月改編の対象になる可能性が高いとみられている。 「今は午後3時45分スタートですが、1時間短縮する案が浮上しています。削った時間はテレ東と同じようにドラマを再放送する。そうすれば制作費を大幅にカットできます」(同) 40年以上も続いた日枝体制で腐敗しきった局内を立て直すのは容易ではなさそうだ。 デイリー新潮編集部