元アイドル社長が語る異色の半生と成功までの道

えなこや東雲うみら人気コスプレイヤー・タレントが所属する芸能事務所、株式会社PPエンタープライズ。同社の代表取締役を務めるのは、自身もコスプレイヤー「よきゅーん」として活動するよきゅーん氏だ。 コスプレ特化型の芸能事務所社長として業界を“無双”する彼女に、芸能事務所を立ち上げることになった理由、そして現在の地位を確立するためにどのような努力をしてきたのかを3回に分けてインタビュー。第1回は芸能界で思い知ったという「世の理」、厄年に味わったどん底状態、えなことの出会いなど、“異色”の半生を振り返ってもらった。 高校生の頃から「ネットアイドル」として活動 皆さん、1996(平成8)年に放送されたドラマ『闇のパープル・アイ』(テレビ朝日系)をご存知ですか? 覚えている方もいらっしゃるかもしれませんね。 私はもともとオタクなので、篠原千絵さんのマンガが実写化されたことが嬉しくてこのドラマを観始めたんですが、主演をされていた雛形あきこさんがもう、とにかくかわいくて。ドラマや週刊誌のグラビアを見るたびに素敵だな、綺麗な方だなと思って見つめていました。オタクではあるけれど、そういう違う世界の人、キラキラした人というのに強い憧れがあったんです。 その憧れが高じて、芸能界に携わり始めたのが高校生くらいの時。養成所のレッスンに行って、少しだけお仕事をし始めたあたりで、得意のパソコンを使って、自分でホームページを作りました。当時としてはまだ物珍しかったかもしれませんね。 その中で、今で言うブログのような日記を書いていたら、パソコン雑誌やウェブ系の雑誌の方の目にとまって、特集を組まれたり、連載を始めたりということになったんです。ネットアイドルといいますか、今で言うインフルエンサーといいますか。そういう存在として活動していたわけです。 こうしたネットでの活動がきっかけで、ありがたいことにテレビからも声をかけていただきました。19〜20歳の頃だったでしょうか。『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!』や『踊る!さんま御殿!!』(ともに日本テレビ系)などヒット番組を数多く担当されている放送作家の安達元一さんが私のホームページを見てくださったようで、ネットの女の子たちを集めた企画に呼んでいただいたんです。 その後、TV番組も作られて『デジドルファクトリー』(テレビ朝日系/BS朝日)では、2年ほど水着を着て出演していました。昔の古き良き水着番組という感じで、セクシーな水着などは一切着てないですよ! 異端の「フリーランス」アイドルだった 『デジドルファクトリー』は、BSデジタル放送やWebサイトの双方向通信機能を使って、視聴者がお気に入りのグラビアの子に投票してランキングを決めるという番組内容だったのですが、私、ネット力もアイデア力も実践力もその頃からすごかったもので(笑)、事務所所属の女の子たちが大勢いる中、無所属フリーランスながら既にネットに強かった私が毎度いい結果を出していました。 私は自分で写真も撮れますし、ホームページも作れますし、チャットなんかもできますからね。その当時、番組の方に「よきゅーんが3人いたら会社が回る」と言われていたくらいです。 「うちの事務所に入りませんか」と声をかけていただくこともありましたが、しばらくフリーで活動していました。1人で割と何でもできてしまっていたので、お話を聞いても、自分ができる範囲のことだなと思ってしまったんですよね。当時では異端の存在であったことは確かです。 “芸能界の理”を知った出来事 その後、お世話になっている方からの紹介で、とある事務所に所属したのですが、そこで“芸能界の理”を知る出来事に二度、遭遇することになります。 一度目は、とあるゲームのイベント。イメージキャラクターをネットによる投票で決めるという企画があり、私も参加させていただいたんです。 『デジドルファクトリー』でおわかりのとおり、私はその手の呼びかけが得意中の得意だったし、ネット上にもファンの方が多かったので、かなりの票を集めることができました。でも、1位の方の得票数は何をどうやっても絶対に届かない数字だった(笑)。 