岐阜県関市が補助金2000万円を出して制作された映画「名もなき池」についての続報です。 【写真を見る】映画「名もなき池」の補助金2000万円が返還期限に 制作会社側は「返す根拠がない」と主張し平行線 岐阜・関市 トラブルが相次ぎ、関市は制作会社側に、きょうまでに2000万円全額を返還するよう要求しています。 今月4日、名古屋市内で行われた映画「名もなき池」についての会見。大勢の報道陣の前に現れたのは映画の監督兼プロデューサーで、シン・ベートーベンこと新原光晴さんです。 (映画「名もなき池」 新原光晴監督) 「(Q:この映画は関市のPRになった?)いい意味ではない方でなっているとは思います。マイナスの宣伝にしかなっていない」 監督自らが関市にとってマイナスの宣伝になったと話した映画「名もなき池」は、市の補助金2000万円が制作費に使われた“ご当地映画”です。ところが…。 (「名もなき池」主演 伊達直斗さん) 「映像を見て『えー!』って。びっくり、がっかり」 (映画を見た人) 「はっきり言って面白くない」 「この映画を見て(関市に)行こうとは思わない」 出演者も観客も映画の出来を酷評。さらに…。 (関市担当者) 「補助金交付の全部について取り消しを行い、返還請求をしたい。回収できないときは法的手段に出ます」 関市側と制作会社側の主張は平行線に (制作会社側 代理人弁護士) 「われわれとしては返す根拠がない。逆にわれわれが訴えるというオプション(選択肢)も当然ございます」 補助金2000万円の返還を求める市と、それに応じない姿勢の制作会社側の主張は平行線をたどり、両者が法的措置もいとわない徹底抗戦の構え。そして市が請求している返還期限がまさに、きょうなのです。 市民の税金2000万円の行方はどうなるのか、徹底検証です。 問題の映画は刃物の町、関市の刀鍛冶を描いた物語です。タイトルの「名もなき池」は、関市に実際にある人気観光スポットで、エメラルドグリーンの水中を魚が泳ぐ様子が印象派の画家モネの作品に似ていると話題になり、通称「モネの池」と呼ばれている池に由来します。今月5日にも多くの観光客が訪れていましたが…。 (訪れた観光客) 「映画で有名にならないといけないが、もめ事で有名になってしまった」 皮肉な形で、関市の知名度アップに一役買っている映画「名もなき池」。映画の舞台は美しくても、事態はまさにドロ沼です。 制作会社は公募の2年前に市に話を持ち掛けていた… コトの発端は、おととし春。市が観光PRを目的に映画の企画を公募し、採用された作品の1つが「名もなき池」でした。 (制作会社側 代理人弁護士) 「令和5年6月3日にプレゼンとあるが、さかのぼること2年くらい前(2021年)から関市に持ち込み、入念な話し合いがされているプロジェクト。まさしく、むしろ新原が働きかけてやってきた」 市が公募したのは、おととし春ですが、制作会社側はその2年前の2021年に、市に対し映画事業の話を持ち掛けていたことを会見で明かしました。 (映画「名もなき池」 新原光晴監督) 「令和4年7月7日に今井田部長(当時課長)からZoomで会議がしたいと」 一方、市側は…。 (市議) 「補助金の企画はイロハ社(制作会社側)から提案があって作られたもの?」 (関市 産業経済部 林清 課長) 「その点については存じ上げておりません」 (関市 産業経済部 今井田和也 部長) 「オンラインで会議をした記憶はない」 複数の映画館で4週間以上の有料公開が条件だった 食い違う両者の見解。選考は関市のPRになるかどうかを基準に、市が公平に行ったと主張しています。 (市議) 「なぜ外部の審査員を入れなかった?」 (関市 産業経済部 林清 課長) 「理由はございません」 (市議) 「現地(制作会社)に行った?」 (関市 産業経済部 林清 課長) 「私は行っていません」 (関市 産業経済部 今井田和也 部長) 「私も行っていません」 当時を振り返り、市の担当者は…。 (関市 産業経済部 林清 課長) 「全て結果論になってしまうが、その時の判断は常にベストだと思ってやった」 市は映画を企画した兵庫県の会社「イロハスタンダード」に制作費として、おととし8月と去年12月に1000万円ずつ、合わせて2000万円の補助金を支給しました。ところが…。 (関市 森川哲也 副市長) 「3月末までに複数の映画館において4週間以上有料で公開することが、作品の公募および補助の条件だったが、実行されないことが確実になった」 補助金2000万円の返還を請求する関市に制作会社側は 市は、ことし3月末までに4週間以上、複数の映画館での公開を補助金交付の条件にしていましたが、これができておらず、再三、制作会社側に対して質問状を送るも回答がなかったなどとして、補助金2000万円の返還を請求。対する制作会社側は…。 (制作会社側 代理人弁護士) 「令和7年3月31日までに国内では上映できない旨を、当初より関市に伝えていて了承を取った」 映画は、まず海外で公開するため、国内で3月末までに上映することはできないと市側に伝え、了承を得ていたと主張しています。制作には4300万円かかり補助金はすべて使ったということで市の主張には根拠がないとして返還には応じない考えを示しています。 そして先月28日、兵庫県の淡路島の映画館で「名もなき池」が公開されました。 制作側は、ことし1月に市から急きょ、3月末までに映画を公開するよう要求されたと主張。急いで完成させ先月28日、市のチェックがないまま淡路島の映画館で公開することになったといいます。しかし…。 (映画を見た人) 「僕が見た限り(関市の)PRにはなっていない」 「一番大きいのは音ズレ。ビール置いて1秒過ぎてガチャって」 (映画「名もなき池」 新原光晴監督) 「僕がチェックした中では、そこまでのところ(音ズレ)は拝見できなかった。見落としの部分が大きいと思う」 そして補助金の返還期限を迎えたものの… 映画の質にも大きく影響を及ぼした、公開時期を巡る市と制作側との食い違い。映画制作に関わった人たちは…。 (「名もなき池」主演 伊達直斗さん) 「当初(去年秋)は3月までに公開すると言っていた」 (制作スタッフ) 「私だけではなくて制作スタッフも、現場では(3月までに公開と)そう聞いていた」 そして、関市が補助金2000万円の返還期限としたきょう。制作側は返還の意思は変わらずなく、関市に返還はされていません。 市民の税金2000万円が投じられた関市の“ご当地映画”プロジェクト。市側、制作側ともに市民が納得できる説明が求められています。