物価高や人手不足で経営環境が厳しさを増すラーメン店。 2024年の倒産件数は過去最多となりました。 その中でも、生き残りをかけて奮闘する北海道内のラーメン店を取材しました。 平日も満席の人気店が閉店 苦渋の決断なぜ 一心不乱に味わう至福の一杯。 (客)「おいしいです」 札幌市中央区の人気ラーメン店「いせのじょう」です。 看板メニューは辛口白菜ラーメン。 煮干しと鶏ガラでとったしょうゆ味のスープに、自家栽培の唐辛子がアクセント。 道産小麦を使ったストレート麺は、スープとの相性抜群です。 (客)「優しい味なので大好きなんですよね」 平日でも開店直後から次々と客が訪れ、閉店まで満席状態が続く人気店ですがー 3月26日に閉店となりました。 そのワケはー (餃子と麺いせのじょう 店主 石水孝治さん)「スタッフの減少ですね、そこが一番大きな理由。8人くらいいたのが4人前後でまわしている感じ」 これまで3店舗を展開していましたが、人員を確保できず、2つの店舗に縮小することにしたのです。 (餃子と麺いせのじょう 店主 石水孝治さん)「数年前はアルバイトを募集してもすぐ来るという形だったが、特にここ2年くらいは、募集してもなかなか人が来ない」 地元の客が多く訪れ、売り上げは順調。 人手さえあれば店を続けられましたが、閉店という苦渋の決断を下しました。 (餃子と麺いせのじょう 店主 石水孝治さん)「残る2店舗をいまいるスタッフたちと続けていく。自分のいまの足元を見ながら、状態に合わせて続けていく」 倒産数は過去最多 物価高…価格設定に葛藤 いま、ラーメン店は全国的に苦境に立たされています。 帝国データバンクによりますと2024年、倒産したラーメン店は過去最多を更新。 長引く物価高や人手不足などが原因とされ、およそ3割が赤字経営に陥っています。 (麺屋 不知火 店主 朝倉陽一さん)「おはようございます」 2025年1月にオープンしたばかりの「麺屋 不知火」。 店主の朝倉さんは、脱サラして長年夢に見た店を構えました。 クリーミーなスープが特徴の鳥白湯ラーメンは、朝倉さんが1年かけて研究したこだわりの逸品です。 (客)「おいしいですね」 (客)「おいしいです」 このラーメンは、麺を食べ終えたあともお楽しみがー どんぶりにご飯を入れて、残ったスープとまぜてリゾット風に味わいます。 (客)「おいしかったです。リゾットが…リゾットになっていました」 オープンから3か月。 客の評判は上々ですが、朝倉さんは先行きに不安を抱えています。 (麺屋 不知火 店主 朝倉陽一さん)「価格ですよね。仕入れ金額が上がっているので、今後どうなるのか不安はある。コメも倍になってしまった」 ラーメンは1杯950円。 価格設定にも葛藤があったといいます。 (麺屋 不知火 店主 朝倉陽一さん)「1000円よりは950円の方が少なからずいいのかなと思うし」 (記者)「1000円はつけづらい?」 (麺屋 不知火 店主 朝倉陽一さん)「正直つけづらい」 原材料や光熱費の高騰などで、ラーメンの価格は上昇傾向です。 ところが、1000円を超えるラーメンを「高い」「やや高い」と感じる人は、9割以上にも上るというデータもあります。 いわゆる「1000円の壁」です。 (麺屋 不知火 店主 朝倉陽一さん)「いまは正直赤字です。まだまだお客さんが少ないので、僕もワンオペでやっているので、何とか950円でしばらくは頑張っていきたい」 そんな中、私たちはあるラーメン店を見つけました。 1杯700円『潰れそうで潰れない店』生き残りかける老舗 そのラーメン店は、旭川市にある「龍宝」です。 理由を聞こうと、開店前から取材を始めますがー (記者)「STVで取材させてもらっていまして」 (常連客)「ああそうかい、いい男に映して」 営業前に、毎日のようにやって来る常連さん。 席に座っても注文しません。 するとー (龍宝 店主 佐々木義行さん)「はいよ、塩ラーメン」 (記者)「注文なくても?」 (龍宝 店主 佐々木義行さん)「決まっているから」 塩ラーメンは、豚骨と鶏ガラに煮干しや野菜を加えた飴色のスープが特徴です。 (常連客)「ほかのラーメンは食べられないわ」 店主の佐々木義行さんです。 40年以上にわたりこの味を守ってきました。 (龍宝 店主 佐々木義行さん)「40年来のお客さんも年配になって来てくれる人もいるし、そうやって来てくれることはものすごくうれしいこと。幸せだと思う」 昔ながらの優しい味わいは、年齢を問わず多くの客を魅了しています。 (母親)「おいしい?」 (子ども)「うん」 (客)「安いですよね、やっぱり。いま1杯1000円近くしちゃうところが多いので。安くておいしいですよね」 価格は1杯700円。 4月から一部のメニューを値上げしましたが、ラーメンの価格は据え置いたままです。 (龍宝 店主 佐々木義行さん)「物(の値段)が上がれば一番減らされるのはお父さんの小遣いだからね。みなさん食べやすい値段で、それをずっと続けてやりたいと思うしね」 佐々木さんは妻のひで子さんと店を切り盛りしてきましたが、5年前に亡くなってから息子の和樹さんが手伝うようになりました。 SNSに「潰れそうで潰れない店」と書き込んだのも和樹さんです。 (龍宝 佐々木和樹さん)「値上げしなけりゃ大変だよと言っているが、ここ何年か我慢している状態。潰れそうといったらあれですけど、ギリギリといえばギリギリ」 ラーメンの価格を維持するため、業者からの野菜の仕入れをやめ、営業の合間をぬって買い出しに出かけます。 (龍宝 佐々木和樹さん)「仕入れ先も変えているし、極力ロスが出ないようにこまめに仕入れをして、自分の足で安いところ安いところ」 経営は楽ではありませんが、和樹さんは店の将来を前向きに考えています。 (龍宝 佐々木和樹さん)「(父と)一緒ににやっていくうちに、このお店を残したいという気持ちは出ている。僕はこの店で、たくさん雇用を生めるような事業としてやっていきたい」 (龍宝 店主 佐々木義行さん)「一緒に仕事やっても(和樹さんは)ライバルだと思う。仕事も結構できるようになってきたからね。若い者にはまだ負けたくないから」 ラーメン店を取り巻く環境は厳しさを増すばかり。 それでもお客さんの期待と自慢のラーメンの味を守るため、店主たちの努力は続きます。