ああ、これは誰をイメージキャラクターにするかは、事前に決まっているな!?と悟りました。ただ「投票を勝ち抜いて決まった」という触れ込みでその方を売り出すために開催されたイベントだったんですね。彼女以外の参加者は賑やかしだったんです。 そりゃそうですよね。今だったらわかります。クライアントさんだって、知名度が低い人よりグラビアで活躍している有名な人がいいでしょう。当たり前ですよね。ただ、これが出来レースだ!と怒るわけではなく、「演出」として納得できていました。 二度目は、とある大企業が開催したアイドルコンテスト。 最終オーディションでかなり納得のいく演技ができて、自分でも手応えがあったのですが、結果は準グランプリ。悔しい気持ちでオーディション終了後の慰労会に参加したら、審査員の方から声をかけられたんです。「事務所が関係なければ君が一番だったから落ち込まないで」って。たしかに、1位の方は超大手事務所の方でした。 なるほど! と思いましたね。恨むとか妬むとかそういう気持ちは本当にまったくなくて、逆にスッキリ、納得できました。そもそも、大手事務所に入れるということがその方の実力の高さですしね。 この2つの出来事で、「芸能界ってこういうところなんだ」というのを勉強させてもらいました。そんな“理”の中で、自分が結果を出せたことは大きな自信になったから、すごくいい経験になりました。ポジティブなのかな、私。 30歳でアイドルを卒業し、メイド喫茶を起業 結局、2年ほどお世話になって、所属事務所を退所しました。その事務所では「ビデオゲームの公式コスプレイヤーを務めた最長期間(女性)」としてギネス世界記録の認定もいただいた「ラグナロクオンライン」公式コスプレイヤーのお仕事を紹介していただいたので、とても感謝しています。 その後コスプレ活動と並行しつつ、「中野腐女シスターズ」(現:中野風女シスターズ)の一員としてアイドル活動なども経験。30歳を機に卒業して、名古屋で始めたのが「メイド喫茶」でした。 理由は、私自身秋葉原でメイドをしていた経験があったことと、メイド喫茶が好きだったこと。もともと起業に興味があったし、自分のアイデア力や企画力が活かせる仕事だと思ったんです。 思いがけなかった「えなこ」との出会い そのメイド喫茶はライブステージがある、アイドルカフェのような形で展開していました。おかげさまで東京にもフランチャイズで店舗を出すに至りまして、両店の業務と自分のタレントとしての活動で忙しくなっていた頃に、私が面倒を見ていた子が、えなこを連れてきたんです。「この子に撮影会とかやらせて、マネタイズしていきたい」と。 でもその時……2016(平成28)年くらいでしたかね。もうえなこはコスプレイヤーとしてかなり有名でしたし、「この子は撮影会とかしてお金を稼ぐとかいうレベルじゃなくない!?」とびっくりしてしまって。 結局、その子は会社も持っていなくて事業の先行きが不透明でしたし、その後いろいろな事情が重なって、私がえなこを担当することになりました。実は成り行きで、お互い今でも「ぬるっと一緒に仕事をしていくことになったよね」という感じなんです。 ちょうどその頃、ゲーム会社の方などからコスプレイヤーのキャスティングを依頼されることが増えてきて、コスプレイヤーを使った仕事も多くなってきたタイミングでした。その後、事業は芸能事務所に一本化し、今に至ります。 一度は貯金ゼロのどん底に なんだか人生トントン拍子のように思われるかもしれませんが、そんなことはありません。私、一度貯金が0になってるんです。引っ越すお金もなくて、姉に資金を前借りしたくらい。 店舗とか飲食店の経営って、自分が毎日見れないと本当にキツイんですよ。残念ながら、経営している中で問題は山積みで、ストレスでハゲるかと思いました(笑)。何かあればお店にお金を補填しなければいけなかったし、アイドルグループの面倒も見ていたので、自分の働いた分は0にして、女の子たちにお給料を払っていたんですよね。 でも、何をしても矢面で叩かれるのは自分だったし、お店の事、アイドルの事で夜中にも電話が鳴るし、寝る時間もなくてかなり疲れていました。 しかも追い打ちをかけるように、当時付き合っていた彼氏と破局! これ、両方厄年の時です。