“観光”と“農業”を両立は…「オーバーツーリズム」若手農家の苦悩 模索を続ける北海道美瑛町

人気の観光地・北海道美瑛町で続く「オーバーツーリズム」。 この冬も撮影スポットのシラカバ並木が伐採される事態にまで発展しました。 観光と農業をどう両立させるのか。 模索を続ける若手農家の思いに迫ります。 四季折々の景観が魅力の美瑛町 相次ぐ観光客のマナー違反 (警備員)「車来てるよ!」 車道にあふれる観光客。 三脚を立てて撮影する人や… 畑に入るマナー違反も。 (観光客)「マークとか書いていないので」 この異様な光景に農家は… (大西智貴さん)「農家にとって観光客?一般論で言えば邪魔でしかない」 この冬も続く「オーバーツーリズム」。 農業と観光は両立できるのでしょうか。 ゆるやかな丘に畑が広がる上川の美瑛町。 四季折々の景観を楽しむことができます。 雪原にぽつんとたたずむクリスマスツリーの木。 “映える”景色が突然、SNSで話題となりました。 その結果… (山粼記者)「写真を撮る観光客で辺りは歩行者天国のようになっています」 車道にごった返す観光客。 近づく車に気を止めない人も。 こうした混雑やマナー違反は、大きな事態に発展しました。 人気スポットの「シラカバ並木」伐採 決断した農家の苦悩 雪原に切り倒されたシラカバの木。 その数は40本近くにのぼります。 観光客が集まるセブンスターの木の、すぐ近くにあったシラカバ並木。 人気の撮影スポットは2025年1月に伐採され、姿を消しました。 シラカバ並木の近くで農業を営む大西智貴さん。 伐採を決めた農家の苦悩をこう明かします。 (大西智貴さん)「この並木沿いに立って写真を撮るというのが定番化していて、(車で)通るときに非常に危険を感じていた。(伐採した農家は)そりゃ我慢ならないよなって。とうとう来たかって感じでしたかね」 農家を悩ませているのは、観光客によるオーバーツーリズム。 駐車場に入れないほどの車やバスが押し寄せ、シラカバ並木の前は路上駐車が相次いでいました。 夏の収穫期には… (警備員)「危ない!」 観光客がトラクターの通行を妨げ、ヒヤッとする場面も。 さらに… (山粼記者)「あちらの男性、畑に入ってしまっていますね」 畑を踏み荒らされる被害も後を絶ちませんでした。 靴底を介した病害虫の侵入が、農家にとって一番の脅威です。 (大西智貴さん)「美瑛はジャガイモの産地なんですけど、ジャガイモや大豆は本当に壊滅的な打撃をうけて、その品種がもう生産できなくなるような深刻な病害のリスクをはらんでいますね」 (山粼記者)「農家にとって観光客は?」 (大西智貴さん)「農家にとって観光客?一般論で言えば邪魔でしかないに尽きると思いますね」 美瑛町が対策も…観光客とのいたちごっこ続く 美瑛町も手をこまねいてるだけではありません。 (警備員)「レッツゴー、センキュー!」 駐車場が確保できないクリスマスツリーの木では、交通整理をする警備員を配置。 (警備員)「グッナイ!バイバイ!カムサハムニダ!」 さらに、畑へ侵入すると警告音が流れるカメラも設置しました。 地元の観光協会によりますと、2月の侵入件数は2024年の171件から21件と大幅に減少しました。 それでも… (山粼記者)「クリスマスツリーの木から少し離れた場所に来てみると、観光客が私有地に立ち入って写真を撮影しています」 カメラのないところでは畑に入る観光客も。 (山粼記者)「ここが農地だと知っていましたか?」 (農地に入った人)「知りませんでした。マークとか書いていないので、マークとかサインボード(看板)があったら入らないです。すみませんでした」 対策が追い付かず、いたちごっこが続いています。 (美瑛町 角和浩幸町長)「観光客も住民も、ともに満足度が上がるような観光地のスタイルを追求していますが、ゴールがなかなか遠く難しいのが実感」 地元の若手農家らも奮闘 飲食店と協力した取り組みも 観光スポットの近くで小麦やジャガイモなどを栽培している大西さん。 2019年にあるプロジェクトを立ち上げました。 (大西智貴さん)「(観光客と)いい関係が築けるかなと期待して、この看板を設置するプロジェクトを始めました」 土を耕す人々を意味する「ブラウマン」の看板プロジェクトです。 農家の思いを知ってもらおうと、地元の若手農家らが「ブラウマン」と名乗るチームをつくり、7か所の畑に看板を設置。 QRコードを読み込むと、畑で採れた農作物を購入できるサイトにアクセスできます。 (大西智貴さん)「めちゃくちゃ儲かっていますということはないですけど、ちょっとでもメリットが生まれる仕組みをつくっていけば、観光客がいっぱい来て、うちのジャガイモも売れているしなみたいな」 「ブラウマン」の活動は広がりを見せています。 ツアーの観光客が続々と訪れていたのは、揚げたてのエビフライが人気の飲食店。 にぎわう店のショーケースには「ブラウマン」のマークが入ったジェラートが並んでいました。 (購入した観光客)「おいしいです!アスパラガスの味がします」 (大西智貴さん)「お客さんに手に取ってもらえるものを一緒に開発しようという提案をいただいて、去年から取り組んでいます」 「ブラウマン」の1人・本山忠寛さんが栽培しているグリーンアスパラを原料に、アスパラ味のジェラートを開発しました。 この取り組みを呼びかけたのは、店のオーナーの三宅哲郎さんです。 (洋食とCafeじゅんぺい 三宅哲郎さん)「観光資源は農家さんがつくってくれた畑やシンボルツリーなので。実際にマチの商店街が潤っているのは、農家さんのおかげなんじゃないかと。少しでも助けになればという思いでやっています」 店頭には本山さんが生産しているトマトジュースも。 売り上げの一部は「ブラウマン」の農家に還元される仕組みです。 (本山忠寛さん)「僕も妻もトマト嫌いなんですけど、その2人で作ったトマトジュース」 (購入した客)「え~!めっちゃおいしいです。私はトマト好きです」 (本山忠寛さん)「ありがとうございます。嬉しいです、ぜひたくさん飲んでください」 (大西智貴さん)「まだ農家みんなが、観光客が来ることでプラスな部分を感じているかと言われたらそこまではいっていないですけど。その入口というか出発点、そういう仕組みや流れにこれからつながっていけばいいなと」 農業と観光の両立をめざし、模索を続ける美瑛町。 その答えを見つけようと若手農家の奮闘は続きます。

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