厄年って本当にあるんですねえ。 「婚期を持って行かれた」からこそ でも、そこからは「私の今回の人生は結婚じゃなくて、人のために何かをする、仕事をすることがメインなんだ」と切り替えました。 結婚、出産、子育て……これらが女性の幸せだとするなら、どれも体験していない私は人より劣っているんじゃないか、なんのために生きているんだろうって落ち込むこともありました。でも、それを考えたところで仕方ないですからね。だったら悩んでいる場合じゃない。悩んでいる時間がもったいない。それに、今は結婚することがすべてではない時代ですから。 『鋼の錬金術師』になぞらえるなら、私は婚期を「持って行かれた」んですけど、等価交換で、そのぶん人の幸せを錬成しようと思っているんです。それが、私の携わるエンターテインメントの役割だと感じています。 例えば災害時や緊急時、みんなの心がすり減っている時などに人を救うものの一つが推しであり、エンターテインメントだと思うんです。この人がいるから頑張ろうとか、この人がいるなら安心だとか。一瞬でもつらい思いを忘れさせてあげられるって素敵なことですよね。 私でさえ、自殺を考えていた子を止めることができた。繋がった命の先で、「今、ペットを飼って幸せなんです。この子のために頑張ろうって思っています」などと聞くと、その幸せに行き着いてよかった、と心から思うんです。 事業としてエンタメを続けていって、もっと輪が大きくなっていけば、もっともっと救える人が増えるはず。綺麗事かもしれないですが、そういうマインドで生きていきたい。綺麗事が集まれば、結局綺麗な世の中になりますもんね。偽善だとしてもみんながゴミ拾いをすれば、綺麗な街になるんですから。 ブランド品は興味なし!寄付するために「稼ぎたい」 芸能事業を続ける理由はもうひとつあります。それは「稼ぎたい」から。結局何をするにしても先立つものは必要で、新規事業や、人の育成、お金はいつもついてまわります。更にお金があれば、夢の実現だけでなく、そのぶんたくさん募金もできますからね。 私、物欲がないので、買い物とかブランド品にはまったく興味がないんです。それよりも、犬猫保護活動をしてくださっている団体に使ってもらいたい。 保護活動をしている方々ってすごく優しい方が多くて、犬猫の医療費を持ち出しで負担されたり、自分よりペットを優先される方が多いんです。私は時間的にも直接保護活動のお手伝いができないので、バリバリ働いて稼いで、そういう皆さんの一助になれたら。最近はふるさと納税でもそういう保護団体に寄付できるようになって、良かったなって思います。 余談ですが、稼ぐ方法については、弊社はファンの方に沢山お金を使って頂くのではなく、知名度を上げて、その人気のおかげで起用頂くお仕事で稼げるようにしております。 それに私の場合、もう20年以上推してくださっている方も多いので、ファンの方と共に人生を歩んでいけるんですよ。結婚して子どもを連れてイベントに来てくれたり、逆に離婚したり。交通事故に遭っただとか、車が横転しただとか、友達みたいな近況報告をしてくださるのがとても楽しいんです。これも、芸能事業を続けている理由のひとつですね。 人のためになることができたり、誰かを少しでも幸せにできたりした時に「徳」を貯められるような気がしていて。某パンまつりではありませんけど(笑)、その貯まった徳ポイントが、やりたい、叶えたいと思っていた「仕事」というお皿に交換できる。会いたかった人に会えたとか、やってみたかったお仕事ができたとか、願いが叶うことが最近特に増えてきたんですよ。それは徳ポイントを積んだおかげなのかなと思うんです。 こんな理想みたいなことばっかり言ってると、『Fate/stay night』のアーチャーのセリフ、「理想を抱いて溺死しろ」が思い浮かびますけど、溺死しないように浮き輪を作ってます、頑張って(笑)。 (取材・文/井上華織) 【インタビュー第2回】「表紙ジャック」から「クールジャパン事業」まで…えなこや東雲うみを生んだ《コスプレイヤー専門事務所》快進撃の裏にあった「大胆戦略」

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